2006年12月20日
<前売りでは売り切れなのに、実際には空席が目立つ>というご意見もいただきました。確かに座席は当日券の枚数を確保し、ほかにもプレスやゲスト席などIDパスをお持ちの方々のお座席や、配給が決まっている作品はそちらへもお座席をお渡ししている関係上、前売りの段階から全席を売ってしまうことは不可能な現状がございます。
また前売り券をお買い求めいただいた方の中にはご都合が合わずに、止む無くご来場いただけずに空席になる場合もございますが、これは既に座席指定で販売済みでございますので、重ねて他の方にお回しすることも叶わず、止む無く空いているお席が出来てしまうこともございます。
自由席はお入りになってからはご自由にお好きなお席という良い面がありますが、ご入場の際に階段に整列してしばらくお待ちいただく形になってしまい、それもお客様にはご不便な事があろうかと考えております。座席指定と自由席は、両方とも良い面と不都合な側面があり、事務局でも試行錯誤ではございますが、よりよき方法を探っております。みなさまからの、貴重なご意見には、心から感謝申し上げます。
今年は約80人のボランティアスタッフにご活躍いただきました。大きくは運営、広報、ホスピタリティ、の各担当に分かれてのお仕事になりますが、大きな負担(やり甲斐?)の中、みなさまそれぞれの力を発揮いただいて、こなしていただきました。改めて重ねて感謝申し上げます。
中にはもう何年も引き続きお手伝いいただいているスタッフもいらっしゃいますが、初めての方は、公式サイトの募集要項に沿って応募をしていただいて、面接をしております。実際には選び抜かれた優秀な方々で、年齢も経験も様々ですが、観客のお客様とゲストのお客様を温かく気持ちよくおもてなしする精神に富んだ、良いチームが作れました。
期間中になるべくたくさんお手伝い可能な方が優先となります。また組織化してチームを編成していくためには、2ヶ月かかりますので、早い次期に応募をしていただくことが大変助かります。初めての方は是非とも夏の間に、できれば8月半ばあたりまでに、応募申請をしていただけますよう、心からお願い申し上げます。
第8回に向けて準備は既に始まっております。どうぞボランティア・スタッフとして東京フィルメックスの運営に関わってみようと考えてくださるみなさま、早くご一報くださいませ。
アンケートのご感想が監督に伝わっているのかどうか、お問い合わせをいただきましたのでご回答申し上げます。これは全ての作品というわけではありませんが、監督によっては格別にアンケートのご意見を知りたいという方もいらっしゃいますので、個人情報の部分を削除して、それぞれの作品に付いてのご意見をご覧頂く場合もございます。
が、基本的にはアンケートは事務局でお伺いしております項目ですので、監督に何か特別にメッセージなどある場合でもアンケートに書いて確実に届くというお約束はできません。あしからずご了承くださいますようお願い申し上げます。
サポーターズ・クラブの会員のみなさまには、東京フィルメックスの趣旨に賛同して活動を支援していただいていますが、この会費につきましては、実際に「高い」というご意見と「安い」というご意見と、両方いただいております。チケットの先行発売の枠を活用するためにメンバーになる方には高すぎるのかもしれません。また個人でも複数口のお申し込みをいただいている方もいらっしゃって、有り難い限りです。
映画を一本上映するのに幾らのお金が掛かるか。これはみなさまに愚痴る必要もない事ではありますが、「宣伝が足りない」という激励などもアンケートでいただきますもので、開催経費の予算が限られた中で企画運営を進めております事務局としては、胸の詰まるところです。宣伝するにもメディアや媒体に広告を載せたり、街に旗を出したり看板を出したりするのにも、大きな費用が掛かります。海外からのプリント調達、通関費、字幕翻訳費、字幕投影費、フィルム映写費、そして会場拝借料金、広報もポスターデザインからチラシ、公式カタログの編集、会場ロビーの制作物など、たくさんの経費が掛かります。
ゲストをお招きしたり、審査員を依頼したりの費用。ボランティアスタッフを集めてミーティングするにも、会議室を借りる費用がかかります。一本の作品を上映するのに一枚のチケットを幾らで売らないと収支としては合わないかという単純計算をしてしまうと、どうにも悲しいばかりです。
サポーターズクラブ会員として頂戴しております会費は、東京フィルメックスの活動の運営経費として、大切に、大事に使わせていただいております。NPO(特定非営利活動法人)として活動を進めておりますが、非営利というのは赤字でもよいという事では全くありません。大変苦しい中で何とか続けて来れたのも、ご協力いただいております関係各位のおかげと、サポーターズ会員のみなさまと、加えてご協賛、ご協力いただいている各位には、重ねて感謝と御礼を申し上げます。
私は以前の仕事で、日本映画を海外の国際映画祭のディレクターやプログラマーにご紹介したり、海外のシネマテークやアーカイブに日本映画の巡回上映をしたりという事をしていたもので、海外の国際映画祭関係者とは知り合いも多く、まさに彼らが必死で作品を選択されるのを目の当たりにして来た経験があります。これは貴重な財産であり、ネットワークという面でももちろんなのですが、その一方で尊敬できるディレクターたちは、彼らが自分の映画祭ならではの「どうしても上映したい」という作品を探すその情熱たるや、すさまじいものがあるのを知っています。
映画祭同士のパワーゲームに陥ることなく、作品の力を信じて、それらの作品を支援し、より一層輝くために力を尽くすのが、映画祭の使命です。今回、釜山国際映画祭のキム・ドンホさまと期間中を過ごす機会に恵まれて改めて痛感したのは、その素晴らしいお人柄に尽きます。韓国映画界のドンと言ってもおかしくない方なのに、腰が低くて無理強いしないし、権力を弄ばない。本当に温かくも立派な紳士でいらっしゃいます。
加えてドンホさまについてもう一つ驚いたことは、健啖でいらっしゃること。よく召し上がります。しかも早い。早飯っていうのは、もしかしたらディレクターの資質の一ポイントかしら、と考えてしまいました。つまり人のペースに合わせて食べられる。時間も場所も選ばない。海外に出かけるとディナーが3つも重なったり、ゲルマン系の人との朝早くの打ち合わせから、ラテン系との人たちとの夜遅くの重いディナーとか、もしくは試写が続いて全く食べる時間がなかったりと、とにかく全く胃に優しくない時間をサバイバルしていかないとならないわけですので、体力が肝心という次第です。
朝日ホールの上映では、日本語字幕を画面の外に出して表示しております。これについては、見やすくて良いという方と、見えにくいという両方のご意見を頂いています。事務局としても字幕投影については、考えどころでございます。
基本的に、英語字幕の付いているプリントを映画祭での上映だけのために海外から取り寄せて、それに日本語字幕をプリントを傷つけることなく、別のプロジェクターで投影する方法を用いておりまして、これにはアテネフランセ文化センターの字幕映写チームの神業的な作業にお世話になっております。翻訳者の方々にもギリギリにプリントが日本に届くような時間との戦いの中で、ご無理なお願いを毎年重ねてしまっておりまして、感謝に耐えません。
それで、画面の中に英語と日本語と両方が入ると、本編が見えにくいという難点もありえますが、また座席によっては字幕を外側に出すと見えにくくなるのも事実で、はたまた作品によっては画面の中に入れると映像の美しさが半減してしまう危惧のあるものもあり、難しいところです。
ただテクニカル面ではかなり工夫がなされて状況も変化してきていますし、画面の中に入れても映像への支障が最小限に抑えられる形での投影技術も進歩してきているようなので、今後お客様に見やすい日本語字幕かつ作り手のこだわりを損なわない日本語字幕のありかたについては、検討を重ねております。
今年は公式サイトが充実していました。期間中に時間を空けずに上映後の監督と観客のみなさまとのQ&Aをまとめてアップしたり、また慶應義塾大学DMC機構のご協力を得て、動画配信も試み、臨場感あふれる公式サイトを演出できました。トークイベントなどをまとめるのは一苦労ですが、良いスタッフが力を合わせて実現してくれました。ヒット数も1万件を超える反響となり、事務局スタッフ一同、ビックリ喜んでおります。
また開映前の場内でも過去の記録映像を部分的にご紹介しておりました。改めて素晴らしい作品に恵まれ、素敵な監督たちに、そして素晴らしい審査員のメンバーにご来日いただいた幸せな毎年が思い出されます。
特に今年は会期終了後、ボロボロになっている事務局にとびきりの情報が飛び込みました。ムン・ソリさまと「地球を守れ!」のチャン・ジュヌアン監督がクリスマスにご結婚されるという素敵な朗報です。お二人とも東京フィルメックスには別々にご来日いただいておりましたので、疲れた心と体に染み入る本当にうれしい吉報です。どうぞお二人とも末永くお幸せに。そしてますます良い作品をお作り続けてくださいますよう、信じております。そして願わくば、そのうちいつの日かお二人で東京フィルメックスにひょっこり遊びにいらしてくださいましたら、なんて、欲深な私たちはそんな日を切望しております。
フィルムセンターでの岡本喜八特集の場合のように、12本それぞれ2回ずつの上映が決まっている場合などのように、それで企画を進めている時は別として、新作のほうでは作品によって一回しか上映がないものが幾つか出てきてしまっています。私たちとしてもできることなら最低2回は上映したいところなのですが、これは現実的には枠の問題というよりも、作品の権利保有者から映画祭での上映許諾を得る時の条件として「一回上映」で、という場合があるのです。これは、この後に日本での配給会社が決まって公開する際に、その会社にとって東京フィルメックスで2回も上映していては良くないかもというご判断があるのかもしれません。
映画祭は期間中の上映がプレミアのため、期間前に試写などをすることが余り無いので、期間中の評判や盛り上がりで2回目3回目と上映を重ねるごとにお客様が増えていくというのが、美しい現象ではあるのですが、如何せん事務局の希望だけでは簡単に決行できないわけです。実際にカンヌでは、作品によっては公式上映が一回だけという作品もあります(でもマーケットでは何回も上映していますが)。また、ベルリン映画祭は、一般の観客が参加できる世界最大の国際映画祭ですが、全部で5回ほどの上映が行われている作品もあり、観客の人気の程が如実にうかがえます。
他の映画祭では、受賞作品を最終日にリピートする形式を採っているところもありますが、これについても、もちろん権利保有者には許諾を取らないとなりません。
今年はコンペに3本、そして特別招待に2本、合計5本のイラン監督による作品を上映しました。イラン映画がどうしてそんなに多かったのかというお問い合わせもいただきました。答えは全くシンプルで、イラン映画に素晴らしい作品が多かったから、それに尽きます。
私たちは国のバランスとか散らばりとかを重要視していません。面白い映画を順番に選んで行きますので、結果イランが多かったわけです。確かに選考途中で出来る限り多くの作品を拝見するのは必須なのですが、実際イランよりも多く拝見できた他国の作品でも、良いと思えるものが無かったので残念ながらご紹介できなかった国もありました。香港や台湾を入れたいとか、タイや韓国から一本も無いのはおかしいとか、見た目の整然さを重視すると、結果的には妥協して「まぁこのくらいでもいいか」という作品をご招待しなくてはなりません。心底愛していない作品をプログラムに入れるのは、お客様を裏切ることになりますので、それは私たちには出来ません。
ただ、日本での配給会社が決まっている場合に公開時期などの関係で、東京フィルメックスでのジャパンプレミアが吉となって連動できればよいのですが、時期尚早という判断で、私たちがご紹介したくても上映できなかった作品もあるのは事実です。
今年はパラグアイから一本「ハンモック」という映画をご紹介しました。予算が厳しいのも忘れてこの作品は何としても上映したいと心が震えた一本でした。バフマン・ゴバディ監督の「半月」もサンセバスチャン国際映画祭でグランプリを獲る前に決めていたし、ジャ・ジャンクー監督の「三峡好人」もヴェネチアで金獅子賞が決まる前にオープニング上映を決定していましたので、今年は私たちにとってもサプライズだらけでした。
今年のシネカノン有楽町のレイトショーは、入場者数が全体で昨年と比べて200人も増えるという現象が起こりました。みなさまご来場ありがとうございました。このレイトショーは、以前(2003年まで)は有楽町駅のすぐそばにあった銀座シネ・ラ・セットで行われていましたが、劇場の移転に伴い、東京フィルメックスも2004年よりシネカノン有楽町にレイトショー会場を移しました。
朝日ホールが夜9時以降は上映ができない、お借りできない事情がありますため、夜のレートショーの場として朝日ホールの上映後にも引き続きご覧いただけますように、タイムスケジュールを組んでございます。また、シネカノン有楽町は一般の映画館ですので、東京フィルメックスの期間中も興行として新作のロードショーがあります。この昼間の上映作品の後、入れ替えの時間の余裕を考慮して、上映のスケジュールを組むことになっています。
なるべく夜11時には上映が終了して電車でスムースにお客様にお帰りいただけますよう、スケジュールを組んでおりますが、作品によって上映時間の長さがそれぞれ違うという現実もございます。また夜の上映ですので監督との質疑応答のお時間は現実的に難しいのですが、監督が冒頭でみなさまにご挨拶をなさりたいとご希望があった場合には、少しのお時間でも一言お話いただいているのはご存知の通りです。いえ、監督によっては興奮して話が長くなる方もしばしばいらっしゃいますけれど。お仕事帰りにお立ち寄りいただくのに便利ということもあって、おかげさまで当日券の売れ行きが伸びるのもシネカノン有楽町のレイトショー上映の特徴でもあります。
シネカノン有楽町の入場のシステムについては、今回まで自由席制で運営しておりましたが、今年のようにお客様が増えますと、ご入場前に階段に並んでお待ちいただく事になりますので、それも心苦しく、劇場も座席指定制を採用していらっしゃる事もございますので、来年以降は東京フィルメックスの期間中でもシネカノン有楽町も座席指定にすべきかと、早速検討を始めております。
有楽町マリオン朝日ホールは、座席指定なのに開場時間が早まらないのは何故でしょうかと、アンケートでご指摘をいただきました。数年前から朝日ホールは座席指定の方法を取っており、これによって入場口の階段に開場前に並んでいただかずにご入場いただけるようになりました。でも、自由席と座席指定席のシステムにはそれぞれに良い面も不具合な面もあり、部分的に自由席にするような混合のシステムも検討してはみましたが、今のところは座席指定制を続けております。
実は開場まで時間がかかるのは、入れ替えの間に監督みずからによるプリントチェックのための映写をしているというシンプルかつ重要なわけがあります。お客様にはそれぞれの作品を、作り手である方が満足している状態でベストの形で上映したいという、東京フィルメックスのこだわりがあります。まぁ映画祭を運営する側にとっては、これはあたりまえの事でございます。毎日各回で別々のプリントでの上映が組まれていますので、しかもご来日の監督は上映前ギリギリにご到着することもあったり、映写チェック、字幕のタイミングチェックなど、会場整理と共に寸時の時間での確認作業をしています。さすがに監督たちもこだわりをお持ちですのでギリギリまで粘って調整してくださる監督もいらして、彼らのオーケーが出て、初めてご入場いただけるという流れなのです。
審査員のみなさま5人は、今年も素晴らしいメンバーが揃いました。最終の審査会の後、やっぱりこの5人に依頼してよかったと心底実感しました。世代や性別、ポジションなどバランスを考えての5人でしたが、和気あいあいと仲良く審査をしてくださり、各自しっかり主張しながら徹底的に討論を重ねて、最終的にとても平和に、結論を出してくださいました。
よいチームだったことの証に、授賞式では最優秀作品賞と審査員特別賞のそれぞれを、一人が受賞結果を発表し、もう一人が賞状を授与してくださり、そして委員長が総評を述べられるという、5人が役割を分担した進行となりました。5分で終わるか5時間以上かかるものか分からない審査会ですが、最後にはそれぞれのアドレスを交換して連絡を取り合う約束までしていらっしゃって、喜ばしい限りの情景でした。改めて厳正なる選考を進めてくださいました5人の方々に、深く感謝申し上げます。
「オープニング・セレモニーの登壇者が黒い服で勢ぞろいしたのは何故でしょうか」と、外国のプレスの方からもご質問をいただきました。いえ、全くの偶然で、事前に打ち合わせをしたり、示し合わせたわけではありません。審査員の方々には「東京フィルメックスはご存知の通りカジュアルな映画祭ですので、民族衣装などで着飾る必要はございません」というお話はしていたのですが。結果的には、オープニング作品「三峡好人」のジャ・ジャンクー監督も、女優のチャオ・タオさんも黒い衣装でご来日ということになり、なんだか私たちもビックリしていた次第です。
確かに日本は冠婚葬祭のフォーマルには黒という習慣はありますが、まさか全員黒だったなんて。個人的には事務局スタッフは黒子に徹して、映画が最も輝くように上映をサポートしたいという気持ちは、確かにあります。悲しいかな服装には無頓着な性質なもので、ご指摘いただいても初めはピンと来ないくらいだったのですが。そのうち私も真っ赤なドレスでも着てニコニコ堂々としてステージへ出て行けるくらいに精進いたしますので(無理だと思います)、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。
あっという間に師走に突入してしまいました。事務局スタッフにとってはつい先日まで夏だったのに、気が付いたら紅葉も深まっている今日この頃です。
会期が無事に終了し、たくさんのお客様にご来場いただきました。ゲストの監督たちもフェアウェルパーティーではご機嫌に歌ってくださった方もいらして、みなさんお元気にご帰国されました。ご協力、ご支援いただきましたみなさまに心からお礼申し上げます。またシャープなご質問をくださった観客のみなさまにも重ねてお礼申し上げます。観客のレベルの高さについては、世界の映画祭の中でも屈指と自負しております。みなさまに支えられて、またより一層のプレッシャーを痛感しながら、事務局スタッフ一同、より楽しんでいただける映画祭の企画・運営について切磋琢磨しながら邁進してまいります。どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。
公式サイトへのヒット数も大幅に増え、特に新しく挑戦したブロードキャストコーナーは1ヶ月の間に10,000件を超える盛況を記録しております。
せっかくの機会なので、これからしばらく期間中に皆様からお寄せいただいたアンケートでのご質問、ご指摘などにもお答えしながら、映画祭会期について振り返ってみたいと考えております。言い訳がましいことを書き連ねるつもりはありませんが、幾つかの選択肢の中でどちらかを選んで進めていかなくてはならない運営上の状況や、ごもっともなご意見とわかりながらも予算やお借りしている会場などの関係で、また一般の劇場公開と違った映画祭ならではの状況の中で、ギリギリの措置を講じている現状もありますため、映画祭の裏側についても少しご紹介できればと存じます。どうぞお付き合いの程お願い致します。