東京国立近代美術館フィルムセンター大ホールで11月22日、蔵原惟繕監督特集のトップを飾る『第三の死角』が上映された。上映に先立って行われた舞台挨拶では、蔵原監督の弟で、やはり映画監督である蔵原惟二さんが登壇。映画祭初日の第一作目という心地良い緊張感が漂う会場で、兄・惟繕監督の思い出を語った。
客席に着いていた惟二監督は、林 加奈子東京フィルメックスディレクターの紹介でステージに上がると、「蔵原惟繕特集と称して皆さんに大変なご支持をいただき、本当に嬉しく思います」と挨拶。まず映画ファンや映画祭スタッフへの感謝を述べ、惟繕監督の特集上映スタートに喜びの表情を見せた。
「兄が亡くなって、この12月でまる6年になります。享年75歳でしたが、ちょっと早かったような、残念だったような感じもいたしております」と、この6年間の自身の心境を振り返った。
次に惟二監督は、惟繕監督が生み出したメジャー作品が35本に上ったことを紹介。「肉親の私が作品を褒めてもろくなことはないし、けなしても怨念がこもるだけで、どうしようもない」とユーモアを交えて前置きすると、兄が残した名作の数々については触れず、上映後のトークイベントに登場予定の元・日活企画部、黒須孝治さんについて言及した。「当時の日活の企画のすべてを支えていた方。そんな黒須さんのトークが、今日の映画よりもっと素晴らしいのではないか」。
こんな冗談が飛び出すのも、惟繕監督を支えた黒須さんへの感謝の思いがあってこそ。「このあと、ぜひ黒須さんのお話を聞いていただきたいと思います」と締めくくり、上映後のトークイベントへバトンを渡した。
(取材・文:新田理恵)
投稿者 FILMeX : 2008年11月22日 13:30