2006年11月24日
『オペラジャワ』Q&A
インドネシアを代表する映画作家ガリン・ヌグロホの新作は、古代叙事詩『ラーマーヤナ』の物語に現代美術を融合させ、国際的なダンサーたちを配した豪華絢爛なガムラン・ミュージカル。ヌグロホ監督は現代の農村における暴力的な紛争を描きながら、ジャワ古典劇の世界をスクリーンに現出してみせた。
ガリン・ヌグロホ監督(以下、ヌグロホ)
「出演した芸術家たちは、私が昔からよく知っていた人々です。私は花瓶に花を生けるようにこの作品を作りました。各々の美しさを持った花である彼らひとりひとりの個性を発揮させながら、全体の美を創造しようとしたのです」
Q
「冒頭、東部インドネシアのスンバ島の呪術師が儀式を執り行っているシーンがありましたが、タイトルからして、ジャワ的な要素一色の作品かと想像していたので非常に驚きました。またこの作品はジャワの舞踊などを使いながらも、ジャワでもインドネシアでもない、架空の世界の寓話のように思われました。どのように解釈したらよいでしょうか」
ヌグロホ
「ひとつの物語があれば、それが語りうるひとつの世界があります。この作品ではジャワの様式を主に用いましたが、決してジャワ的なものを表現しようとしたわけではありません。山の戦いのシーンは、ジャワ島で撮影しましたが、バリ・ロンボクの要素も感じ取れますし、あるいはブラジルのカーニバルのようだとも思われたでしょう。ジャワの文化には、外側の世界を受け入れ、自分のものにするという面があります。他にも例えば、ハヌマン(猿の将軍)の動作にパプワの人々の踊りの要素を取り入れたり、ジャワ島沿岸部に暮らす人々の儀式を登場させたりしています。ですからこの作品世界は、『ジャワが多くの文化にまみえた』とでも言えるイメージから成り立っているのです。
ご指摘の呪術師は、スンバ島からお呼びして来ていただきました。冒頭でこの祈りの儀式が行なわれるのは、ひとつの物語、ひとつの儀式が始まるのだということを示すためです。また彼が行なうのは死者のための祈りですが、それはこの作品がレクイエムとして、事故や災害で亡くなった人々に捧げられているからです」
Q
「踊り手が実際に歌っているのでしょうか。また、歌はオリジナルの曲なのでしょうか」
ヌグロホ
「主人公スティヨと、敵役のルディロの母を演じた人は自分で歌っていますが、他の主なキャストは吹き替えです。歌は、6割は新しく作曲したものですが、ジャワ音楽に関する古い文献に基づいて作られたものです。太った男性の歌い手が何度も登場しますが、彼は即興で作詞作曲して歌うので同じ歌はもう二度と聞けないんです。彼は美人に会ったら一度に20曲も浮かんでくるんだそうです(笑)」
舞台を後にする監督の「いつも私の作品に関心を持って観ていただいてありがとうございます。次の作品、その次の作品も注目していてください」との言葉に応え、客席からは大きな拍手が贈られた。
(取材・文:花房佳代)
投稿者 FILMeX : 2006年11月24日 21:00