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2008年11月28日 トークイベント「それぞれのシネマ 日本映画[俳優×映画]編」

teranishi_1.jpg 第9回東京フィルメックスの会期中に、4回にわたって繰り広げられたトークイベント「それぞれのシネマ」。丸の内カフェで11月28日、最終回となる「日本映画編」が催された。映画やテレビにひっぱりだこの俳優、寺島進さんと西島秀俊さんをゲストに迎え、日本映画を取り巻く現状と過去・未来について、時に厳しく、時に笑いを交えてたっぷり語っていただいた。

会場はこの日、応募者数約10倍の関門を潜り抜けた観客で超満席となった。そのほとんどが女性客。ゲスト2人の人気の高さを窺わせた。
聞き手を務める「Variety Japan」編集長の関口裕子さんがフィルメックスの印象を尋ねると、「男のなかの男じゃないけど、“映画祭のなかの映画祭”という感じがして貴重ですよね」(寺島さん)、「本当に映画が好きな人が集って、温かい雰囲気で進めている」(西島さん)と、ともに東京フィルメックス・ファンの顔をのぞかせた。
 まずは、関口さんが驚いたという、こんなエピソードからトークがスタート。「映画を勉強する若い学生に、どうやったら俳優になれるのかと質問を受けたのですが、どうやら、俳優志望もプロデューサー志望も、お金持ちになれるというイメージを持っているようでびっくりした」。
 これを受けて寺島さんは「そんな甘い世界じゃない」と一蹴。時代劇の斬られ役としてキャリアをスタートさせた頃の様子を、「時代劇が斜陽でね。暇だったので、色んな人と出会ったり、映画を見たり。仕事がないときに何をすべきが考えた」と振り返った。「そんな儲かるわけでもないし(笑)」という西島さんも、「好きじゃないと続かない。好きでも相当キツイ仕事」と同調する。

teranishi_2.jpg 「この国はやばいね。自分自身がしっかりして、運の良い出会いを重ねていかないと」という寺島さんの憂いを受け、話題は海外の映画祭で受賞が続いた頃の日本映画界へ機運に。「ヴェネチア国際映画祭で是枝裕和監督が受賞したりして、海外での評価が日本での話題性に直結するような、日本映画にこれから何か起こるのではないかと期待するような、そんな時代だった」と言う関口さん。これに対し、数々の映画祭に出品された『おかえり』(1995年:篠崎誠監督)等に出演している寺島さんも、「これから映画で生きていくんだという気持ちが生まれた」と語る。「いろんな国の人たちがいて、見方も反応も違う。理屈ぬきに元気をもらって、視野が広くなった。日本に帰ってきて、取り組む姿勢がいい意味で変った」のだという。ただ、「現実、日本で映画だけでやっていくのは…」と、言葉を濁す一幕も。話題は、日本映画界の現状へと移っていく。

 「映画が不自由になってきている」という寺島さん。撮影所システムが崩壊し、スポンサー企業の存在が大きくなっている今、映画を作る上で受ける制約も増えたに違いない。
「今年のフィルメックスでも、蔵原惟繕監督の作品をやってるでしょ。あの頃って、どんなアブナイことをやっていても、それがすごく生き生きとフィルムに焼きついている。昔の監督特集を見ていると、悔しくって仕方がない。なぜこの役者さんたちは、こういうことが出来たんだろうって」と、しきりに「悔しい」を繰り返す寺島さん。日本映画への愛ゆえに、映画に対するストレスも大きいのだとか。
では、撮影所システムがない今日、ベテランから若手への“伝承”は、どのように行われているのか。「現場で大先輩とご一緒したときは、やっぱり『(昔は)どうだったんですか』って聞きますね」と西島さん。しかし「実際の撮影現場っていうのは、否応なく向かってくる“現実”に立ち向かうことしかできないので、それが演技にすぐ反映されるわけではない」のだとか。

teranishi_3.jpg ここで、寺島さんと北野武監督との出会いに話が及んだ。西島さんから、「(出演を希望して)監督を追いかけて海外まで行ったって聞きました」と話を振られた寺島さん。「ちょうど父親を亡くし、松田優作さんも亡くなった頃。大切な人を亡くすと、『ああしとけば』って後悔するじゃないですか。だから北野監督に会ったとき、絶対後悔しない人生を歩もうと思った」と言い、北野監督がアメリカで映画を撮っているとの噂を聞きつけ、直談判に乗り込んだエピソードを披露した。実際、撮影は行われていなかったのだが、渡米ついでにニューヨークから長距離バスでロサンゼルスを目指した話をすると、会場は大爆笑。しかし、それがきっかけで、その後の『ソナチネ』出演を決めたというのだから、「僕もロス行きます(笑)」(西島さん)というのも無理はない。
やはり北野監督の大ファンだという西島さんも、「実は『Dollsドールズ』の現場ではファンとは言えなくて。そのうち監督に(ソナチネは)公開が2?3週間で終わったからあまり見てる人がいないって言われて、我慢できずに「僕、劇場で見てます」って言ってしまった」思い出を語った。

そして、ひとしきり2人が共演したテレビドラマや過去の出演作について話すと、翌日からリハーサルに入るという西島さんの新作『蟹工船』の話題へ。プロレタリアート文学ブームに話しが及ぶと、テーマは唐突に昨今の不景気へと飛躍した。
「ハリウッドでは、映画製作の資金が厳しくなってるらしい。アイデアがないわけではないので、その状況でどうやって作っていくのか。映画作りとは、なかで関わる人たちの気持ちではないか」という関口さんの発言を受けて、ボルテージが上がった様子の寺島さん。「面白い脚本があっても、危険があればスポンサーが降りてしまう。共犯関係が結べない。制約ばかりで縮こまった映画になってしまう」と日本映画界の問題点を指摘した。
「監督さんってそれぞれ、独自の世界を持っているじゃない?ところが、最近は瞬間を切り取ってくれないというか、使いどころが決まってないから、何回も何回も同じことをやらされる。勇敢な監督が少なくなった」と寺島さん。「2時間ドラマみたいな映画が多いでしょ?」

teranishi_4.jpg 映画に対する憂いは尽きないが、前を向かねば始まらない。「今が我慢の時期かなって気がしますね」と寺島さん。「ここを乗り切ったら、また12年前(『おかえり』の頃)みたいな風が絶対来るよね」と、関口さんのお株を奪う(?)仕切りで締めくくった。
最後は客席からの質疑応答。
「映画好きとして、自分が出ている作品を客観的にどう見ているのか?」との質問に、「ダメ出しが多い。厳しく見てます」という寺島さんに対し、「客観的に見れない」という西島さん。作品が生まれるプロセスを経験しているので、人から批判されてもついかばってしまうのだとか。
「もしオファーが来たらやってみたい海外の監督はいますか?」という質問には、「いまは全くない。日本映画をもっともっと」(寺島さん)、「ぼくもない。実際お会いして、何か行きかうものがあれば出演する。海外の作品だからといって、そのプロセスが替わることはない」(西島さん)と、日本映画への愛が感じられる答えが返された。

寺島さんの「動」と、西島さんの「静」。アプローチの仕方こそ異なれど、映画に対する想いが話の節々からこぼれ落ちる。西島さんは、「京都にすごいレンタルビデオ屋さんがあって、廃盤の作品もそろっている。マニアは京都までレンタルしに行くそうです」と、ヘビー級の映画ファンには耳寄りの情報まで提供してくれた。また、今年のフィルメックスでは『マクナイーマ』や『文雀』、『ベガス』も見たという西島さん。「このあとシネカノン有楽町へ1本観に行きますので、皆さんも」と、しっかり映画祭を宣伝してくれる一幕も。映画に対する2人の愛情がぎっしり詰まった90分となった。
 
(取材・文:新田理恵)
 

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投稿者 FILMeX : 2008年11月28日 22:00


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