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2007年10月22日 10/3 プレイベント「アピチャッポンの全て - All About Apichatpong」 レポート

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 10月3日夜、MARUNOUCHI CAFEにて第8回東京フィルメックス・プレイベント、トークサロン「アピチャッポンの全てーAll About Apichatpong」が開催された。

 02年、04年のコンペ部門で最優秀作品賞を受賞するなど、東京フィルメックスでもお馴染みのタイの映画作家アピチャッポン・ウィーラセタクン監督。翌日から山形国際ドキュメンタリー映画祭の審査員を務めるため来日した彼に、映画作品はもちろん、現代アートの仕事について大いに語っていただくという企画だ。聞き手は、アピチャッポン監督の映画は全て観ているほどの大ファン、05年にはフィルメックスの審査員を務めた俳優の西島秀俊さん。昨年の映画祭で初めて顔を合わせ交友を結んだふたりが、約1年ぶりの再会を果たし、1時間半におよぶ和やかなトークを行った。

「女性が多い!西島さんのおかげですね」と監督も驚くほどに、場内は多くの人で熱気ムンムン。東京フィルメックスのディレクター、林 加奈子による挨拶と両氏の紹介があった後、監督はノートパソコンを操り、前方のスクリーンにスチール写真を投影。白い壁の部屋に女性が立っている写真を映し出し、監督のキャリアの出発点でもある建築と映画を比較するところから話が始まった。

「建築も映画も、実用性と美しさを求め、時間に関わる表現方法であるところが共通します。僕がいまやっている仕事は、映画、インスタレーション、ビデオアートですが、どの分野でも、時間の問題、記憶と時間、現実に対するフィクションの関わりを探求していると思います」

 さらに、各地で行われたインスタレーションの様子が次々と映し出される中、監督が1つ1つの作品について解説していく。

 大量の風船。各々に、“あなたは幸せですか?”という質問だけ書いた料金先払いのハガキをつけておき、拾った人にその返事を書いて送ってもらう不特定の人々の参加を狙った共同作業。別々の映像を映す防音仕様の2つの部屋で、それぞれ音を切り替えたりしながら、空間を体験している人が映像と音で自分で物語を作り出していく試み。子供たちにカメラを与え、津波の被災体験を役者たちを使って子供たち自身に演出させ心のケアをする復興事業の一環。記憶のつまった空間としての廃業ホテルをポートレートしたインスタレーション。などなど、さまざまな興味深いアート活動が提示され、映画作品とはまた違う角度から、アピチャッポン監督の魅力が炙り出された。

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 インスタレーションの解説に熱心に耳を傾けていた西島さんが、途中から質問モードに。アピチャッポン作品への熱い思いを語り、映画の在り方を問うトークへと突入する。

「『世紀の光』では、前半の日常のシーンが続いていく中で、突然抽象的な映像が入ってくる。パワフルで、しかもこちらが油断しているときにそうした映像が現れるので、本当に恐ろしいところまで観客は連れて行かれます。監督の作品は映画の限界点というか、いろんな境界を超えようとしているのをすごく感じます」(西島)
「僕はコントラストに興味があるんです。光と影、男と女、昼と夜、科学と宗教、事実とフィクション……。ただ、その違いというのは一体どこにあるんだろうと考えると、非常に複雑なことになってきます。たとえば、科学の相対性理論と宗教の仏教における時間の概念は、実はとてもよく似ているんです」(アピ)

「観客に催眠術をかけるようなハリウッド映画とは違って、監督の作品は観客をぼんやり受け手に回らせるのではなく、つねに目を覚まさせているような気がします」(西島)
「欲望の喚起の仕方が違うのでしょう。ハリウッド映画の場合、たとえばブラッド・ピットや車が欲しい、というような欲望を観客に呼び起こすのに対し、自分たちの作っている作家的な映画は、映画作家本人の欲望をまず映画で見せることで、映画作家と観客が手と手をとって新しい領域に入っていくような感覚なのだと思います」(アピ)

 トーク終盤では、アピチャッポン監督と西島さんがユニークなメールのやりとりをしていたことが判明。西島さん出演の映画企画を監督が仄めかすほか、監督から西島さんに新作映画の予定や、作品への挑み方に関する質問が投げかけられる一幕も。

 10年前、初めての国際映画祭として参加した、アピチャッポン監督にとっては特別な思いのある山形国際ドキュメンタリー映画祭。「審査員をやったことは人生が変わるくらい大きな出来事だった」と、西島さんが断言する東京フィルメックス。両映画祭について、ふたりの話が大いに盛り上がったところで、熱気冷めやらぬままトークは終了した。
 
 なお、アピチャッポン監督ほか、13ヶ国、34人のクリエイターたちのアート作品が展示される「SPACE FOR YOUR FUTURE」は、10月27日より東京都現代美術館にて開催される。
(取材・文/中西愛子)

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投稿者 FILMeX : 2007年10月22日 17:54



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