座席指定制へのご質問について – 林 加奈子ディレクター(4)

有楽町マリオン朝日ホールは、座席指定なのに開場時間が早まらないのは何故でしょうかと、アンケートでご指摘をいただきました。数年前から朝日ホールは座席指定の方法を取っており、これによって入場口の階段に開場前に並んでいただかずにご入場いただけるようになりました。でも、自由席と座席指定席のシステムにはそれぞれに良い面も不具合な面もあり、部分的に自由席にするような混合のシステムも検討してはみましたが、今のところは座席指定制を続けております。
実は開場まで時間がかかるのは、入れ替えの間に監督みずからによるプリントチェックのための映写をしているというシンプルかつ重要なわけがあります。お客様にはそれぞれの作品を、作り手である方が満足している状態でベストの形で上映したいという、東京フィルメックスのこだわりがあります。まぁ映画祭を運営する側にとっては、これはあたりまえの事でございます。毎日各回で別々のプリントでの上映が組まれていますので、しかもご来日の監督は上映前ギリギリにご到着することもあったり、映写チェック、字幕のタイミングチェックなど、会場整理と共に寸時の時間での確認作業をしています。さすがに監督たちもこだわりをお持ちですのでギリギリまで粘って調整してくださる監督もいらして、彼らのオーケーが出て、初めてご入場いただけるという流れなのです。

5人の審査員たち – 林 加奈子ディレクター(3)

審査員のみなさま5人は、今年も素晴らしいメンバーが揃いました。最終の審査会の後、やっぱりこの5人に依頼してよかったと心底実感しました。世代や性別、ポジションなどバランスを考えての5人でしたが、和気あいあいと仲良く審査をしてくださり、各自しっかり主張しながら徹底的に討論を重ねて、最終的にとても平和に、結論を出してくださいました。
よいチームだったことの証に、授賞式では最優秀作品賞と審査員特別賞のそれぞれを、一人が受賞結果を発表し、もう一人が賞状を授与してくださり、そして委員長が総評を述べられるという、5人が役割を分担した進行となりました。5分で終わるか5時間以上かかるものか分からない審査会ですが、最後にはそれぞれのアドレスを交換して連絡を取り合う約束までしていらっしゃって、喜ばしい限りの情景でした。改めて厳正なる選考を進めてくださいました5人の方々に、深く感謝申し上げます。

黒い衣装 – 林 加奈子ディレクター(2)

「オープニング・セレモニーの登壇者が黒い服で勢ぞろいしたのは何故でしょうか」と、外国のプレスの方からもご質問をいただきました。いえ、全くの偶然で、事前に打ち合わせをしたり、示し合わせたわけではありません。審査員の方々には「東京フィルメックスはご存知の通りカジュアルな映画祭ですので、民族衣装などで着飾る必要はございません」というお話はしていたのですが。結果的には、オープニング作品「三峡好人」のジャ・ジャンクー監督も、女優のチャオ・タオさんも黒い衣装でご来日ということになり、なんだか私たちもビックリしていた次第です。
確かに日本は冠婚葬祭のフォーマルには黒という習慣はありますが、まさか全員黒だったなんて。個人的には事務局スタッフは黒子に徹して、映画が最も輝くように上映をサポートしたいという気持ちは、確かにあります。悲しいかな服装には無頓着な性質なもので、ご指摘いただいても初めはピンと来ないくらいだったのですが。そのうち私も真っ赤なドレスでも着てニコニコ堂々としてステージへ出て行けるくらいに精進いたしますので(無理だと思います)、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

映画祭を終えて – 林 加奈子ディレクター(1)

あっという間に師走に突入してしまいました。事務局スタッフにとってはつい先日まで夏だったのに、気が付いたら紅葉も深まっている今日この頃です。
会期が無事に終了し、たくさんのお客様にご来場いただきました。ゲストの監督たちもフェアウェルパーティーではご機嫌に歌ってくださった方もいらして、みなさんお元気にご帰国されました。ご協力、ご支援いただきましたみなさまに心からお礼申し上げます。またシャープなご質問をくださった観客のみなさまにも重ねてお礼申し上げます。観客のレベルの高さについては、世界の映画祭の中でも屈指と自負しております。みなさまに支えられて、またより一層のプレッシャーを痛感しながら、事務局スタッフ一同、より楽しんでいただける映画祭の企画・運営について切磋琢磨しながら邁進してまいります。どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。
公式サイトへのヒット数も大幅に増え、特に新しく挑戦したブロードキャストコーナーは1ヶ月の間に10,000件を超える盛況を記録しております。
せっかくの機会なので、これからしばらく期間中に皆様からお寄せいただいたアンケートでのご質問、ご指摘などにもお答えしながら、映画祭会期について振り返ってみたいと考えております。言い訳がましいことを書き連ねるつもりはありませんが、幾つかの選択肢の中でどちらかを選んで進めていかなくてはならない運営上の状況や、ごもっともなご意見とわかりながらも予算やお借りしている会場などの関係で、また一般の劇場公開と違った映画祭ならではの状況の中で、ギリギリの措置を講じている現状もありますため、映画祭の裏側についても少しご紹介できればと存じます。どうぞお付き合いの程お願い致します。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター(13)

さぁ。いよいよ本日開幕の第7回東京フィルメックス。怖くて震えてしまいます。事務局では観客賞の投票箱など製作物の準備も着々と進んで、公式カタログも美しく完成しました。人手も荷物も増えてきて、いつもの事務局が狭く感じられます。
全ての作品は当日券もご用意しております。行き届いた映画祭を目指し、力を尽くします。プログラムと観客の質の高さが自慢の東京フィルメックス。映画が好きで好きでというお客様と一緒に映画の力を実感できる10日間。熱気の中で、多くの作品をご覧くださいますよう。
映画は一本一本それぞれの作り手の方が願いを込めて作った作品。私たち映画祭のスタッフは、それぞれの映画が一番輝くように、一番お客様に伝わるように、一番お楽しみいただけますように、一本一本を大切に、ご紹介申し上げます。
みなさま、会場にてお待ちしております。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター(12)

期間中のトークイベントについて、ご紹介します。
まず、岡本喜八特集。京橋のフィルムセンターでは、18日と19日の上映後にトークの予定があります。雪村いづみさん、寺田農さんと寺島進さんに岡本演出の事などお話を伺います。
また、MARUNOUCHI CAFE, 丸の内3丁目の新東京ビルに素敵な憩いの場所がありまして、今年の東京フィルメックスでは、24日の午後にモーツァルト生誕250周年絡みの新作の監督をお招きして、トークイベントを2回に分けて行う予定にしています。
そして、おなじみのマリオン朝日ホールのスクエアBでも、祭日の23日と最後の週末25日(土)、26日(日)には、ゲストを招いてのトークを予定しております。公式サイトにお時間、ゲストなどの詳細が載っておりますので、ご確認のうえ、どうぞご来場ください。すべて入場無料です。
映画と共に作り手の生の声を、こじんまりした規模で十分に味わっていただきたいという願いを込めた企画です。お時間が許されれば、皆様からのご質問もお受けしたいと考えていますので、奮ってご参加ください。それぞれ予定人員を越えたところで締め切りますのでご注意を。お待ちしております。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター(11)

今年はモーツァルト生誕250周年。という事で、早くから日本でもコンサートなどが行われていましたが、映画の分野でもニュークラウンドホープというモーツァルト・プロジェクトがあり、東京フィルメックスでも関連の5作品が上映されます。「半月」(バフマン・ゴバディ)、「オペラ・ジャワ」(ガリン・ヌグロホ)、「世紀の光」(アピチャッポン・ウィーラセタクン)、「ハンモック」(パス・エンシナ)、そして「黒眼圏」(ツァイ・ミンリャン)の5本は,このプロジェクトで製作されました。
まさに11月のオーストリアのウィーンでは総合芸術祭が開催されて、舞台演出家のピーター・セラーズ監修のもと、音楽・演劇・舞踏・建築などのアートが華やかに紹介されているそうです。ヌグホロ監督、ゴバディ監督、エンシナ監督、そしてウィーラーセタクン監督は、ウィーンから東京フィルメックスへのご来日になりますので、あちらの様子も伺ってみようと思っています。それぞれ、今によみがえるモーツァルトとでも言ったらよいのでしょうか。個性あふれる5本で、特に「ハンモック」はパラグアイの女性監督のデビュー作です。モーツァルトもすごいけど、こういうユニークなすばらしい5本を製作したプロデューサーも監督も、作り手の方々には頭が下がるばかりです。是非ご覧ください。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター(10)

映画のタイトルについて、お話します。配給が決まっている作品はともかく、上映を決めた後に、事務局みんなで日本語のタイトルを考えます。基本的には元のタイトルに沿って日本語でおかしくないように固めるのですが、原語でのタイトルと英語で流布しているものの意味が微妙に違う作品も、中にはあります。例えば今年は「世紀の光」の英語タイトルは[Syndromes and a Century]なのですが、 監督ご本人にも確認してから決定しました。バフマン・ゴバディ監督の「半月」は、英語では「Half Moon」だったので、カタカナで「ハーフムーン」という方法も考えましたが、中国のインリャン監督の「アザー・ハーフ」とお客様が混乱しないように漢字に決めました。またフィリピンの「マキシモは花ざかり」も意味を汲みながら雰囲気を出そうとみんなで相談して決めましたが、英語タイトルは「Blossoming of Maximo Oliveros」です。ちなみに小林政広監督の「幸福」は、コウフクではなく「しあわせ」と読みますのでご注意ください。タイトルには作り手の気持ちが込められていますので、大事にご紹介したいものです。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (9)

映画祭の公式カタログは、その編集たるや熾烈な作業を強いられます。まず初日には必ず完成していないといけない。資料的な価値、データなどが間違っていてはいけない。それなのにプログラムの数や、配給の動き、ゲストの来日変更などによってのイベントのドタキャンなどギリギリになって突然の変更が多すぎる難点があります。海外から取り寄せる資料もバラバラで、情報もさまざまだったりして、確認に確認を重ねて念押ししても変更がありえるのが実情です。監督ひとりひとりの心のこもったメッセージが記載されていますので、みなさまどうぞ会場でお買い求めください。どうしても映画チケット一枚よりも安い値段を設定したくて、第2回目からは一冊1000円です。バックナンバーも是非是非どうぞ。