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2008年11月23日 『サバイバル・ソング』Q&A

ss_1.jpg 11月23日、有楽町朝日ホールにて、中国・黒龍江省の猟師たちを追ったドキュメンタリー『サバイバル・ソング』の上映後、ユー・グァンイー監督を迎えてQ&Aが行われた。 昨年の第8回東京フィルメックスでの『最後の木こりたち』に続いての上映となった本作だが、同じく2度目の来場となったユー監督は、昨年の緊張した面持ちとは打って変わって明るい表情で登壇した。今回はまるで親戚の家に来ているような気分でリラックスしている、と挨拶した。


市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターがまず、この作品を制作したきっかけを尋ねると、「2004年に『最後の木こりたち』を撮ったときと同じ場所で本作も撮ったのですが、フィルメックスで『最後の木こりたち』を上映した際に、あの木こりたちはその後どうなったのか、という関心が観客から数多く寄せられました。ですから、本作は彼らのその後を語るものとして作ったんです」とユー監督。
続いて会場から登場人物についての質問が相次いだ。まずハン(韓)という猟師について、カメラは密猟の現場も映し出しているが、映画の上映にあたって彼らに何らかの影響はあったのでは。「何より真実をきちんと記録したいという思いがありました。ハンという男が見舞われている悲惨な状況に私は同情の念を抱いていたし、彼は私の軍隊時代の戦友でもありましたから。映画は中国のいくつかの大学で上映の機会を得ただけで、他の場所では上映されていません」とユー監督。

その後本作の中心となる人物、シャオリーツー(小李子)について話が及んだ。シャオリーツーはハンのもとで3年ほど羊飼いをしていたが、その後姿をくらまし、別の雇い主のもとに身を寄せていた。しかし冬を迎えて羊飼いの仕事が無くなると再びハンの前に現れ、ハンと彼の妻と共に暮らすことになった。映画の中では彼が踊りながら大声で歌っているシーンが何度も出てくるが、それは監督のリクエストなのか、それとも彼が自発的に歌っていたのか、という質問にユー監督は「歌というのは彼の生活に欠かすことの出来ないものなのです。撮影のために彼はわざわざロウソクを2本灯して歌ってくれました。 食べること、トイレに行くこと、歌うこと…いずれも彼にとっては日常の一部なんです」と答えた。
作中、夜間の室内などにロウソクが多く使われている。ハンの家には電気が通っていないので、撮影も完全にロウソクの光に頼って行われた。撮影は34分撮りのフィルム延べ70本分(およそ40時間)に及んだという。

ss_2.jpg 映画の舞台、黒龍江省の長白山には省都ハルビン市への水の供給のため、貯水池の建設が計画されている。ハンの家のある地域は貯水池の建設予定地とはやや離れてはいたものの、漢方薬の原料を栽培するための区域とする計画が当局で持ち上がったため、家が取り壊されることになった。このくだりは映画の冒頭に字幕で説明がなされるが、これによって会場からは国から理不尽な圧力や影響を受けることはあったのかという質問がされた。これについては「先の質問でも申し上げたように中国国内での上映は限られていたので、大学で観た人以外の目に触れる機会がないため、影響については考えにくい。中国でインディペンデント映画を撮るといっても、それに携わる私は多くの名も無き庶民の中に埋もれている1人に過ぎません」と答えた。
最後に寄せられた質問では、映画のなかでたびたび提示される、「山の男たちの、異性に対する関心」について尋ねられたが、これはユー監督の次回作にもつながるテーマだそうで、「これは非常に良い質問を頂きました」と、感心しきりの監督。氷と雪に覆われた奥深い環境下で、段々と大きくなっていく性への渇望。これはもちろん中国の山奥に限った問題ではないが、次回作では性と人間性に関する問題に取り組みたいと言う。「いまは脚本を書き始めた段階ですが、順調に製作が進めば、2年後くらいには皆さんにご覧いただけると思います」と締めくくった。

2度目の来場ということもあり、終始穏やかな表情で会場からの質問に答えていたユー監督。近い将来、ユー監督の新作が日本で観られることに期待を寄せる観客も多いことだろう。なお、25日に朝日ホールスクエアにてユー監督らによるトークイベント「中国映画のいま」が行われる。現在の中国や中国映画を取り巻く状況についてもっと知りたい方はぜひ、足を運んで頂きたい。

(取材・文 大坪 加奈)

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投稿者 FILMeX : 2008年11月23日 21:30


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