事務局からのお知らせ

第7回チョンジュ国際映画祭 レポート

(映画祭期間:2006/04/27-05/05)
<1>映画祭 概観
 第7回チョンジュ国際映画祭が4月27日から5月5日にかけて開催された。東京フィルメックスと同じ2000年にスタートを切り、インディペンデント映画作家やアート映画を積極的に支援するチョンジュ映画祭は、東京フィルメックスと共通する部分も多い。
近年目覚ましい勢いの韓国映画界においても一定の地位を確立しつつある。
・会場
・上映本数 42カ国から194本
 映画祭参加を通じてもっとも強く印象づけられたことは、何よりも「若い」ということ。事務局のスタッフも、ボランティアスタッフも、観客もみな若い。そのにぎやかさと熱気が映画祭を特徴づけているように感じる。期間中は、平日昼の上映を除けばどの上映回も観客であふれ、上映後のQ&Aも積極的に監督への質問が寄せられていた。


 映画祭全体の運営は「お祭りの盛り上がり」をとても意識しているようだ。
 会場は昨年までのスクリーンに加えて、今年から全北国立大学での上映が復活している。この1,400席あまりの大会場では金土日のみ、1日4回の通常上映とミッドナイトオブゼッション(オールナイト上映)が行われていた。加えて、オープニングとクロージングは、Sori Art Center(2,000席あまり)が使用された。プログラマーの一人、チョン・スワン氏によると「映画館通りは便利ではあるが、大きな規模の上映が出来ない。距離が離れて不便ではあるが、上映の幅を広げるために2つの会場を今年は使用した」とのこと。
 映画祭期間中のオフィスに相当するのは、映画館通りの2辺に囲まれた敷地に、この期間限定で建てられたプレハブ式の会場。これも今年からの試みで、ふだんは駐車場となっていた大きなスペースを利用している。このにより、至便性とともに「映画祭が開催中である」という雰囲気が一層盛り上がっているように見える。実際に映画祭に参加してみると、この映画館通りの会場機能の至便さには驚かされる。
 また、同じ敷地内に野外ステージが特設されており、ここで連夜20:30から野外上映が行われた。その野外上映に先駆けて午後から夕方にかけては、バンドが出演して演奏を繰り広げていた。ちなみに出演しているのは韓国の地元バンドが多いようだが、日本からもギターウルフやadvantage Lucy他が招聘されていたみたいで、ここでも「インディーズ色」を打ち出している様子。
<2>作品について
「三人三色:Talk to Her」 2006 デジベータ
–About Love オミルバイエフ カザフ 38分
–No Day Off エリック・クー シンガポール 39分
–Twelve Twenty ペンエグ タイ 30分
チョンジュの「顔」ともなりつつある「デジタル三人三色」。アジアの気鋭の作家3人がデジタル撮影によりオムニバスを競作するプロジェクトである。過去にもチャン・ユアン、ジャ・ジャンクー、ツァイ・ミンリャン、諏訪敦彦、青山真治、バフマン・ゴバディ、ポン・ジュノ、石井聰互、ユー・リクウァイ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、塚本晋也など錚々たる監督たちが参加してきた。中には昨年の東京フィルメックス・コンペティションで上映されたソン・イルゴン「マジシャンズ」のように、この「三人三色」で製作された中編をもとに長編へと発展していった作品もあらわれるようになってきた。
今年は「Talk to Her」とのテーマが掲げられ、それぞれが女性を主題とする作品を撮り上げた。今年の参加監督はカザフスタンのオミルバイエフ監督「About Love」、シンガポールのエリック・クー監督「No Day Off」、タイのペンエグ・ラッタナルアーン監督「Twelve Twenty」の3本。これまでが韓国、日本、中国といった東アジア圏の監督が多かったこととは対照的だ。
オミルバイエフの「About Love」は主人公の数学教師が、偶然に再会した大学時代の旧友宅へ招かれ、そこで出会った旧友の妻に一目惚れをしてしまうという物語。直接的な愛の交歓ではなく、視線を交わすことで無言の愛をお互いに確かめあうまでにいたった二人のささやかな日常の描写と、せつないラストシーンで終える。チェーホフの「About Love」をモチーフとしている。
エリック・クーはシンガポール国内で大きな社会問題となっているフィリピンからのメイドの労働問題について「No Day Off」で描いた。ドキュメンタリーかと見まがうばかりの映像スタイル(一貫して主人公の女性の視点から捉えられた映像、ナレーションを一切排した)。しかし、そのスタイルに反して故郷のスラウェシに子どもと夫を残しての4年にもわたるメイド生活ののち、故郷へ戻るまでの「休みのない日々」はとても雄弁に私たちの目の前に問題を立ち上がらせる。
ペンエグ「Twelve Twenty」は国際線で顔を合わせた見知らぬ女性と席を隣にすることとなり、目的地に到着するまでの時間をまるで結婚しているカップルであるかのように過ごすことになった男性の独白による物語だ。当初、監督はこの作品をタイトル通り12時間20分の作品として撮影することを想定していたが、このオムニバスのために修正をしたという。
3本を通じて「Talk to her」というテーマでありながら登場する女性がほとんど会話をしないことに気付かされる。監督達が示し合わせたのか、それとも現在の映画のスタイルの流行によるものか・・・。彼女たちに語りかけるのは、観客である私たちなのだが。
その他にも、各国の映画祭で話題になった作品や、新作韓国映画など、数多くの作品が上映されて、観客を集めた。
(報告者:岡崎 匡)


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