2006年11月24日
『メン・アット・ワーク』Q&A
上映後、マニ・ハギギ監督が登場し「映画と共に日本に来られて嬉しい」と挨拶。今作品はアッバス・キアロスタミ監督の原案に基づいて映画化したもの。観客からは映画の設定や俳優の使い方への質問が寄せられました。
市山尚三プログラム・ディレクター(以下、市山)
「この映画を作るきっかけはどのようなものだったのでしょうか?」
マニ・ハギギ監督(以下、ハギギ)
「私はキアロスタミ監督や彼の息子さんと仲が良いのですが、最初に息子さんからこの作品の原案を聞き、そのロケーション設定にも魅かれ、これを映画化したいと思いました。それでキアロスタミ監督と一年間交渉し、この企画をいただくことになりました」
市山
「そのロケーションというのはどの辺りですか?」
ハギギ
「テヘラン北にある山の西側に聖地がありまして、よく人々がお参りに行きます。映画の中では静かな場所に見えますが、いつも参拝者の車で混んでおり、車を停めて撮影しなくてはならず、大変でした」
Q
「キアロスタミ監督の映画の中にはドライブというシチュエーションが多く見られますが、今回もドライブという設定にしたのは何故でしょうか?」
ハギギ
「キアロスタミ監督はとても車が好きですが、その理由は聞いていません。私も車は好きですが、映画では車の窓ガラスとフロントガラスは場面を捉える一つの小さなフレームになり得ます。またそれをフィルムという大きなフレームから捉えると、フレームの中にもう一つの小さなフレームが出来るのです」
Q
「この作品はイランの有名な俳優さんと素人の方が共演されているそうですが、どの人が俳優でどの人がアマチュアだったのか分からない位、自然でした。どの人がプロで、どの人が素人だったのか、教えて下さい。」
ハギギ
「私はこれまでに2本の映画を作っていますが、2本ともプロの俳優と素人を起用しています。
今回は主人公である登場人物4人の内3人が素人で、一人夜まで岩を掘っていた人物が有名なプロの俳優です。最初に車で登場する女性2人と、後から登場して岩を押す二枚目もイランでは有名なスターで、その他の人々は素人です。こうしたキャスティングにしたのには理由がありまして、素人とプロが向かい合う時、面白い事が起こります。素人はプロの俳優まで演技のレベルを上げようとし、プロは素人の自然な演技に挑戦しようとします。そのプロと素人のぶつかり合いが魅力的なのです。
また、現実的には低予算と撮影期間の短さ(18日間)という制約があり、スケジュールの都合などでプロの俳優を集める事が難しく、素人を使って撮らなくてはなりませんでした。ですから余り映画を知らない人だと困るので、映画の身近なところにいて映画の仕事に慣れている素人を起用しました。
モンセン役は『風が吹くまま』『オフサイド』等の撮影監督であるマハムード・カラリ氏、最初に車を運転していた人物はテレビや映画のプロデューサー、そしてもう一人は有名な映画批評家です。この3人なら短期間での撮影の大変さも知っており、上手く仕事が出来るだろうと思いました」
(取材・文:和賀一美)
投稿者 FILMeX : 2006年11月24日 18:00