世界の映画祭だより



2009年08月18日
第44回カルロヴィヴァリ国際映画祭レポート

第44回カルロヴィヴァリ国際映画祭レポート
<Another View -- TOKYO FILMeX Presents>上映報告

チェコのカルロヴィヴァリ国際映画祭にて、Another View部門“東京フィルメックス・プレゼンツ”として、第9回東京フィルメックスの日本映画3本(『愛のむきだし』園子温監督、『ノン子36歳(家事手伝い)』熊切和嘉監督、『PASSION』濱口竜介監督)が上映されました。

各作品2回ずつ上映が行なわれ、いずれも満席となりました。学生を中心に若い観客層が多く、ストレートに映画を楽しんでいる反応の良さが見受けられました。セリフや画面に敏感にリアクションして、時折クスクス笑いも漏れ、作品が受け入れられている手応えを感じさせました。

熊切監督、濱口監督が映画祭に参加し、Q&Aを行いました。登場人物などについての素直な疑問や背景となっている日本社会に対する質問などが寄せられました。特に、『ノン子36歳(家事手伝い)』『PASSION』とも、キャラクターの設定として、安定した仕事を得ることが容易ではない若い世代が描かれていることについて、それまでの先入観とは違った日本の現状の一側面に触れたという驚きがあった様子で、「今の日本は本当にそうなのか?」という質問が出ました。

観客のノリの良さやリラックスした映画祭の雰囲気は、両監督にとっても新鮮な体験となった様子でした。日本から遠く離れたこの地でも素直に映画を楽しもうとする観客たちに出会ったことが刺激になり、今後の創作に向けてより一層の意欲をかき立てられていらっしゃいました。自作の上映やQ&Aを行なったのみならず、映画祭を堪能して、幅広いプログラムから様々な映画を見たり、地元名物の飲む温泉などを観光をしたり、充実した滞在となったことと思います。

また、両監督とも映画祭の中で見たお気に入りは、毎回本編前にかかる映画祭オフィシャル・トレーラーと語られていました。映画祭のトロフィーを題材にしての短編は、出演者も豪華で、完成度の高いコメディ仕立てになっているのも贅沢です。こうした映画祭側の粋な演出が、映画を楽しもうという雰囲気の盛り上げに一役買っています。

(報告者:森宗厚子)

※なお、キネマ旬報(8/22発売号)にて「カルロヴィヴァリ映画祭レポート記事」が掲載されます。


【カルロヴィヴァリ映画祭オフィシャル・トレーラー】

44th KVIFF Official Festival Trailer - Jiri Menzel

44th KVIFF Official Festival Trailer - Andy Garcia


※関連記事※
第44回カルロビバリ国際映画祭にて、東京フィルメックスで上映された日本映画3作品が上映されます

【概要】
第44回カルロヴィヴァリ国際映画祭(2009年7月3日~11日)

上映回数:464回
上映作品数:232作品
・劇映画:194本(長編181本/短編13本)
・ドキュメンタリー:38本(長編27本/短編11本)

IDパス登録者:1786人
内訳(監督:342人/映画業界:814人/プレス:628人)

映画祭パス:10,277枚
チケットの売り上げ数:131,293枚

カルロヴィヴァリ国際映画祭公式サイト(チェコ語、英語)

受賞結果のプレスリリース

投稿者 FILMeX : 12:19

2009年04月14日
第44回カルロビバリ国際映画祭にて、東京フィルメックスで上映された日本映画3作品が上映されます

第44回カルロビバリ国際映画祭(チェコ/7月3~11日開催)にて、<Independent Japanese films in Karlovy Vary>として、第9回東京フィルメックス上映作品の『愛のむきだし』(園子温監督)、『ノン子 36歳(家事手伝い)』(熊切和嘉監督)、『PASSION』(濱口竜介監督)の3本が上映されることになりました。

これは、昨年のカルロビバリ映画祭にドキュメンタリー部門審査員として東京フィルメックスより林 加奈子ディレクターが参加したことを機縁に、日本映画の紹介を働きかけたことがきっかけになったものです。

特集上映の開催にあたり、カルロビバリ国際映画祭のプログラムディレクター、ジュリエッタ・シーシェル氏より、以下のコメントが寄せられました。

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東京フィルメックスと共に、インディペンデント作品を称えられる機会は大変嬉しく、『愛のむきだし』『PASSION』『ノン子36歳(家事手伝い)』という素晴らしい3作品を紹介できることに、私たちの胸は高鳴っています。ヨーロッパプレミアで無くとも、この3作品上映について発表した直後から、既に事務局にはセールス・エージェントや配給会社からの問い合わせが相次いで来ていて、私たちは大変喜んでいます。
(カルロビバリ国際映画祭・プログラムディレクター、ジュリエッタ・シーシェル)
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また、公式サイトでは現在も新作の応募をオンラインで受け付けており、締切は、4月17日となっています。

なお、園子温監督は『紀子の食卓』が2005年にカルロビバリ映画祭のコンペ部門でスペシャル・メンションなどを受賞しています。熊切和嘉監督と濱口竜介監督の作品は、カルロビバリ初お目見えとなります。

熱心な観客に支えられるカルロビバリ映画祭で、これら3作品がどのような反響を呼ぶか楽しみです。

第44回カルロビバリ映画祭 公式サイト

Independent Japanese films in Karlovy Varyについてはこちら

昨年(第43回)カルロビバリ映画祭レポートはこちら

投稿者 FILMeX : 14:38

2008年09月05日
第43回カルロビバリ国際映画祭 報告

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配慮細やかな映画祭
チェコ スタッフに情熱

チェコ西部の人口5万人余りの町で、第43回カルロビバリ国際映画祭(7月4~12日)は上映作品235本,14万人以上の観客動員を記録して幕を閉じた。組織運営が世界一と言えるほどのスタッフの情熱とそれを裏付ける豊穣な予算に支えられ、東京フィルメックスとしても数々の運営上のアイデアを教えてもらえた。審査員として参加してみて、会期終了前にメンバー集合の公式写真をくれるような心配りある映画祭を私は他に知らない。

社会主義政権下にはモスクワと隔年での開催だったので60回を超えるベネチアやカンヌに回数では及ばないが、94年から現在のエバ・ザオラローバをディレクターに国際的にも高評価を積み重ねた。メーン会場はプレスセンターやホテルも隣接して利便性にたけている。観客は若くて中には寝袋持参者やホテルのロビーで寝る人たちもいたが、そんな熱意を鷹揚に受け入れる穏やかさがこの大映画祭にはある。

開・閉幕式でのステージ上ライブ短編映画製作は心憎い演出だったし、功労賞受賞者とトロフィーを絡めたユーモア溢れる短編は上映前の良い雰囲気を作り出していた。閉幕式でスタッフ全員の名前が映画のエンドタイトルの如く紹介されるのも心に沁みる。人を大事にする映画祭の精神がスタッフを鼓舞し、彼らの細やかな心配りに結びつくのだろう。

当初ベルリンが6月末から7月頭の開催でカンヌとべネチアに挟まれ作品選考に苦慮して2月に移った経緯もあるほどだから、確かにこの時期プレミアで傑作ばかりをコンペに集めるのは至難の業である。それでも近年欧州のプロデューサーたちが新作紹介やプロジェクト製作の詰めにここを活用する機運が高まり、カンヌよりリラックスして商談している。今年日本からは「闇の子供たち」(阪本順治監督)だけだったが、欧州とのネットワーク固めに、また監督が新作の構想を膨らませるにも、カルロビバリは日本からも大いに活用しがいのある映画祭だと思えた。

東京フィルメックス/映画祭ディレクター,林 加奈子
(2008年8月2日 朝日新聞夕刊より転載)

投稿者 FILMeX : 10:16



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