第18回東京フィルメックス受賞結果
第18回東京フィルメックスコンペティション部門審査員は以下の作品に賞を贈ります。
【第18回東京フィルメックス コンペティション 受賞結果】
【最優秀作品賞】
『殺人者マルリナ』 Marlina the Murderer in Four Acts
(モーリー・スリヤ/インドネシア、フランス、マレーシア、タイ/2017年/95分)
副賞として賞金75万円が監督に授与されます。
授賞理由;
マカロニウエスタンの音楽に乗ってヒロインは戦う
敵は男
そして男性社会
今こそ復讐せよ
破壊せよ
強姦などに打ちひしがれる哀れな女を演じるのは、もうやめよう
女性自らが、新しい女性像を作ること
肉体的にも精神的にも、タフな、女性像を。
エンターテイメント型アクション映画に込められたメッセージ。
闘うヒロイン像を作り出した、イキのいい痛快な傑作の誕生です。
『見えるもの、見えざるもの』 The Seen and Unseen
(カミラ・アンディニ/インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール/2017年/86分)
副賞として賞金75万円が監督に授与されます。
授賞理由;
双子としてこの世に生を受けた姉と弟
ほとんど同時に命を受けながら弟は死へ
姉は生の方へと双子は別離を強いられる
理不尽とも言える命のありよう
最後の別れを前に、命を慈しむように、姉は弟をダンスに誘う
伝統と現代
現実とファンタジー
光りと影
昼と夜
過去の記憶と一瞬の現在
それらの混在こそが地上のパラダイス
新しくて懐かしさに満ちた傑作です。
■第18回東京フィルメックス コンペティション審査員:
原一男(審査委員長:日本/映画監督)、國實瑞惠(日本/プロデューサー)、エレン・キム(韓国/映画祭プログラマー、映画プロデューサー)、ミレーナ・グレゴール(ドイツ/アルセナール芸術監督)、クラレンス・ツィ(香港/映画評論家)
■観客賞
『ニッポン国VS泉南石綿(いしわた)村』 Sennan Asbestos Disaster (原一男/日本/2017/215分)
■学生審査員賞
『泳ぎすぎた夜』 The Night I Swam (ダミアン・マニヴェル、五十嵐耕平/日本、フランス/2017年/79分)
授賞理由;
孤独や家族を複雑に描こうとする作品が多い中で、『泳ぎすぎた夜』はシンプルに見える映画だからこそ、一人の小さな子供のたった一夜から、私たちにまっすぐに届けられたように思います。
それはとても希望に溢れたことで、同じ作り手としても羨ましく思いました。
私たちはタカラくんを通して、私たちが忘れてはいけないのに忘れてしまった感覚を思い出しました。20年程しか生きていないのに勝手に大人ぶっていることを思い知らされ、恥ずかしくも感じました。けれど、それは同時に私たちがここまで成長したことも確かなことなのだと小さなタカラくんに教わりました。
● 学生審査員:
シガヤダイスケ(日本大学芸術学部卒)、福田芽衣(東放学園映画専門学校卒)、鈴木ゆり子(国際基督教大学)
世界的に大きな注目を集めるアジアからは、才能ある新鋭たちが次々と登場しています。
そんなアジアの新進作家が2016年から2017年にかけて製作した作品の中から、9作品を上映します。
また5名からなる国際審査員が、最優秀作品賞と審査員特別賞を選び、11/25(土)に行われる授賞式で発表します。
(日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作)
『馬を放つ』 Centaur
キルギス、フランス、ドイツ、オランダ、日本 / 2017 / 89分 / 監督:アクタン・アリム・クバト(Aktan ARYM KUBAT)
配給:ビターズ・エンド
キルギスの草原地帯の村。村人から“ケンタウロス”と呼ばれる男は古くからの伝説を信じ、夜な夜な馬を盗んでは野に放つが…。キルギスを代表する映画作家アクタン・アリム・クバトの最新作。ベルリン国際映画祭で上映され、国際アートシネマ連盟賞を受賞した。
インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール / 2017 / 86分 / 監督:カミラ・アンディニ(Kamila ANDINI)
脳障害により病院のベッドに寝たきりの双子のきょうだいを看病する10歳の少女タントリ。そんな彼女の心は真夜中に解放される。ガリン・ヌグロホの娘カミラ・アンディニがバリ島の伝説をモチーフに作り上げた幻想譚。現実と幻想が混淆した神話的な世界が美しい。
インドネシア、フランス、マレーシア、タイ / 2017 / 95分 / 監督:モーリー・スリヤ(Mouly SURYA)
インドネシアの僻村。強盗団に襲われ、彼らを殺害したマルリナは、自らの正当性を証明するため、はるか離れた町の警察署に向かうが…。西部劇を彷彿とさせる風景を舞台に、ガリン・ヌグロホの原案を新鋭モーリー・スリヤが映画化。カンヌ映画祭監督週間で上映。
フィリピン / 2017 / 107分 / 監督:アドルフォ・アリックスJr(Adolfo ALIX Jr.)
路上での射殺という過激な麻薬撲滅運動が吹き荒れるフィリピン。麻薬取引に手を染めていた主婦サラは真っ当な仕事に就こうと努力する。そんな時、麻薬中毒の息子が失踪するが…。巨匠リノ・ブロッカの社会派作品を彷彿させるアドルフォ・アリックスJrの力作。
台湾 / 2017 / 105分 / 監督:ホァン・シー(HUANG Xi)
同じ男あての間違い電話を何度も受けた若い女性は、次第にこの男のことが気になってくる。やがてインコの失踪を契機に、彼女の思いがけぬ過去が明らかに……。ホウ・シャオシェンのアシスタントを務めたホァン・シーの監督デビュー作。台北映画祭で4賞を受賞。
中国 / 2017 / 82分 / 監督:シュー・ビン(XU Bing)
尼僧になる修行をやめ、俗世間に戻った若い女性チンティン。やがて彼女を一方的に愛していた若者クーファンはインターネットの動画サイトで活躍するアイドルがチンティンなのではないかと思い始める……。中国の現代美術界の旗手、シュー・ビンの初監督作品。
中国 / 2017 / 109分 / 監督:ユー・グァンイー(YU Guangyi)
中国東北地区の山間部の人々を一貫して記録し続けてきたユー・グァンイーが、寒村のシャーマンたちの生活を4年以上にわたって追った画期的ドキュメンタリー。それは人々が精霊たちと密接に暮らしていた時代の、近いうちに消滅してしまう文化の記録でもある。
中国 / 2017 / 126分 / 監督:ツァイ・シャンジュン(CAI Shangjun)
中国北東部の街で警察へのタレコミを糧として生活を送るボー。ある時、強盗殺人事件が起こり、自分に嫌疑がかかることを恐れたボーはロシアに逃亡する。『人山人海』のツァイ・シャンジュンがホァン・ボーを主演に迎えたフィルム・ノワール。撮影はユー・リクウァイ。
日本 / 2017 / 79分 / 監督:五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル(IGARASHI Kohei, Damien MANIVEL)
配給:コピアポア・フィルム、NOBO
雪に覆われた冬の青森。早朝の魚市場で仕事をする父親に絵を届けるため、6歳の少年は通学路を外れ、小さな冒険を始める。2014年のロカルノ映画祭で出会った二人の新鋭監督がその3年後に生み出した共同監督作品。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映された。