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2006年11月22日

『アザー・ハーフ』Q&A

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『あひるを背負った少年』で第6回東京フィルメックス審査員特別賞を受賞したイン・リャン監督。第7回に合わせて撮ってくれた新作『アザー・ハーフ』では、法律事務所に相談にやってくる人々を人間味豊かに描いています。上映後、イン・リャン監督とプロデューサーのペン・シャン氏を迎え、観客とのQ&Aが行なわれました。

イン・リャン(以下、イン)
「東京フィルメックスで私の作品を再び上映して頂けた事、本当に感謝しております」

ペン・シャン(以下、ペン)
「この映画に参加している人々は、アマチュアの人達ばかりで、ヒロインやその母親は私の親戚が演じています。その他、この法律事務所にやって来る人々の中には実際の会社社長や学校の先生もいました」

林加奈子ディレクター(以下、林)
「「この作品は希望と絶望から生まれた映画だ」と公式カタログのメッセージに書かれていますが、この内容について具体的にお伺いしたいと思います」

イン
「絶望については、この地方都市における男達の現実の悲惨な状況を描くことで表現しました。希望についてですが、映画を作る者として、未来に何かを繋ぐものを作品の中に見出さなければと思っています。希望は変化からもたらされるものですが、映画や小説には現実を変えていく力はないかもしれません。でも、現実をあるがままに提示して現実を少しでも変えるようなものでありたいと願って制作しています」

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「今回は中国の女性が抱える問題がさまざまなケースで描かれていましたが、ペン・シャンさんは、脚本段階から参加されたのでしょうか」

ペン
「脚本段階における私の役目は、映画の舞台である四川の方言に台詞を書き直すこと、それから女性特有の行動を加えることでした。でも大部分はイン監督が担当しました」

イン
「女性特有の部分については、彼女によるところが大きかったと思います」

Q
「法律事務所に来る人たちの相談内容がとても面白かったのですが、何かモデルになるものがあったのですか?」

イン
「ペン・シャンの友人で、法律事務所で書記をしている女性の話を聞いたことが、この映画を作るきっかけでした。当時、別の企画の準備を進めていましたが、非常に良いテーマを見つけたと思い、早速いくつもの法律事務所に取材を始めました。取材した50ほどのケースの中から、13を選びました。2回にわたって法律的な部分に問題がないかどうかを、専門家にチェックしてもらいました」

Q
「化学工場が爆発した後、公式には安全だと放送されているのに、主人公が街に戻ろうとすると、警官の友人に「警察も撤退していて危ないから行くな」と止められる、という場面があります。実際に起こっている事と、公式発表が違うことを描こうとしているのでしょうか」

イン
「非常に良く観て頂いていて感謝します。脚本を書く段階で私が意図したところです。現実の状況と公式発表との間に違いがあると。それにかけて、男女関係にも偽りが潜んでいるという事を描きたかったのです。最後に、主人公の恋人からの電話の内容がナレーションで流れるシーンがあります。うわべではではきれい事を並べ立てているが、彼女を騙している、偽りが沢山潜んでいる、そういう意味が込められています。

 前回の審査員特別賞で頂いた資金で、比較的余裕を持ってこの作品を撮る事が出来ました。このようにご支援を頂いているので、映画作りを前進させていかなければならないと思います。また、僕の作品に出演してくれた人たちの信頼に背かないように一生懸命撮って行きたいと思っています」

(取材・文:大津留汐子)

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投稿者 FILMeX : 2006年11月22日 22:00


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