Japan / 2022 / 128min
Director:KUDO Masaaki
Distribution:Rabbit House
Seventeen-year-old Aoi lives in Koza, Okinawa with her husband and young son. Leaving her son with her grandmother, Aoi works until the wee hours at a hostess club with her best friend Mio—it is left to Aoi to scrape by for her family and make ends meet, as her frequently violent husband has no serious intention of working. Sadly he discovers her secret earnings stash one day after beating her up badly during an argument. What can she do now that her face is swollen and scarred, and she can no longer work at the hostess club? Reluctantly, she takes refuge with her mother-and-law to look for another job to support her family. Depicts a young mother's daily experience of violence as she tries to find her footing, struggling between dependence and independence. The third feature film from director KUDO Masaaki, whose sure hand can be felt in this meticulous depiction of the true nature of the cycles of poverty in Okinawa, and the complex human portrait of a woman trapped within them. This film had its world premiere in competition at the 2022 Karlovy Vary International Film Festival.
Masaaki KUDO was born in 1983 in Kyoto, Japan.
He worked as assistant director on several Japanese well-known directors, such as Yoshimitsu MORITA, Gakuryu ISHII, Isshin INUDO, Isao YUKISADA, Takashi YAMAZAKI and gained wide experiences in diverse films from the classic period drama to sci-fi fantasy. His first feature, “I’m Crazy” received Netpac Award at Bucheon International Fantastic FF in 2018. Then “Unprecedented” premiered at Tallinn Black Nights FF in 2021. “A Far Shore”, his third feature film, was developed for many years in cooperation with Okinawa.
10/29『遠いところ』Q&A
2022.11.05
10月29日(土)、有楽町朝日ホールでコンペティション部門『遠いところ』が上映された。若年出産で経済的に不安定な生活を送る17歳の少女を通じて沖縄の現実を緻密に描いた作品。上映後の質疑応答には工藤将亮監督が登壇。客席で見守っていた主役の花瀬琴音さんと共演の石田夢実さんが観客に紹介された。
工藤監督はまず、本作の制作経緯を明かしてくれた。2015年頃から沖縄の若年母子を題材にしたルポルタージュを追いかけるうちに、監督自身の家庭環境との共通点や母親や祖母の姿と重なる部分が見えてきたという。「重い病を患っている母親が死ぬ前にしてあげられることは何だろうか」とプロデューサーに相談をもちかけ、最終的に沖縄に向かうことになったそうだ。
キャスティングでは、有名なタレントや俳優を使わず、オーディションでいい人を見つけるというポリシーを貫いたとのこと。ただ、沖縄でのキャスティングでは苦労した点もあったようだ。「この作品は沖縄で1年半以上かけて取材した、実話を元にしたストーリーです。沖縄のキャストの中には周囲の反対で出演できなくなる事態もあった一方で、賛同してくれた沖縄キャストは脇をしっかり固めてくれた。沖縄の方々と一緒に作り上げた」と当時を振り返った。
ごはんを食べる、洗濯をする、排泄をする、歩くといった、基本的な日常生活の場面が印象的な本作だが、長期取材を通して見たものに基づいており、「生活をする姿を描かざるを得ない」という思い、「生活の積み重ねを意識的に取り入れたい」という思いが込められているという。また、沖縄以外のキャストは、クランクインする1ヵ月前から実際に沖縄に住み、準備を重ねたという徹底ぶりだ。
本作に登場するような問題が起こる背景には、「様々な構造的な要因があるが、無自覚、無責任というのが問題ではないか?」と熱のこもった口調で語った。
こうした状況について、「みなさんも自分ごとのように感じてほしい。無関心にならずに」と観客に訴えた。また、エンディングの解釈を問われると、「みなさんは、この少女の姿を見てどのように思われましたか」と観客に問いかけで返した監督。「この少女が明日も生きていればいいな、とみなさんが思ってくれるならばいいのですが」と観客の反応に期待を込めた。
最後に撮影手法に話が及ぶと、「自分たちの感情をカメラに載せないように、手持ち(カメラ)はやめよう」と撮影監督の杉村高之さんと決めたことを明かしてくれた。なるべく説明的なカットやアングルを省き、美しい沖縄の構図の中で人間の姿を中心にとらえようと考えたという。
現実に目を背けることなく、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれた工藤監督には、会場から大きな拍手が寄せられ、質疑応答が終了した。本作は、来年初夏に劇場公開される予定だ。
文・海野由子
写真・吉田留美、明田川志保