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2007年11月20日 11/20 トークイベント「映画の未来へ~新たな才能の発掘と育成~」

IMGP2832.jpg 11月20日、有楽町朝日ホール11階スクエアにて、今回審査員として来日したカンヌ国際映画祭代表補佐クリスチャン・ジュンヌさん、ベルリン国際映画祭<タレント・キャンパス>ディレクターであるドロテー・ヴェナーさんを迎え、トークイベントが行われた。第8回東京フィルメックスのキャッチフレーズである「映画の未来へ」にちなんで、テーマは若手映画作家の発掘と育成。現場を知るお二人の口から語られた貴重なお話を通じて、ふたつの映画祭に共通する若手作家の支援体制が浮かび上がった。

 まず、司会進行役の林 加奈子東京フィルメックスディレクターから、両映画祭が作家たちのチャレンジを受け入れる場を整備している映画祭であるとの紹介がされた。その後、ヴェナーさんから、ベルリン映画祭で開催されている若手映画人を育成するワークショップ<タレント・キャンパス>についての説明がなされた。
「<タレント・キャンパス>とは新進の映画作家を世界中から発掘するプログラムで、来年の2月で第6回目を迎えます。応募制を採っていて、応募者の中から選ばれた340人の若手作家に招待状を出して参加してもらっています。ここで教えられることは、成功のためのノウハウやこういう方法で映画を作れば上手く出来るという処方箋ではありません。若手を一堂に集め、彼らがネットワークを作る支援をする、彼らが作品を作り出すためのインスピレーションを与えることが目的です。どのようにしてこれから自分のたどる道筋を探していくか、ということを自分自身で発見する場であってほしいと願っています」
IMGP2839.jpg この話を受けて、20年以上ベルリンに参加していたものの<タレント・キャンパス>には今年初めて参加したという林ディレクターが、「いろいろな質問を持っている若い人たちがたくさんいて、とてもカジュアルな議論ができる場だった」との感想を語った。さらに、「そんな打ち解けた雰囲気を作り出すコツは?」との質問に、ヴェナーさんは「私たちはまず、参加する若い人たちは賢く、彼らが自ら良い雰囲気を作り出すことができるとの前提に立っています。私たちは舞台の提供をするだけです。彼らは色々な人と出会いたいと思ってやってくるので、自然とその舞台の上で活躍してくれます。ですから、雰囲気作りのためにこれといって努力していることはありません。ただ、ひとつ言えるとするなら、私たちは終わった後の反省を十分にし、今後に活かす点と改善しなければならない点を自己批判的に見直すことを重視しています。また、彼らが十分に交流し、話し合えるように、休憩時間を多くとるようにしています」と答えた。

IMGP2846.jpg 次に話は、カンヌ映画祭での<シネフォンダシオン>のことに移った。東京フィルメックスで、昨年、一昨年と2年連続して審査員特別賞を受けたイン・リャン監督(『あひるを背負った少年』『アザー・ハーフ』)も参加した<シネフォンダシオン>というシステムについて、ジュンヌさんは次のように説明した。
「カンヌ映画祭が50回目を迎えた1997年から始まったもので、映像芸術の制作を支援しています。これには三つのフェイズがあり、まず一つ目は短編映画のコンペティション部門です。これは映画学校から推薦してもらった作品を上映し、審査を行い、受賞監督の長編第一作目をカンヌ映画祭のオフィシャルセレクションで上映するというものです。9年間で5本の映画が上映されました。二つ目のフェイズとしては2000年から始まった<レジデンス>があります。パリにあるシネフォンダシオンの施設に4ヵ月半滞在し、その間に企画を練ったり脚本を書いたりする時間を提供するというものです。このプログラムに参加したのが、今回東京フィルメックスでも上映される『食べよ、これは我が体なり』のミケランジュ・ケイ監督です」
 ここで、日本に到着したばかりで会場に居合わせたミケランジュ・ケイ監督が紹介され、観客からの温かい拍手を浴びた。
「三つ目は<アテリア>と呼ばれる部門で、15本の映画の企画を選び、その監督やプロデューサーが、映画の出資者や配給会社と出会えるような場を作っています。これら三つの部門は、映画祭がいかに映画作家を支援できるかということを探っています」(ジュンヌ)

お二人の話から、ベルリン、カンヌともに、作家の「お見合いの場所」を作ろうとしていることがうかがえた。それでは、日本人が<タレント・キャンパス>や<シネフォンダシオン>にトライしたいと思ったときに重要なことはなんだろうか。これから世界に羽ばたいていきたいと思っている日本人にぜひメッセージを、との呼びかけに、二人はこう答えた。
「ここにいる三人(林、ヴェナー、ジュンヌ)の映画祭は、映画の多様性を支援しているにもかかわらず、三人が使う言語は英語です。これは矛盾かもしれませんが、現実にはそうするしかありません。<タレント・キャンパス>で使用されている言語も英語で、申込書を書くにも英語でなければなりません。ですから、もしかしたら一番英語が上手い人を選んでいる可能性もあります。そういった意味で、言語はとても大きな問題をはらんでいます。また、映画がほとんど作られていない国の人が映画を作ろうとする場合には、他の国に友人を作ることが始まりとなります。そのためにも言語は重要です」(ヴェナー)
「申請するのは簡単なことです。自分が今どの時点にいるのか、何を求めているのかを考えてほしいと思います」(ジュンヌ)

「才能のある人はぜひとも英語の勉強を(笑)」との林ディレクターの言葉でトークイベントは締めくくられた。日本からも今後、<タレント・キャンパス>や<シネフォンダシオン>に参加する映画作家が続々と登場することを期待したい。

有楽町朝日ホール11階スクエアでは、連日さまざまなゲストを招いてのトークイベントが開催される。みなさま、ぜひご来場を。


(取材・文:三宅里枝)

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投稿者 FILMeX : 2007年11月20日 20:00



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