世界の映画祭だより に香港映画祭開幕の記事を掲載

 今日から香港国際映画祭が始まっています。4月11日までの3週間あまり、300本を超える映画が上映される大きな映画祭です。日本からも距離も近く、一般の旅行客もチケットを購入して映画を観ることができます。もちろん、人気作品のチケット入手は大変ですが…。学生のみなさんは春休みを利用しての旅行や卒業旅行のついでに立ち寄ってみてはいかがでしょう?
 世界の映画祭だよりでは、今年の香港映画祭の見どころについて簡単に紹介してあります。ぜひご覧ください。

第31回香港国際映画祭 開幕!

 今年で31回目を数え、歴史の長い国際映画祭のひとつである、香港国際映画祭が3月20日から4月11日まで23日間にわたって開催される。
香港映画祭公式サイト(英語・中国語)
 上映作品はワール・ドプレミア16本を含めて300本にも上る。
 今年のオープニング作品は、香港の「Eye in the Sky」と、韓国のパク・チャヌク監督の「I’m a Cyborg, but that’s OK.」の2本。「Eye in the Sky」は、ジョニー・トーの脚本家などを経て、本作品が監督デビューとなるヤウ・ナイホイ(游乃海)監督によるクライム・サスペンスで、先日のベルリン映画祭のフォーラム部門でも上映された。
 メイン部門のひとつ、デジタル・コンペティションでは「マキシモは花ざかり」のアウレウス・ソリト監督の新作「Tuli」がアジア・プレミア上映される。
 香港映画祭の巨大なプログラムには、この1年間で世界各国の映画祭を賑わせた話題作も含まれている。昨年11月の第7回東京フィルメックスで上映した作品のうち、このまた香港にお目見えする作品も多い。
 例えば、中国の若手作品を紹介するChinese Renaissance部門では、「アザー・ハーフ」が上映されるし、作家性の特に強い監督たちの作品を集めたAuteurs部門では「オペラジャワ」「半月」「世紀の光」などが上映される。
 その他、「領域を超えて」と題された、劇映画とドキュメンタリーの境界で鋭く中国映画の現在を描いた作品として、ジャ・ジャンクーの「三峡好人」が、彼のもう1本のドキュメンタリー作品「東」とともに上映され、「鉄西区」の王兵や「水没の前に」の李一凡、カイエ・デュ・シネマのジャン=ミシェル・フロドンらとパネル・ディスカッションを行う。
 Global Vision部門では、「りんご、もうひとつある?」「メン・アット・ワーク」「天国へ行くにはまず死すべし」が、日本からの参加作品「14歳」「フリージア」「ルート225」「ゆれる」などとともに上映される。
 他に映画祭で上映される日本映画には、「叫」「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」「さくらん」「武士の一分」「蟲師」「NARA:奈良美智との旅の記録」「立喰師列伝」「鉄コン筋クリート」「TOKYO LOOP」「こまねこ」「ルックオブラブ」(植岡喜晴)「垂乳女」(河瀬直美)「選挙」(想田和弘)などがある。
 その他の日本関係の注目作品としては、碁の伝説的な棋聖の生涯をチャン・チェンが演じた「呉清源(原題)」(田壮壮監督)が上映される。この作品は日本でもロケが行われており、伊藤歩や柄本明が出演している。
 特集上映では、リー・ハンシャン(李翰祥)のレトロスペクティブが組まれ、50?80年代に渡るフィルモグラフィから、黄梅調と呼ばれ人気を博したミュージカルや時代劇など、豪華絢爛な傑作群を上映する。
 また、現代香港の監督の特集ではハーマン・ヤウ(邱禮濤、「八仙飯店之人肉饅頭」など)が取り上げられている。
 また同時期の20日-23日には今年で開催5年目を迎える香港フィルマートも行われる。
これまでは映画祭とは別の時期に行われていたものが、今年から歩調を合わせた。企画マーケットであるHAFも、今回から映画祭が主催することになっている。
香港フィルマート(日本語あり)
HAF(日本語あり)
 加えて、今年から映画祭開催期間中にアジア・フィルム・アワード(アジア映画賞)が実施されることになった。
アジア・フィルム・アワード
 この1年間で製作もしくは公開されたアジア地域の映画のうち、最優秀作品賞、同監督賞、同主演男優賞など10部門にわたるノミネート作品の中から、17名の審査員が選出するという、アジア版アカデミー賞の趣を持つ。
 これは近年、10月に開催されるプサン映画祭がアジア圏の映画祭で大きな影響力を持つに至っている事に対して、香港政府が肝いりで試みた施策である。今年中国への返還10周年を迎える香港でこのアジア映画賞の授賞式は、まさしく返還式が行われた会場(5,000人規模)で行われ、スターを含めた多くの映画関係者が来場して、テレビ放映まで予定されるという。
 既に前売りチケットの売れ行きが、昨年の同時期よりも6割増と映画祭側も発表している。アジアの映画祭の中で、規模として最大の10月のプサン映画祭と、そして春の香港映画祭。アジア映画を盛り上げる二大映画祭として、世界各国からの熱い視線に応えられる窓口、賑やかな交流の場として、活況を呈する香港映画祭が、今幕を開けた。
(報告者:岡崎 匡)

第57回ベルリン映画祭 ラインナップ発表

2007年2月8日に開幕を迎える第57回ベルリン国際映画祭の各部門のラインアップが先日相次いで発表された。一般的な注目度が最も高いコンペティション部門には、国や地域性から監督のキャリアの面まで、非常にベルリン的としか言いようのない独特のバランスでもって、全26本(コンペ外上映作品を含む)の作品が並んだ。
その内容を地域的な観点から見てみると、まずはやはり欧米からの作品に大きな比重があることがわかる。一方にはある程度メジャー感のあるアメリカ映画が数作品並び、他方には新進監督から巨匠クラスのベテラン監督の作品まで、雑多ともいえるヨーロッパ映画が顔を揃える。このあたりの配分具合は、概ね例年通りである。敢えて特徴的な点を探すとすれば、今年は地元であるドイツが製作に参加している作品が比較的多い、ということがあげられるのかもしれない。
その他の地域からのエントリーは全部で7作品。南米はアルゼンチンとブラジルから、それぞれ1作品ずつが選出されている。そしてアジアからは、イスラエル作品を含めて5作品がエントリー。韓国、そして中国から、それぞれ2作品ずつが選出されている。韓国のパク・チャヌクの新作を除けば、いずれも新進と言ってもいい監督による作品となる。残念ながら、昨年に引き続き日本からのコンペ作品のエントリーはない。
その他の部門で派手に目を引く点を挙げるとするならば、パノラマ部門にスティーヴ・ブシェミ、ジュリー・デルピー、サラ・ポーリー、アントニオ・バンデラスら有名俳優による監督作品がいくつかエントリーしていることだろうか(ちなみにコンペ部門にはロバート・デ・ニーロの監督作が入っている)。ただ、敢えて東京フィルメックス的な視点から注目作を挙げるとすれば、アジアや日本作品以外では、やはりフォーラム部門で特別上映されるカナダの奇才監督ガイ・マディンの新作『Brand Upon the Brain!』(基本的にはサイレント作品だが、イザベラ・ロッセリーニによる生ナレーションやオーケストラ演奏と共に上映される予定)や、同じくフォーラム部門で特別上映予定のフレデリック・ワイズマンによる新作『State Legislature』というあたりになるのかもしれない。さらに言えば、ベルリナーレ・スペシャル部門において、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ベルリン・アレクサンダー広場』全エピソードがリマスター上映されることにも、敬意を表すべきだろう。
そして最後に嬉しい報告を二つ。まず一つ目は、昨年の東京フィルメックスのコンペティション部門で『マキシモは花ざかり』が上映され好評を博したフィリピンのアウレウス・ソリト監督の新作『Tuli』が早くもフォーラム部門において上映されること。実は、昨年の映画祭の折に監督が来日したタイミングは、この新作の完成直後のことだったのだ。そしてもう一つは、同じく昨年の東京フィルメックスで東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催で回顧上映を行った岡本喜八監督の作品が、フォーラム部門においてヨーロッパでは初めて特集上映されること。未だ世界では「知られざる巨匠」である岡本監督の傑作の数々が、今回の特集上映でどのような波紋を彼の地に引き起こすのか、興味を持って今後を見守りたいと思う(文/神谷直希)。
・ベルリン国際映画祭公式サイト(独語・英語): http://www.berlinale.de/
・プログラムは公式サイトの下記ページから検索が可能です:
http://www.berlinale.de/en/programm/berlinale_programm/programmsuche.php
・コンペティション部門のラインアップは以下のとおり(アルファベット順)。
Angel by Francois Ozon, France/Belgium/UK (World Premiere) / Closing Film
Beaufort by Joseph Cedar, Israel (World Premiere)
Bordertown by Gregory Nava, USA (World Premiere)
Die Falscher (The Counterfeiters) by Stefan Ruzowitzky, Germany/Austria (World Premiere)
El otro (The Other) by Ariel Rotter, Argentina/France/Germany (World Premiere)
Goodbye Bafana by Bille August, Germany/France/Belgium/UK/Italy (World Premiere)
Hallam Foe by David Mackenzie, UK (World Premiere)
Hyazgar (Desert Dream) by Zhang Lu, Republic of Korea/France (World Premiere)
In memoria di me (In Memory Of Myself) by Saverio Costanzo, Italy (World Premiere)
Irina Palm by Sam Garbarski, Belgium/Germany/Luxembourg/UK/France (World Premiere)
La Vie en Rose by Olivier Dahan, France/UK/Czech Republic (World Premiere) / Opening Film
Les Temoins (The Witnesses) by Andre Techine, France (World Premiere)
Ne touchez pas la hache (Don’t Touch The Axe) by Jacques Rivette, France/Italy (World Premiere)
O ano em que meus pais sairam de ferias (The Year My Parents Went On Vacation) by Cao Hamburger, Brazil/Argentina (International Premiere)
Obsluhoval jsem anglickeho krale (I Served The King Of England) by Jiri Menzel, Czech Republic/ Slovakia (International Premiere)
Ping guo (Lost In Beijing) by Li Yu, China (World Premiere)
Sai bo gu ji man gwen chan a (I’m A Cyborg, But That’s Ok) by Park Chan-wook, Republic of Korea (International Premiere)
The Good German by Stephen Soderbergh, USA (International Premiere)
The Good Shepherd by Robert de Niro, USA (International Premiere)
Tu ya de hun shi (Tuya’s Marriage) by Wang Quan’an, China (World Premiere)
When A Man Falls In The Forest by Ryan Eslinger, Germany/Canada/USA (World Premiere)
Yella by Christian Petzold, Germany (World Premiere)
コンペ外上映作品:
300 by Zack Snyder, USA (World Premiere, Out of Competition)
Letters From Iwo Jima by Clint Eastwood, USA (European Premiere, Out of Competition)
Notes On A Scandal by Richard Eyre, UK (International Premiere, Out of Competition)
The Walker by Paul Schrader, USA/UK (World Premiere, Out of Competition)
・ 日本からの出品作(長編作品)は以下のとおり(順不同)。
パノラマ部門
『武士の一分』(山田洋次監督)
フォーラム部門
『選挙』(想田和弘監督)
『カインの末裔』(奥秀太郎監督)
『無花果の顔』(桃井かおり監督)
『Mona Lisa』(李纓監督)
岡本喜八監督特集
『独立愚連隊』(1959年)
『暗黒街の対決』(1960年)
『地獄の饗宴』(1961年)
『江分利満氏の優雅な日常』(1963年)
『大菩薩峠』(1966年)
『日本のいちばん長い日』(1967年)
『斬る』(1968年)
『肉弾』(1968年)
『赤毛』(1969年)
 
ベルリナーレ・スペシャル部門
『さくらん』(蜷川実花監督)
Generation 14plus部門
『鉄コン筋クリート』(マイケル・アリアス監督)
レトロスペクティブ部門
『生さぬ仲』(1932年/成瀬巳喜男監督)
『夜ごとの夢』(1933年/成瀬巳喜男監督)
Eat, Drink, See Movies部門
『プルコギ』(グ・スーヨン監督)
以上。
(報告者:神谷直希)

「進化する日本映画-Evolving Japanese Cinema」英語字幕付き上映会

2/2(金)-2/4(日)にかけて、赤坂・OAGホール(ドイツ文化会館内)にて、国際交流基金主催の英語字幕付き上映会「進化する日本映画 -Evolving Japanese Cinema」が開催されます。
ぜひ、この上映会に足をお運びくださるよう、お願い申し上げます。
(なお、下は1/31に発行しましたメールマガジンです。ご登録されたのに届いていない方がいらっしゃいましたら、登録手続きの不備が考えられます。再度、お手続きください)
=========================================================
————- The Japan Foundation Film Series Part 7 ————–
———–   Evolving Japanese Cinema   ————–
          ■進化する日本映画■
 2/2(金)?2/4(日)赤坂・OAGホールで開催!
  *英語字幕付き日本映画上映会
===================<6作品上映、(全て英語字幕付)>================
 <INDEX>
  1,開催概要
  2,企画趣旨
  3,上映作品紹介
  4,お問い合せ先
  5, 東京フィルメックスよりお知らせ
——————————
■1、開催概要
●期間:2007年2/2(金)?2/4(日)
●会場:赤坂・OAGホール
    東京都港区赤坂7?5?56 ドイツ文化会館内
    地下鉄銀座線・半蔵門線・都営大江戸線
    「青山一丁目」駅A4出口より徒歩5分
●主催:国際交流基金
●企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
●協力:角川ヘラルド、シネカノン、松竹、日活
●料金:当日600円(当日券のみ)
*各回入替制 *全作品英語字幕付き(講演は入場無料)
<お問合せ先>
・ 会期前のお問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
        Tel: 03-3560-6394(11:00?17:30 平日のみ)
・ 会期中のお問合せ: Tel: 080-5150-5053(開催期間中のみ)
<サイト>
(日) http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/fsp-7.html
(英) http://www.jpf.go.jp/e/culture/topics/movie/fsp7.html
<タイムテーブル>(6作品上映)   *入替制(開場は15分前)
【2/2(金)】
 18:30 その男、凶暴につき(1989/103分/監督:北野武)
  Violent Cop / 1989 / 103 min. / KITANO Takeshi
【2/3(土)】
 13:30 MONDAY(2000/100分/監督:SABU)
  Monday / 2000 / 100 min. / SABU
 16:00 ファンシィダンス(1989/101分/監督:周防正行)
  Fancy Dance / 1989 / 101 min. / SUO Masayuki
 18:30 月はどっちに出ている(1993/109分/監督:崔洋一)
  All Under the Moon / 1993 / 109 min. / SAI Yoichi
【2/4(日)】
 13:30 害虫 (92分)(2001/92分/監督:塩田明彦)
  Harmful Insect / 2001 / 92 min. / SHIOTA Akihiko
 15:15 講演 塩田明彦 監督
  Lecture by SHIOTA Akihiko
 17:30 カリスマ(2001/92分/監督:黒沢清)
  Charisma / 2000 / 103 min. / KUROSAWA Kiyoshi

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座席指定制について – 林 加奈子ディレクター(14)

<前売りでは売り切れなのに、実際には空席が目立つ>というご意見もいただきました。確かに座席は当日券の枚数を確保し、ほかにもプレスやゲスト席などIDパスをお持ちの方々のお座席や、配給が決まっている作品はそちらへもお座席をお渡ししている関係上、前売りの段階から全席を売ってしまうことは不可能な現状がございます。
また前売り券をお買い求めいただいた方の中にはご都合が合わずに、止む無くご来場いただけずに空席になる場合もございますが、これは既に座席指定で販売済みでございますので、重ねて他の方にお回しすることも叶わず、止む無く空いているお席が出来てしまうこともございます。
自由席はお入りになってからはご自由にお好きなお席という良い面がありますが、ご入場の際に階段に整列してしばらくお待ちいただく形になってしまい、それもお客様にはご不便な事があろうかと考えております。座席指定と自由席は、両方とも良い面と不都合な側面があり、事務局でも試行錯誤ではございますが、よりよき方法を探っております。みなさまからの、貴重なご意見には、心から感謝申し上げます。

ボランティア・スタッフの組織化 – 林 加奈子ディレクター(13)

今年は約80人のボランティアスタッフにご活躍いただきました。大きくは運営、広報、ホスピタリティ、の各担当に分かれてのお仕事になりますが、大きな負担(やり甲斐?)の中、みなさまそれぞれの力を発揮いただいて、こなしていただきました。改めて重ねて感謝申し上げます。
中にはもう何年も引き続きお手伝いいただいているスタッフもいらっしゃいますが、初めての方は、公式サイトの募集要項に沿って応募をしていただいて、面接をしております。実際には選び抜かれた優秀な方々で、年齢も経験も様々ですが、観客のお客様とゲストのお客様を温かく気持ちよくおもてなしする精神に富んだ、良いチームが作れました。
期間中になるべくたくさんお手伝い可能な方が優先となります。また組織化してチームを編成していくためには、2ヶ月かかりますので、早い次期に応募をしていただくことが大変助かります。初めての方は是非とも夏の間に、できれば8月半ばあたりまでに、応募申請をしていただけますよう、心からお願い申し上げます。
第8回に向けて準備は既に始まっております。どうぞボランティア・スタッフとして東京フィルメックスの運営に関わってみようと考えてくださるみなさま、早くご一報くださいませ。

アンケートのメッセージは… – 林 加奈子ディレクター(12)

アンケートのご感想が監督に伝わっているのかどうか、お問い合わせをいただきましたのでご回答申し上げます。これは全ての作品というわけではありませんが、監督によっては格別にアンケートのご意見を知りたいという方もいらっしゃいますので、個人情報の部分を削除して、それぞれの作品に付いてのご意見をご覧頂く場合もございます。
が、基本的にはアンケートは事務局でお伺いしております項目ですので、監督に何か特別にメッセージなどある場合でもアンケートに書いて確実に届くというお約束はできません。あしからずご了承くださいますようお願い申し上げます。

サポーターズクラブ会員について – 林 加奈子ディレクター(11)

サポーターズ・クラブの会員のみなさまには、東京フィルメックスの趣旨に賛同して活動を支援していただいていますが、この会費につきましては、実際に「高い」というご意見と「安い」というご意見と、両方いただいております。チケットの先行発売の枠を活用するためにメンバーになる方には高すぎるのかもしれません。また個人でも複数口のお申し込みをいただいている方もいらっしゃって、有り難い限りです。
映画を一本上映するのに幾らのお金が掛かるか。これはみなさまに愚痴る必要もない事ではありますが、「宣伝が足りない」という激励などもアンケートでいただきますもので、開催経費の予算が限られた中で企画運営を進めております事務局としては、胸の詰まるところです。宣伝するにもメディアや媒体に広告を載せたり、街に旗を出したり看板を出したりするのにも、大きな費用が掛かります。海外からのプリント調達、通関費、字幕翻訳費、字幕投影費、フィルム映写費、そして会場拝借料金、広報もポスターデザインからチラシ、公式カタログの編集、会場ロビーの制作物など、たくさんの経費が掛かります。
ゲストをお招きしたり、審査員を依頼したりの費用。ボランティアスタッフを集めてミーティングするにも、会議室を借りる費用がかかります。一本の作品を上映するのに一枚のチケットを幾らで売らないと収支としては合わないかという単純計算をしてしまうと、どうにも悲しいばかりです。
サポーターズクラブ会員として頂戴しております会費は、東京フィルメックスの活動の運営経費として、大切に、大事に使わせていただいております。NPO(特定非営利活動法人)として活動を進めておりますが、非営利というのは赤字でもよいという事では全くありません。大変苦しい中で何とか続けて来れたのも、ご協力いただいております関係各位のおかげと、サポーターズ会員のみなさまと、加えてご協賛、ご協力いただいている各位には、重ねて感謝と御礼を申し上げます。

映画祭ディレクターの資質 – 林 加奈子ディレクター(10)

私は以前の仕事で、日本映画を海外の国際映画祭のディレクターやプログラマーにご紹介したり、海外のシネマテークやアーカイブに日本映画の巡回上映をしたりという事をしていたもので、海外の国際映画祭関係者とは知り合いも多く、まさに彼らが必死で作品を選択されるのを目の当たりにして来た経験があります。これは貴重な財産であり、ネットワークという面でももちろんなのですが、その一方で尊敬できるディレクターたちは、彼らが自分の映画祭ならではの「どうしても上映したい」という作品を探すその情熱たるや、すさまじいものがあるのを知っています。
映画祭同士のパワーゲームに陥ることなく、作品の力を信じて、それらの作品を支援し、より一層輝くために力を尽くすのが、映画祭の使命です。今回、釜山国際映画祭のキム・ドンホさまと期間中を過ごす機会に恵まれて改めて痛感したのは、その素晴らしいお人柄に尽きます。韓国映画界のドンと言ってもおかしくない方なのに、腰が低くて無理強いしないし、権力を弄ばない。本当に温かくも立派な紳士でいらっしゃいます。
加えてドンホさまについてもう一つ驚いたことは、健啖でいらっしゃること。よく召し上がります。しかも早い。早飯っていうのは、もしかしたらディレクターの資質の一ポイントかしら、と考えてしまいました。つまり人のペースに合わせて食べられる。時間も場所も選ばない。海外に出かけるとディナーが3つも重なったり、ゲルマン系の人との朝早くの打ち合わせから、ラテン系との人たちとの夜遅くの重いディナーとか、もしくは試写が続いて全く食べる時間がなかったりと、とにかく全く胃に優しくない時間をサバイバルしていかないとならないわけですので、体力が肝心という次第です。

「字幕投影について」 – 林 加奈子ディレクター(9)

朝日ホールの上映では、日本語字幕を画面の外に出して表示しております。これについては、見やすくて良いという方と、見えにくいという両方のご意見を頂いています。事務局としても字幕投影については、考えどころでございます。
基本的に、英語字幕の付いているプリントを映画祭での上映だけのために海外から取り寄せて、それに日本語字幕をプリントを傷つけることなく、別のプロジェクターで投影する方法を用いておりまして、これにはアテネフランセ文化センターの字幕映写チームの神業的な作業にお世話になっております。翻訳者の方々にもギリギリにプリントが日本に届くような時間との戦いの中で、ご無理なお願いを毎年重ねてしまっておりまして、感謝に耐えません。
それで、画面の中に英語と日本語と両方が入ると、本編が見えにくいという難点もありえますが、また座席によっては字幕を外側に出すと見えにくくなるのも事実で、はたまた作品によっては画面の中に入れると映像の美しさが半減してしまう危惧のあるものもあり、難しいところです。
ただテクニカル面ではかなり工夫がなされて状況も変化してきていますし、画面の中に入れても映像への支障が最小限に抑えられる形での投影技術も進歩してきているようなので、今後お客様に見やすい日本語字幕かつ作り手のこだわりを損なわない日本語字幕のありかたについては、検討を重ねております。