2月9日から19日にかけて開催される第56回ベルリン国際映画祭の全容が先日発表された。
最も注目を集めるコンペティション部門の長編作品は全部で26本。その内19本が金熊賞を争い、残る7本はコンペ外作品として上映される。開催国ドイツ絡みの作品を始め、欧米諸国の作品がラインアップの大半を占め、またオスカーを狙うアメリカ映画が数本含まれているのはほぼ例年通り。他の地域に目を転じてみると、アジアからは、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督(タイ)・浅野忠信主演作品『Invisible Waves』、香港のパン・ホーチョン(彭浩翔)監督(『AV』などがこれまで東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映されている)の新作『Isabella』、そしてイランからの2作品、Rafi Pitts監督の『Zemestan(It’s Winter)』とジャファール・パナヒ監督の『Offside』、そしてコンペ外作品として、中国のチェン・カイコー(陳凱歌)監督の『PROMISE』がそれぞれ選出されている。
またシャーロット・ランプリングが委員長を務める審査員8人には、アメリカのマシュー・バーニーのほか、アジアからは韓国の女優イ・ヨンエがあたる。
今年は残念ながら日本からのコンペティション出品作はない。だが、他の部門を見てみると、まずはパノラマ部門で三池崇史監督の新作『46億年の恋』とSABU監督の『疾走』が上映される。また、新進作家の紹介と先鋭的な作品の上映を主な主眼としているフォーラム部門には、舩橋淳監督が主演にオダギリジョーを迎えてアメリカで撮影した『Big River』、批評家/ドキュメンタリー映画作家である藤原敏史監督の長編デビュー作『僕らはもう帰れない』、昨年12月に日本国内では公開された園子温監督の『奇妙なサーカス』、そして昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映された梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督の『Dear Pyongyang』が新作として選出されている。また、同部門で注目に値するのが、昨年の東京フィルメックスで回顧上映が組まれた中川信夫監督作品(12作品)の内、9作品が特集上映されることである(詳細は下記を参照のこと)。同部門では一昨年の清水宏監督特集、昨年の「恋や恋なすな恋」(内田吐夢監督)と、ここ数年日本映画のクラシック作品の上映が続いているが、職人技と独特な観念が同居する中川信夫監督の作品群をベルリンの人々がどう受け止めるのか、楽しみに見守りたいと思う。
また、その他の部門では、青少年向けの映画を集めた「kinderfilmfest/14plus」部門でクロード・ガニオン監督の『KAMATAKI』と、第15回PFFスカラシップ作品である木下雄介監督の『水の花』が上映される他、クラシック作品を上映する「レトロスペクティブ」部門(今年は「女優」に焦点を当てた1950年代の映画特集)では、小津安二郎監督の『麦秋』(原節子)、成瀬巳喜男監督の『浮雲』(高峰秀子)、木下恵介監督の『喜びも悲しみも幾歳月』(高峰秀子)の計3本が上映される予定になっている。
コンペティション部門(長編)のラインアップは以下の通り。
『A Prairie Home Companion』
監督: ロバート・アルトマン
アメリカ / 2005年
『En Soap(A Soap)』
監督: Pernille Fischer Christensen
デンマーク、スウェーデン / 2005年
『Candy』
監督:ニール・アームフィールド
オーストラリア / 2005年
『カポーティ(Capote)』
監督: ベネット・ミラー
アメリカ / 2005年
※コンペ外上映作品
『L’ivresse du pouvoir(Comedy Of Power)』
監督: クロード・シャブロル
フランス、ドイツ / 2005年
『Romanzo Criminale(Crime Novel)』
監督: Michele Placido
イタリア、イギリス、フランス / 2005年
『El custodio(The Minder)』
監督: Rodrigo Moreno
アルゼンチン、ドイツ、フランス / 2005年
『Find Me Guilty』
監督: シドニー・ルメット
アメリカ / 2005年
『Grbavica』
監督: Jasmila Zbanic
オーストリア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ドイツ / 2005年
『Invisible Waves』
監督: ペンエーグ・ラッタナルアーン
オランダ、タイ、香港 / 2005年
『Isabella』
監督: パン・ホーチョン(彭浩翔)
Hong Kong *, People’s Republic of China 2006
『Zemestan(It’s Winter)』
監督: Rafi Pitts
イラン / 2005年
『ehnsucht(Longing)』
監督: Valeska Grisebach
ドイツ / 2005年
『Offside』
監督: ジャファール・パナヒ
イラン / 2005年
『ビリー・ザ・キッド / 21歳の生涯(Pat Garrett & Billy The Kid: The Special
Edition)』
監督: サム・ペキンパー
アメリカ / 1973 – 2005年
コンペ外上映作品(クロージング作品)
『Requiem』
監督: ハンス=クリスティアン・シュミット
ドイツ / 2005年
『Slumming』
監督: Michael Glawogger
オーストリア、スイス / 2006年
『Snow Cake』
監督: マーク・エヴァンス
イギリス、カナダ / 2006年
※オープニング作品
『シリアナ(Syriana)』
監督: スティーブン・ギャガン
アメリカ / 2005年
※コンペ外上映作品
『Elementarteilchen(The Elementary Particles)』
監督: Oskar Roehler
ドイツ / 2005年
『Der freie Wille(The Free Will)』
監督: Matthias Glasner
ドイツ / 2006年
『ニュー・ワールド(The New World)』
監督: テレンス・マリック
アメリカ / 2005年
※コンペ外上映作品
『Promise』
監督: チェン・カイコー(陳凱歌)
香港、中国、アメリカ / 2005年
※コンペ外上映作品
『The Road To Guantanamo』
監督: マイケル・ウィンターボトム、マット・ホワイトクロス
イギリス / 2006年
『サイエンス・オブ・スリープ (The Science Of Sleep)』
監督: ミシェル・ゴンドリー
フランス / 2005年
※コンペ外上映作品
『Vフォー・ヴェンデッタ(V For Vendetta)』
監督: ジェームズ・マクティーグ
アメリカ、ドイツ / 2005年
※コンペ外上映作品
■コンペティション部門審査員
Charlotte Rampling (actress, UK), Jury President
Matthew Barney (multi-media artist, USA)
Yash Chopra (producer, India)
Marleen Gorris (director, Netherlands)
Janusz Kaminski (cinematographer, Poland)
Lee Young-ae (actress, Republic of Korea)
Armin Mueller-Stahl (actor, Germany)
Fred Roos (producer, USA)
■フォーラム部門で上映される中川信夫作品は以下の通り
「私刑(リンチ)」1949年
「人形佐七捕物帖 妖艶六死美人」1956年
「毒婦高橋お伝」1958年
「亡霊怪猫屋敷」1958年
「女吸血鬼」1959年
「東海道四谷怪談」1959年
「地獄」1960年
「『粘土のお面』より かあちゃん」1961年
「妖艶毒婦伝 人斬りお勝」1969年