世界の映画祭だより



2009年04月28日
第10回チョンジュ国際映画祭(4/30-5/8) まもなく開幕!

韓国のチョンジュ(全州)国際映画祭が第10回の開催を迎え、世界40カ国から長編147本と短編53本を上映する。

2000年より、インディペンデント/アート映画/デジタルシネマなどに焦点をあて先端的な作家を紹介しており、毎年3人の監督による短編オムニバスを製作する「Jeonju Digital Project」も話題となっているが、今年は韓国のホン・サンス、日本の河瀬直美、フィリピンのLav Diazによる作品がお目見えする。

コンペティション部門は、監督1~2作目の長編を対象として、タイ、フィリピン、アルゼンチン、ルーマニア、ノルウェイ、ドイツ、アメリカなどからの13作品を取り上げる。日本からは池田千尋の『東南角部屋 二階の女』が上映される。審査員は、映画監督のキム・ドンワン(韓国)、柳町光男(日本)、Mahamat-Saleh Haroun(チャド)、映画評論家のAdrian Martin(オーストラリア)、Richard Porton(アメリカ)の5名がつとめる。

デジタルシネマによる映画作りが活性化しているフィリピンからは、各部門で作品を取上げている。とりわけ、1984年生まれのRaya Martinの特集は、今年のカンヌ映画祭ある視点部門に新作“Independencia”が選出されたところでもあり、注目を集めるだろう。

また、Cinema Scape部門では、ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ『私は見たい』(昨年の東京フィルメックスで上映)や、内藤隆嗣『不灯港』など世界各国の作品が紹介される。

日本からは、他部門も含めると『buy a suit スーツを買う』(市川準)、『斬~KILL~』(押井守、深作健太、辻本貴則、田原実)、『ブタがいた教室』(前田哲)、田中登特集(3作品)が上映される。

チョンジュ映画祭は、韓国インディペンデント映画の紹介にも力を入れており、韓国作品については長編部門と短編部門のコンペティションを行なう。また、韓国のレトロスペクティブ部門も2003年以来復活し、修復された『下女』(キム・ギヨン)を含め『Sweet Dreams』(1936, Yang Ju-nam)から『The Last Witness』(1980, Lee Doo-yong)まで、近年再評価されている4作品を上映する。また、韓国インディペンデント映画史の重要監督としてHong Ki-Seonの特集を行なう。

他に特集上映としては、イエジー・スコリモフスキー監督特集、スペインのPere Portabella監督特集 スリランカ映画特集が組まれている。

10周年記念の特別企画として、「チョンジュ映画祭で見い出された監督たち」では、山下敦弘『どんてん生活』、ポン・ジュノ『吠える犬は噛まない』、アピチャッポン・ウィーラセタクン『真昼の不思議な物体』、ワン・ビン『鉄西区』など、また、「チョンジュ映画祭受賞者の新作上映」として、イン・リャン『好猫/グッド・キャット』、荻上直子『バーバー吉野』などが上映される。

なお、10周年を記念し、インディペンデント映画の製作支援をめざして、企画マーケットも立ち上げられる。

チョンジュ国際映画祭公式サイト

(報告者:森宗 厚子)

投稿者 FILMeX : 17:45

2007年07月03日
第8回チョンジュ国際映画祭 レポート


チョンジュ(全州)国際映画祭は今年で8回目を迎えた。いまやアジアを代表する国際映画祭となった感のあるプサン映画祭が昨年10月で11回目の開催を迎えたわけだから、その約3年後のスタートだったわけだ。また、同映画祭は長編・短編合わせて約200作品の映画を上映する比較的規模の大きな映画祭で、おそらくはプサンに次いで、総合的な映画祭としては韓国国内で2番目に大きな映画祭なのではないかと思う(ちなみにジャンル映画の映画祭としては、プチョン国際ファンタスティック映画祭という大規模な映画祭がある)。

最初からプサン映画祭との関連の話から始めたのには、ある程度必然性がある。というのは、チョンジュ映画祭のプログラムは実際に、プサン映画祭のプログラム内容に大きく左右されているからだ。理由は単純で、チョンジュ映画祭は作品の国内でのプレミア上映を重視しているからであり、それ故、事実上多くの作品出品者がプサン映画祭の方にプライオリティを置いている現状では、「プサン映画祭で上映されなかった映画」を上映する映画祭という立場に、自らを置かざるをえないのである。もちろん、そうは一言で言っても様々なケースがあることは確かで、例えばプサン映画祭の作品選定後に完成した作品がチョンジュでプレミア上映されることはままあるし、また、見方によってはどんな映画祭でも、多かれ少なかれ「他の映画祭で上映されなかった映画」を上映しているものではあるのだけれども。

ただもちろん、同じ韓国国内に、国内のみならずアジア全域に、あるいは世界的にも影響力を持つに至ったプサンのような映画祭を持つ事の意味は、それ以上に大きいことは間違いない。というのは、国内的にも国際的にも、プサンとの差別化を図り、何らかの独自性を表現するということが、そもそもの最初からチョンジュに課せられた非常に難しい命題だったのであり、そのことは、チョンジュがこれまで描いてきた軌跡を辿ってみれば、それなりに明らかであるからだ。

結論から先に言えば、差別化、あるいは独自性のためにチョンジュが採った、あるいは採ってきた選択肢は、よりハードコアな方向へと舵を切る、ということだったと言っていい。つまり具体的にいえば、よりインディペンデントな映画を支援するという方向性だ。そしてそれを含む形で打ち出されたのが、デジタル映画の可能性を開拓するという方針であり、それを最も端的に表現している企画が、国際的にもよく知られている「三人三色」である。この企画は既にこれまでにも一定以上の成果をあげていて、傑作として知られる2004年のポン・ジュノの作品をはじめ、すでにアジアの名だたる監督たちがデジタル短編作品を同企画のために寄せてきており、8回目を迎えた今年は、ついにアジアを離れ、ヨーロッパからハルン・ファロッキ(オランダ)、ペドロ・コスタ(ポルトガル)、ウジェーヌ・グリーン(フランス)という3人の監督が迎えられることとなった 。

ただ、未だに試行錯誤の中にあるのは、映画祭のメインプログラムである国際コンペティション部門だろう。この部門(と韓国映画の特集部門)が、映画祭の旗印たる「インディペンデント映画の支援」という理念を最も象徴すべき部門であることは間違いなさそうなのだが、理念の明確さと比べて、肝心の内容の方の焦点がやや不明確であり、その辺りが、幾度にも渡る当部門の再編成という結果となってあらわれているのではないかと思える。今年に関しても、これまで続いてきた「Digital Spectrum」というデジタル映画のコンペティションが廃止され、国際コンペ部門が従来の2部門から1部門となるなど、大きな変化が施されていた 。

また、海外から訪れる観客にとって、この種の映画祭の魅力的な点は、韓国映画の新作をまとめてショウケース的に観ることができるということかもしれない。そして、その意味では、国内のインディペンデント作品を対象にした「Korean Cinema on the Move」という既存部門の新たなコンペティション化は、そうした部分への注目をさらに高めたいという映画祭側の意欲の表れだとも受け取れる。ただ、国際的に訴求力のある作品はそれよりも先に海外の映画祭、あるいはプサン映画祭などに出品されていることが多い現状では、同部門の作品の質を国際的な基準で維持するのは並大抵なことではない。そしてそのことは、今回に関しても、ある程度明らかになってしまったともいえる。しかしながら、これに関しては、継続して努力をしていく以外に方法はないのかもしれない。

それから、言うまでもないことだが、映画祭の大切な仕事の一つには、映画史的な過去の作品に再び光を当てるということがある。そして、その意味で、今年行われたイギリス人映画作家ピーター・ワトキンスのレトロスペクティブは、実に素晴らしい仕事だったといえる。中でもやはり白眉だったのが、ノルウェーの画家エドワルド・ムンクの生涯を描いた『Edvard Munch』(邦題『ムンク 愛のレクイエム』)で、ワトキンスの作品によく見られるフェイク・ドキュメンタリー的な手法と従来的なフィクションの作法が高度に融合され、非常にユニークな、そして魅惑的な世界を現出せしめた濃厚な傑作だった。また、フェイク・ドキュメンタリー的な手法を駆使して痛烈な社会批判を行うワトキンスの本流とも言える作品群の中では、”Punishment Park”という架空の場所を通じて国家による暴力を比喩的・寓話的に描いた『Punishment Park』が、強く印象に残っている。

加えて、今回「三人三色」で招聘されたハルン・ファロッキやアルメニアの映像・映画作家アルタヴァスト・ペレシャンの特集上映、あるいはミッドナイト上映でのジョン・ウォーターズや押井守の小特集など、今年のチョンジュの回顧上映は、昨年のインドの巨匠リティック・ゴトクの特集上映に引き続き、著しい充実度だった。また、この映画祭に特徴的なことの一つに、観客の層が非常に若いということがある。事情を聞けば、映画を勉強する大学生等がソウルやプサンなどからも団体で駆けつけて来ているのだという。また、チョンジュという比較的小都市で開催されていることもあり、野外での無料上映や音楽バンドによるコンサートなど、地域社会のイベントとしても定着している様子が伺える。まだまだ試行錯誤が続く部分もあるかもしれないが、少なくとも「プサンで上映されなかった映画」を上映する映画祭、という以上の存在になれる地盤は、十分に整いつつある。

(報告者:神谷直希)

投稿者 FILMeX : 17:40

2007年05月07日
「アザー・ハーフ」がチョンジュ国際映画祭で最高賞を受賞!

4月26日から5月4日まで開催された韓国のチョンジュ国際映画祭で、イン・リャン監督の長編第2作「アザー・ハーフ」がIndie Vision部門(インターナショナル・コンペティション)でWoosuk Award(最高賞)を獲得、副賞としてUS$10,000が贈られた。

Indie Visionは映画祭のメインとなるコンペティション部門で、劇映画とドキュメンタリーを含め、世界各国から12本が上映された。日本からは坪川拓史監督の「アリア」と、植岡喜晴監督の「ルック・オブ・ラブ」の2本が参加していた。

チョンジュ国際映画祭公式サイト
公式サイト(韓国語版)
公式サイト(英語版)

投稿者 FILMeX : 13:48

2007年04月27日
第8回チョンジュ国際映画祭 開幕!

今年で8回目の開催となるチョンジュ(全州)国際映画祭が4月26日に開幕を迎えた。同じく韓国のプサン国際映画祭が名実ともにアジア最大の映画祭としての地位を固めつつあるのに対し、デジタルシネマやインディペンデント映画により焦点をあてた映画祭として知られるチョンジュだが、やはり国際的に広く知られている同映画祭発のプロジェクトといえば、毎年3人の映画作家に40分弱のデジタル中編作品の製作を委託する通称「三人三色」であろう。過去に日本からも青山真治や諏訪敦彦、あるいは石井聰亙や塚本晋也といった監督たちが参加しているこのプロジェクトには、これまでアジア出身の監督たちが参加してきていたが、今年はその枠が撤廃され、名前も新たに「Jeonju Digital Project」となってリニューアルされて登場する。今年の参加監督はペドロ・コスタ(ポルトガル)、ハルン・ファロッキ(ドイツ)、ウジェーヌ・グリーン(フランス)というヨーロッパからの3人。完成作品は4月28日にまとめてプレミア上映される。

また、映画祭のメインセクションといえるコンペティション部門「Indie Vision」には、世界各国からの長編12作品が参加予定。日本からは植岡喜晴の『ルックオブラブ』と坪川拓史の『アリア』の2作品が選出されている。(文中敬称略) 報告者:神谷直希

チョンジュ国際映画祭公式サイト
韓国語版
英語版

投稿者 FILMeX : 12:22

2006年05月05日
第7回チョンジュ国際映画祭 レポート

(映画祭期間:2006/04/27-05/05)
<1>映画祭 概観

 第7回チョンジュ国際映画祭が4月27日から5月5日にかけて開催された。東京フィルメックスと同じ2000年にスタートを切り、インディペンデント映画作家やアート映画を積極的に支援するチョンジュ映画祭は、東京フィルメックスと共通する部分も多い。
近年目覚ましい勢いの韓国映画界においても一定の地位を確立しつつある。

・会場
・上映本数 42カ国から194本

 映画祭参加を通じてもっとも強く印象づけられたことは、何よりも「若い」ということ。事務局のスタッフも、ボランティアスタッフも、観客もみな若い。そのにぎやかさと熱気が映画祭を特徴づけているように感じる。期間中は、平日昼の上映を除けばどの上映回も観客であふれ、上映後のQ&Aも積極的に監督への質問が寄せられていた。

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投稿者 FILMeX : 13:25

2006年04月24日
第7回チョンジュ映画祭 開幕

(2006年4月27日-5月5日:韓国・全州にて)
http://www.jiff.or.kr/main/index.php

インディペンデント作品やデジタル作品など、新進の才能の紹介を続けて評価を高めているチョンジュ国際映画祭が今年も開催される。第7回を迎える今年は27日より9日間にわたって、42カ国より194本の作品が上映される。

オープニング作品は、今年2月のベルリン映画祭のコンペティションで上映され銀熊賞(審査員特別賞)を獲得した、イランのジャファル・パナヒ監督による「オフサイド」。イラン国内では女性によるサッカー競技場への立ち入りが禁止されているが、どうしてもW杯予選を観たいと切望するサッカーファンの少女たちが、試合当日に繰り広げる悲喜交々をパナヒ監督が軽妙に描いてみせた作品だ。ドイツW杯を直前に迎えて盛り上がる韓国でも、熱狂的に迎え入れられることが予想される。
また、クロージング作品は、昨年12月のNHKアジアフィルムフェスティバルでワールドプレミア上映された韓国の「ドント・ルック・バック」が上映される。監督のキム・ヨンナムはホン・サンスの助監督を務めたこともあり、この作品が長編デビュー作となる。昨年の第6回東京フィルメックスのコンペティションで上映された「サグァ」でも好演をみせ、日本での人気も高まっているキム・テウが最後の休暇中の陸軍兵長の主役を演じている。

毎年注目を集めてチョンジュの顔ともなっている「デジタル三人三色」は、映画祭が製作するDV短編オムニバスで、今年はエリック・クー(シンガポール)「No Day Off」、ペンエグ・ラッタルナアーン(タイ)「Twelve Twenty」、ダレジャン・オミルバイエフ(カザフスタン)「About Love」の3本が上映される。

メイン・プログラムの2つのコンペティション部門のうち、12本のインディペンデント映画が賞を競う<インディ・ビジョン>部門ではアメリカ在住のイラン人映画監督Ramin BAHRANIのデビュー作で、アミール・ナデリ監督の「マラソン」や「サウンド・バリア」のマイケル・シモンズが撮影を務めた「Man Push Cart」や、イラン=フランス合作映画「The Gaze」、今年のベルリン映画祭フォーラム部門でも上映されたインド映画「John & Jane」などが上映される。また、日本からは昨年11月のトリノ映画祭でグランプリを受賞した坪川拓史監督の「美式天然」も上映される。

もう一つのコンペティション<デジタル・スペクトラム>では、デジタルで撮影された12本が上映される。シンガポールから「The Art of Flirting」、タイの「Stories from the North」や、台湾の若手4人によるオムニバス「TAIPEI 4-WAY」の他、韓国の「Heavenly Path」がワールドプレミア上映される。

<シネマスケープ>部門では、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の「Magic Mirror」などの他、日本からは長崎俊一監督「闇打つ心臓」や塚本晋也監督の「HAZE」、黒沢清監督の「蟲の家」、諏訪敦彦監督の「パーフェクト・カップル」などが上映される。

特集上映部門は、ソ連時代に上映が許されなかった60年代から80年代にかけての10本を特集する。また、インドでサタジット・レイやグル・ダットと並び称されるリトウィク・ガタク監督の生誕80周年、没後30周年を記念して7本が上映される。

(報告者:岡崎 匡)

投稿者 FILMeX : 23:06

2005年07月08日
第6回チョンジュ国際映画祭 レポート

(参考記事):第6回チョンジュ国際映画祭 開催
https://filmex.jp/mt/archives/eigasai-dayori/2005/04/6.html

第6回チョンジュ国際映画祭(4/28?5/6) 報告


●映画祭の状況について

今年から会場が商店街地域に一括されて便利になったこともあり、休日を中心に盛況を呈していた。市民向けの行事も多数行なわれ、夜間の街頭イルミネーションが祭りの雰囲気を盛り上げていた。観客層は、高校生や大学生などを中心に若い世代が多く、韓国映画と日本映画が人気で、軒並みソールド・アウトとなっていた。新作のみならず、相米慎二特集も注目度が高く若い観客で賑わっていた。

従来と比べてプログラム面・運営面とも、より幅広い観客層にアプローチするよう変化してきているように見えるが、過渡期のようにもとれ、今後、チョンジュ映画祭がどのように個性を活かして発展していくのかは、興味深い。特に2005年に入って、プチョン、クァンジュの映画祭が難局を迎えた状況の中で、国内でのチョンジュへの期待が高まっていることも察せられる。

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投稿者 FILMeX : 18:35

2005年04月12日
第6回チョンジュ国際映画祭 開幕

(2005年4/28?5/6、韓国全州にて)
http://www.jiff.or.kr/en_2005/

チョンジュ国際映画祭は、「Freedom, Independence, and
Communication」のキャッチフレーズのもと、インディペンデントやDV作品を含め新進の才能を紹介している。第6回となる今年は、30ケ国より170本の作品が上映される。

昨年より全体的な上映本数は減少したが、より落ち着いて作品が見られるように本数を絞り、実験映画部門は規模を縮小しながらも監督を招いての特集上映をプログラミングし、また地元の観客が映画祭に親しみやすいように家族向けの作品を取り上げるなど配慮がうかがえる。
また、上映会場の分散を改善し、オープニングとクロージングを除いて商店街内の映画館街のシネコンを使用しチケットセンターやゲストオフィスなども同地区に設置し、不便さを解消するよう試みている。

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投稿者 FILMeX : 18:00



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