11月17日より始まった第8回東京フィルメックスは、11月25日、有楽町朝日ホールにてクロージングセレモニーを迎え、最優秀作品賞・審査員特別賞(コダックVISIONアワード)・アニエスベー・アワード(観客賞)が発表された。
審査結果の発表に先立って、林加奈子東京フィルメックス・ディレクターが登壇。「第8回東京フィルメックスもいよいよ最後の作品となりました。これよりクロージングで上映される『シークレット・サンシャイン(原題)』は、今回審査委員長をお願いしたイ・チャンドン監督の新作です。主演女優のチャン・ドヨンさんがカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した、この力強い1本を、東京フィルメックスのクロージング作品として上映できる喜びをかみしめています。ご協力・御協賛いただきました各社の皆様、素晴らしいQ&Aの場を作って頂きました観客の皆様、全ての方々に心からお礼を申し上げます。そして果敢に動いてくださったボランティア・スタッフの皆さんもありがとうございました。フィルメックスは本日で閉幕となりますが、明日明後日とリッティク・ゴトク監督の作品がアテネ・フランセで公開されますので、そちらにも足をお運び下さい。
東京フィルメックスは今年“映画の未来へ”を合い言葉に進めてまいりました。映画に出来る事に果敢に挑戦している映画をご紹介し、映画の可能性を切り開く作品を応援したいという気持ちを込めた合い言葉です。映画の未来を信じて、心を豊かにする映画を紹介し続けます。皆様、来年の第9回東京フィルメックスにもご期待下さい」と閉幕の辞を述べると、大きな拍手が会場を包んだ。
続いて、イ・チャンドン審査委員長に続いて行定勲監督、クリスチャン・ジュンヌさん、山崎裕さん、ドロテー・ヴェナーさんら審査員が登場し、受賞作品を発表した。
アニエス・ベー・アワード(観客賞)はジョニー・トー監督の『Exiled 放・逐(原題)』が受賞し、アニエスベーサンライズ プレス・コミュニケーション部の藤野理子さんから、副賞として賞金20万円が授与された。
「今年も質の高い映画祭に参加でき、大変嬉しく思っています。アニエス自身が映画好きということはよく知られていると思いますが、衣装協力はもちろん制作会社も持っています。彼女は今年はシナリオにも挑戦し、来年映画化が予定されています。アニエスベーと映画は本当に切っても切れない関係になっております」(藤野)
トー監督は、香港にて次回作「ザ・スパロウ」を撮影中のため来場できなかったが、キングレコードVC制作部石井稔久さんより、監督からのコメントが読み上げられた。
「今回は観客賞に選んでいただき、ありがとうございました。フィルメックスという、心から映画を愛している皆様から『Exiled』への評価をいただき、心からお礼申し上げます」(トー)
続いて発表されたコダックVISIONアワード(審査員特別賞)は、ヤウ・ナイホイ監督の『アイ・イン・ザ・スカイ(原題)』が受賞し、副賞としてコダック株式会社より8000米ドル相当の生フィルムが監督に授与された。エンターテイメント事業部・前田重彦さんより「コダックは世界の映画を作る方を側面から支えていきたいと思っています。(副賞の)フィルムを使って、次の素晴らしい作品を作ってください」とお祝いの言葉も述べられた。
受賞を発表した審査員のクリスチャン・ジュンヌさんは、受賞理由として「監督の演出力は、アジアの商業映画の中でも群を抜いている。キャラクター間の緊張を持続させる精巧なシナリオのリズムとテンポで、最後まで観客の目を離させない才能に、この賞を与えます」と述べた。
残念ながら来日の叶わなかったヤウ監督からの喜びのコメントを、サン・ドリーム・モーション・ピクチャーズのキティ・ラウさんが代読した。
「東京フィルメックスにお礼申し上げます。今回の受賞は『アイ・イン・ザ・スカイ』にとって初めての映画賞ですので、とても感慨深く思っております。この機会を借りて、制作に関わった全ての皆さんにお礼申し上げます。また、ジョニー・トーを始め、この映画のデリケートなテーマについてアドバイスをいただきました特別な友人達にも感謝いたします。『アイ・イン・ザ・スカイ』の制作は映画撮影の困難に立ち向かう勇気をくれました。今回の受賞はこれからの映画制作において非常に大きな自信となります、どうもありがとうございました。新作をお見せすることができる機会を楽しみにしております。それでは、脚本書きに戻りますので、失礼します」
ジョニー・トー作品の脚本家でもあるヤウ監督のコメントに、会場は大きく沸いた。
最後に発表された最優秀作品賞は、ラファエル・ナジャリ監督の『テヒリーム』が受賞し、副賞として賞金100万円が授与された。
受賞を発表した審査員のドロテー・ヴェナーさんは、受賞理由として「イスラエルに暮らす一般的な家庭に起こった父親の謎の失踪が、今日の世界が抱える普遍的な問題である「方向性の欠如」を浮き彫りにしている。この物語を、人々が抱える問題として捉えるか、私的な問題として捉えるかは、ひとりひとりの手に委ねられる。国や宗教を超越し、独自な表現方法で語られている国際的な映画作品である」と評した。
舞台にはナジャリ監督が登場し、「このような映画を作ることは非常に困難を極めましたので、制作会社、スタッフ及び観客の皆さん、僕を信じてくれた友人たち、全ての人に感謝したいと思います」と喜びのコメントを述べると、照れたように舞台袖に隠れてしまった。
そして最後に審査委員長のイ・チャンドン監督より、「皆さんに久しぶりにお会いできて、嬉しく思うと同時にお礼を申し上げたいと思います。今回のコンペティション部門の作品は、どれも非常に完成度が高く、今現在の映画業界を現しているものがたくさんあり、映画の「品格」というものを強く感じました。このような作品を選んでいただいた、東京フィルメックスの妥協を知らないその精神に感謝いたします。また足げく通っていただいた観客の皆様にも感謝いたします」との総評をいただいた。
“映画の未来へ”を合い言葉に開催された第8回東京フィルメックスも9日間の全日程を終えた。アジアという枠を超え、今回も多様な作品が紹介された。第9回に期待できる飛翔の年となったと言えるだろう。
(取材・文:今坂 千尋)
投稿者 FILMeX : 2007年11月25日 21:00