デイリーニュース

TOP<>BACK

2008年11月24日 『完美生活』Q&A

kambi_1.jpg 11月24日、有楽町朝日ホールにて、香港のエミリー・タン監督の2作目である『完美生活』が上映された。上映後にはQ&Aが行われ、タン監督と本作のプロデューサーでタン監督の夫でもあるチャウ・キョンさんが登壇した。初めて来た東京にとても感激しているというタン監督は「雨の中、そして娯楽映画ではないアートフィルムに、こんなに多くの人が来場してくれて、とても感激しています」と満面の笑みで感謝の言葉を述べた。

プロデューサーのチャウ・キョンさんは、過去に東京フィルメックスで上映されたジャ・ジャンクー監督作品のプロデューサーとしても来場しており、今回は妻の作品の上映で再来できたことを心から喜んでいる様子だった。和やかな雰囲気の中、東京フィルメックス市山尚三プログラムディレクターの進行によって、Q&Aが進められた。

まず、『完美生活』というタイトルの理由について、タン監督は「完璧な生活というのは、夢の中または映画の中でしか得られないと思っています。本作ではヒロインの望んだものと違う、完璧ではない人生というのを表現したかった」と語った。登場人物が自分の写真を撮るシーンを、象徴的に使っていることについては、「写真というものは数年後に見たときに意味が出てくるもので、登場人物の人生の節目というものを表現したかった」(タン監督)

映画の中で「犯罪」を扱うギャングもの的な要素が盛り込まれているが、その理由について尋ねられると、「リズムが生まれるという理由からサスペンスタッチを用いているが、(中国の)東北地方の現実を描くという意味もあります。劇的な経済の変化によってリストラが行われ、多くの人が職を失いました。職が見つからず不法なことが行われているのも事実で、そういう社会状況を表現したかった」とタン監督。

kambi_2.jpg 本作では2人の女性の人生が描かれており、一人(リー)は普通に劇中のヒロインとして、もう一人(ジェニー)はドキュメンタリー風に登場する。この手法を用いた理由について、タン監督は「実は、脚本段階では普通の劇映画にしようと考えていました。しかし、70パーセントぐらい撮り終わったところで、結末の部分に納得できずにいました。そこでドキュメンタリーの要素を盛り込むことを考えついたのですが、リアルな雰囲気が出せたのではないかと思っています。実際の女性を撮るようにみせることで、単にジェニーの話ということではなく、リーの未来を暗示するような存在にしようとしました」と、特徴的ともいえる演出が、撮影時の苦しみから生まれたことを明かした。

 また、外国人男性から「劇中でリーがウォン・カーウァイの『花様年華』を観るシーンがあるが、この映画を挿入したのはなぜか」という質問が挙がった。「(中国の)貧しい東北地方でも、香港映画が上映され、観ることができるという意味合いを持たせています」(タン監督)。「女性にリサーチしてみたところ、ウォン・カーウァイの作品のなかでも『花様年華』の人気が一番高かったので」(キョンさん)

最後に、今後どのような映画を撮っていきたいかという質問に対して、タン監督は自身の経歴とともに次のように語り、Q&Aを締めくくった。「パンダで有名な四川省の成都で生まれ、7歳のときに両親と北京に移って27年間暮らしました。北京の大学を卒業してから映画の勉強をし、30歳で香港に移り住んでから現在も夫と子供とともに香港で暮らしています。なので、これからも中国と香港の両方の文化をミックスした映画を撮り続けていきたいと考えています。そして、ラブストーリーから拡がりを持たせた作品を作っていきたいとも思っています」


(取材・文:鈴木自子)


kambi_3.jpg kambi_4.jpg kambi_5.jpg

投稿者 FILMeX : 2008年11月24日 18:30


up
back