第59回カンヌ映画祭が5月17日に開幕する。それに先立ち、公式部門、監督週間、批評家週間の各部門のラインアップが先日相次いで発表された。
最も注目を集めるコンペティション部門には20作品がエントリー(5月11日現在)。ナンニ・モレッティ、ペドロ・アルモドバル、アキ・カウリスマキ、ケン・ローチらのいわゆる常連組から、既に一度はレッド・カーペットを経験している作家たち(ブルーノ・デュモン、ニコル・ガルシア、パオロ・ソレンティーノ、ロウ・イエ、ヌーリ・ビルゲ・ジェイランなど)、そして、キャリアは様々だがコンペ初登場となる監督たちまで、常連組が軒並み顔を揃えた昨年と比べて、比較的多様性のあるラインアップとなった。ただ、地域的には欧米の比重が随分高くなっており、アジアの作品はロウ・イエ(中国)の『Summer Palace』のみと、やや寂しい結果となっている(トルコをアジアと見なしたとしても、ヌーリ・ビルゲ・ジェイランの『Iklimer』と併せて 2本)。その辺りのバランスを取るためか、今年の審査委員長は香港出身のウォン・カーウァイ。彼を中心に、映画監督と俳優のみで構成される今年の審査員団が最終的にどんな決断を下すのか、世界の注目が集まる。
公式部門の他の部門に目を転ずると、「ある視点」で新進作家の発掘と地域的な多様性を示しながら、特別上映作品で華やかさや話題性を加え、さらにはブニュエル劇場のプログラムでドキュメンタリー作品、クラシック作品、あるいはフィクションの小品を上映するという、比較的少数精鋭のプログラムでありながらも、“カンヌ”ならではの懐の深さを示そうとする姿勢は相変わらず。ここから発信される多様な作品たちが、今後どのように世界に受け入れられていくのか、今年もまた楽しみなサイクルが始まろうとしている。 (文/神谷直希)
公式部門のラインアップ(短編、学生映画部門は除く)は以下の通り(06年5月11日現在)。
※製作国は推定
◇オープニング
ダヴィンチ・コード (ロン・ハワード) アメリカ
◇クロージング
Transylvania (トニー・ガトリフ) フランス
◇コンペティション
Flandres (ブルーノ・デュモン) フランス
Selon Charlie (ニコル・ガルシア) フランス
Quand j’etais Chaunteur / When I was a Singer (グザヴィエ・ジャンノリ) フランス
ボルベール(原題) / Volver (ペドロ・アルモドバル) スペイン
Red Road (アンドレア・アーノルド) イギリス
La Raison Du Plus Faible / The Weakest Is Always Right (リュカ・ベルヴォー) フランス=ベルギー
Indegenes / Days Of Glory (ラシド・ブシャレブ) フランス
Iklimer / Climates (ヌーリ・ビルゲ・ジェイラン) トルコ
マリー・アントワネット / Marie Antoinette (ソフィア・コッポラ) アメリカ
Juventude em Marcha (ペドロ・コスタ) ポルトガル
Pan’s Labyrinth (ギジェルモ・デル・トロ) メキシコ=スペイン=アメリカ
バベル(原題)/ Babel (アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ) アメリカ
Lights In The Dusk (アキ・カウリスマキ) フィンランド
サウスランド・テイルズ(原題)/ Southland Tales (リチャード・ケリー) アメリカ
Fast Food Nation (リチャード・リンクレーター) アメリカ
The Wind That Shakes The Barley (ケン・ローチ) イギリス
Summer Palace (ロウ・イエ) 中国
The Caiman (ナンニ・モレッティ) イタリア
L’Amico del Famiglia (Friend Of The Family) (パオロ・ソレンティーノ) イタリア
Cronica de una fuga (イスラエル・アドリアン・カエタノ) アルゼンチン
◇コンペ外特別上映
United 93 (ポール・グリーングラス) アメリカ
X-Men 3: The Last Stand (ブレット・ラトナー) アメリカ
Over The Hedge (ティム・ジョンソン、カレイ・カークパトリック) アメリカ
Clerks Ⅱ (ケヴィン・スミス) アメリカ
◆ミッドナイト
Shortbus (ジョン・キャメロン・ミッチェル) アメリカ
Election 2 (ジョニー・トー) 香港
Guisi / Silk (スー・チャオピン) 台湾
◆ブニュエル・プログラム
Volevo Solo Vivre (ミンモ・カロプレスティ) イタリア
Boffo: Tinde;town’s Bombs And Blockbusters (ビル・クトゥリー) アメリカ
Avida (ブノワ・デルピーヌ) フランス
An Inconvenient Truth (デヴィス・グッゲンハイム) アメリカ
The Boy on a Galloping Horse (アダム・グツィンスキ) ポーランド
Ici Hajac, Vous La Terre (ジャン=アンリ・ムニエ) フランス
Zidane, un Portrait du 21e Siecle (フィリップ・パレノ、ダグラス・ゴードン) フランス
Sketches of Frank Gehry (シドニー・ポラック) アメリカ
These Girls (タハニ・ラシェッド) カナダ
Bamako (アブデラマーネ・シサコ) マリ
Chambre 666 (ヴィム・ヴェンダース) フランス=西ドイツ 1982
The House is Burning (ホルガー・エルンスト) ドイツ
◇ある視点
Paris, je t’aime (オムニバス映画) フランス ※オープニング
Ten Canoes (ロルフ・デ・ヘール) オーストラリア
Surburban Mayhem (ポール・ゴールドマン) オーストラリア
Luxury Car (ワン・チャオ) 中国
La tourneuse de pages(ドゥニ・デルクール) フランス
La Californie (ジャック・フィエスキ) フランス
Meurtrieres (パトリック・グランペレ) フランス
Bled Number One (ラバ・アムル=ゼメシュ) フランス=アルジェリア
977 (ニコライ・コメリキ) フランス=ロシア
Re-cycle (オキサイド&ダニー・パン) 香港 ※クロージング
Taxidermia (パルフィ・ギョルギ) ハンガリー
Serambi (ガリン・ヌグロホ) インドネシア
The Wedding Director (マルコ・ベロッキオ) イタリア=フランス
You Am I (クリスティヨナス・ヴィルジウナス) リトアニア
El violin (フランシスコ・バルガス) メキシコ
Uro (ステファン・ファルドバッケン) ノルウェー
Hamaca Paraguaya (パス・エンシナ) パラグアイ
Z odzysku (スラヴォミール・ファビッキ) ポーランド
The Way I Spent the End of the World (カタリン・ミトゥレスク) ルーマニア
The Unforgiven (ユン・ジョンビン) 韓国
Salvador Puig Antich (マヌエル・ウエルガ) スペイン
To Get to Heaven First You Have to Die (ジャムシェド・ウスモノフ) タジキスタン
A Scanner Darkly (リチャード・リンクレーター) アメリカ
Two Thirty 7 (ムラリ・K・タルーリ) オーストラリア
◇カンヌ・クラシックス
○ダニエル・ダリューを招いて
Nouvelle Chance (アンヌ・フォンテーヌ) 2006
○映画についてのドキュメンタリー
Boffo! Tinseltown’s Bombs and Blockbusters (ビル・コーチュリー)
Once Upon a Time… Rome Open City (マリー・ジェニン)
Requiem for Billy the Kid (アンヌ・ファンサルベール)
John Ford/John Wayne: The Filmmaker and The Legend (サム・ポラード)
Marcello, una vita dolce by (マリオ・カナーレ、アンナローサ・モーリ)
○修復されたフィルム
風の谷のナウシカ (宮崎駿) 1984
十四女英豪 / The 14 Amazons (程剛/Cheng Kang) 1972
Blast of Silence (アレン・バロン) 1961
激しい季節 / Estate Violenta / Violent Summer(ヴァレリオ・ズルリーニ)1959
巌窟王 / Monte-Cristo (アンリ・フェスクール)1928
La Drolesse / The Hussy(ジャック・ドワイヨン)1979
三千年の収穫 / Harvest: 3,000 Years / Mirt Sost Shi Amit(ハイレ・ゲリマ) 1975
インディア・ソング / India Song (マルグリット・デュラス) 1975
カビリア / Cabiria (ジョヴァンニ・パストローネ) 1914
プラトーン / Platoon (オリヴァー・ストーン) 1986
捜索者 / The Searchers(ジョン・フォード)1956
◆キャロル・リード・生誕百年
落ちた偶像 / The Fallen Idol (1948)
邪魔者は殺せ / Odd Man Out (1947)
最後の突撃 / The Way Ahead (1944)
文なし横丁の人々 / Kid For Two Farthings (1955)
◆ノーマン・マクラーレンへのオマージュ(1プログラム)
◆アレハンドロ・ホドロフスキーへのサリュー
エル・トポ / El Topo (1970)
ホーリー・マウンテン / Holy Mountain (1973)
◆セルゲイ・M・エイゼンシュテインへのオマージュ
10月 / Oktyabr / October (1926)
ベージン草原 / Bejin Loug / Bejin Meadow(1937)
◆ジョアンナ・シムカスを招いて
冒険者たち / Les Aventuriers / The Last Adventurer(ロベール・アンリコ)1967
◆Nederland Filmmuseumへのオマージュ
Mystery of the Eiffel Tower (ジュリアン・デュヴィヴィエ) 1927
◇メイン・コンペティション審査員
ウォン・カーウァイ / 審査委員長 / 香港、監督
モニカ・ベルッチ / イタリア、女優
ヘレナ・ボナム・カーター / イギリス、女優
ルクレシア・マルテル / アルゼンチン、監督
チャン・ツィイー / 中国、女優
サミュエル・L・ジャクソン / アメリカ、俳優
パトリス・ルコント / フランス、監督
ティム・ロス / イギリス、監督・俳優
エリア・スレイマン / パレスティナ、監督
■公式サイト(仏・英語)
http://www.festival-cannes.org/
以上。