林 加奈子(東京フィルメックス、映画祭ディレクター)
必見のドイツ映画!<クラウド9>
アンドレアス・ドレーゼン監督にも是非とも御来日いただきたかったのですが、残念ながらどうにも日程調整がつかず、今回はいらっしゃれない事になりました。しかし、この<クラウド9>は、必見の一本です。
結婚して30年も連れ添った相手との穏やかで問題ない日常がありながら、別の男性に魅かれて恋をしてしまうミセスの話です。つまり一言で言うと不倫の話なのですが、この映画の凄さは倫理的な問題よりも、彼女の変化をどう描くかという演出力と演技力です。旧東側で活躍していた演劇舞台のキャストによる映画と聞いていますが、恋をした彼女の初々しくて瑞々しい美しさは、本当に驚くばかり。俳優を目指している人たちにも是非ともご覧いただきたい一本です。
幾つになっても恋をする事はあるのですね。人はいつでも生き生きと生きられるのですね。でも、30年連れ添った配偶者がいる場合には、物事はそう簡単には展開しません。もし、彼女が初々しくなくて、もっと狡猾で、悪女になれたら、それだけの良くも悪くも資質があったのなら、ラストはまた別の展開があっただろうになぁとため息をつくばかりです。
今年は女性が中心になっている良い映画が集まりました。「木のない山」は子供たちですが主人公は6歳の少女とその妹。「ヘアカット」はティーンエージの女の子、「ノン子36歳(家事手伝い)」はアラフォーの難しい年頃の女性。「ティトフ・ヴェレスに生まれて」は年の離れた3人姉妹の話。そして「ショーガ」は若い人妻。
「完美生活」も二人の中国女性の生き方を描いています。どれも女性の生きざまについて考えさせられます。シンプルに女性映画という括り方をするつもりは毛頭ありませんが、どれも味わい深い映画ばかりです。
「クラウド9」詳細
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フィルメックス・カウントダウン vol.6
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