デイリーニュース

TOP<>BACK

2008年11月30日 閉会式

closing_1.jpg 11月22日より始まった第9回東京フィルメックスは、11月30日、有楽町朝日ホールにて閉会式を迎え、最優秀作品賞・審査員特別賞(コダックVISIONアワード)・アニエスベー・アワード(観客賞)が発表された。コンペティション部門10作品を審査した5人の審査員が登壇し、林 加奈子東京フィルメックスディレクター同席のもと、J-waveのサッシャさんの司会によって閉会式が行われた。

まずは観客賞であるアニエスベー・アワードが発表され、園子温監督の『愛のむきだし』が受賞した。園監督は少し緊張した面持ちで、「日本で一番素晴らしい映画祭で観客賞がとれて、すごく光栄に思います。本当にありがとうございました」と受賞の喜びを語った。アニエスベーサンライズ プレス・コミュニケーション部の藤野さんから、「会場も満席で、上映後は拍手喝采だったそうです。本当におめでとうございます」と、副賞の賞金が授与された。
続いて発表されたコダックVISIONアワード(審査員特別賞)は、ソヨン・キム監督の『木のない山』とユー・グァンイー監督の『サバイバル・ソング』の2作品が受賞した。副賞としてコダック株式会社よりそれぞれ4000米ドル相当の生フィルムが監督に授与される。
最初に、『木のない山』の受賞を発表した審査員長の野上照代さんは、受賞理由を「今年は例外的に2作品です。(副賞の)フィルムが半分ずつになり、足りないといわれるかもしれませんが、どちらも捨てがたく2作品になってしまいました。『木のない山』は2人の子供が素晴らしく、よくあれだけ撮れたと思ったのと、長い時間をかけたと思うんですが、小さい子供が成長していく過程が愛情深く描かれていて、とても良かったと思います」と述べた。

closing_2.jpg キム監督は、日本語で「どうもありがとうございました」と挨拶をした後、「素晴らしい映画祭に招待されたこと自体とても光栄なことでしたが、このような賞をいただけて感動しています。夫でありプロデューサーのブラッドリーとともに時間をかけて作りました。今後もさらに良い映画を作り、精進したいと思います」と、感極まった様子で声をつまらせながら受賞の喜びを語った。キム監督には、審査員のレオン・カーコフさんより賞状が授与され、コダック株式会社エンターテイメントイメージング事業部の前田さんと竹内さんからトロフィーが贈られた。
続いて『サバイバル・ソング』の受賞を発表した審査員のソン・イルゴンさんは、「東京に着いた時、40度以上の熱があって扁桃線が本当に痛かったのですが、この映画を観て、私は痛みを忘れるほど素晴らしい作品に出会えたと思いました。中国の地方部の貧しい人々についてのドキュメンタリーであるだけでなく、人間が持つあらゆる感情の真実がみえます。憎しみ、喜び、葛藤、希望。この映画を観ながら、私たち観客は自分のことを考えさせられました。人間に対する監督の温かなまなざしを感じました」と、その受賞理由を語った。
残念ながらすでに帰国してしまったユー監督に代わって、東京フィルメックス市山尚三プログラム・ディレクターが喜びのコメントを代読した。「今回2度目の来日でした。私の映画を気に入ってくださった心の温かい日本の皆様に、心から感謝したします。私は幼い頃から長白山で育ちましたが、そこでは一年にほんの数回しか映画を観る機会がありませんでした。それが、本日映画祭で賞をいただけるとは感無量です。これまで私を支え、助けてくれた全ての人に感謝申し上げますとともに、これからも一層の努力を重ねて良い映画を撮りたいと思います」 ユー監督からの言葉に会場から大きな拍手が起こった。

最後に発表された最優秀作品賞は、アリ・フォルマン監督の『バシールとワルツを』が受賞し、副賞として賞金100万円が授与された。審査員のイザベル・レニエさんは、受賞理由として「オリジナルなミックスジャンルの作品で、アニメーションとドキュメンタリーを混ぜ合わせた新しい実験的なスタイルの作品です。新しい映像言語を発明しつつ、観客に強烈なインパクトを与えた、この重要な作品に最優秀作品賞を授与したいと思います。特に感心したのは、幻想的なビジョンを史実と交差させる知性、語りの手法としての音楽の使い方でした」と評した。
舞台にはアニメーション監督のヨニ・グッドマンさんが登場し、審査員のレオン・カーファイさんより賞状が授与された。グッドマンさんは、「アニメーションを専門とする者として、アニメーションの大帝国である日本でこの映画を上映できたことを大変光栄に思っています。この映画の製作期間中に、たくさんの赤ちゃんが生まれました。その赤ちゃんのためにこの賞を捧げたいと思います。この子たちが大きくなり、この映画を観た時に『デタラメじゃないの?このフィクションの映画。戦争って何?』と言えるような未来になってほしいと願っています」とコメントし、会場は感動的な空気に包まれた。

全ての発表が終わり、審査委員長の野上照代さんより、「昨日審査員5人で10本の作品を検討した時、徹夜で検討すると思ったら、3本まではみんな同じでした。受賞作を3本から2本にするという議論はありましたが、5人で話し合いをしたことが楽しい経験でした。一番論争に時間がかかったのは、特別賞を2本にしていいかということでした。また、日本映画でも若い監督の2作品については俳優も良く、評価する方もいました。それ以外の作品もそれぞれ評価がありましたが、最終的に3本には入らなかったということです。フィルメックスでの受賞が将来の役に立つことがあればと望んでいます」との総評をいただいた。

closing_3.jpg 最後に林ディレクターがクロージング作品の紹介と閉幕の辞を述べ、閉会式を締めくくった。「第9回東京フィルメックスはいよいよクロージング作品、ハンガリーの傑作『デルタ』を迎えます。ご協力・御協賛いただきました各社の皆様はじめ、審査員の方々、素晴らしいQ&Aの場を作ってくださった観客の皆様、全ての方々に心からお礼を申し上げます。そして今年は90人を超えるボランティア・スタッフの皆さん、それから上映と字幕投影にご尽力いただいた映写チームの皆様もありがとうございました。12月6日土曜日に、ブラジル映画アンドラーデ特集をアテネ・フランセ文化センターで追加上映いたします、お待ちしております。映画祭は作り手と観る側を両方応援して相互の架け橋をつなぐためにあるのですが、期間中痛感しているのは、実際には作り手とご覧になる皆様両方に、東京フィルメックスが支えられているという現実です。重ねて感謝申し上げます。来年は第10回になります。また強烈な素晴らしい作品を上映できるよう、皆様の笑顔を心の支えにして、準備を進めます。どうぞ、来年第10回にご期待ください」

「継続こそが力」という開会の言葉で始まった第9回東京フィルメックスも9日間の全日程を終えた。今年は南米の作品も上映され、より多彩なプログラムで展開された。そして来年はいよいよ第10回を迎える節目の年となるが、林ディレクターの力強い言葉に期待が膨らむ。


(取材・文:鈴木自子)


closing_4.jpg closing_5.jpg closing_6.jpg

投稿者 FILMeX : 2008年11月30日 21:00


up
back