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第16回東京フィルメックスラインナップ発表記者会見

AMG_0184_1S 10月7日、第16回東京フィルメックスのラインナップが発表され、アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて林 加奈子東京フィルメックス・ディレクターと市山尚三プログラム・ディレクターが会見を行った。林ディレクターは最初に、「たくさんの方々に支えていただきなから、第16回を迎えることができました」と感謝の言葉を述べた。

コンペティション部門の審査員は、審査委員長に韓国から釜山国際映画祭ディレクターのイ・ヨンガンさん、台湾から女優・映画監督のシルヴィア・チャンさん、塩田明彦監督、映画評論家・字幕翻訳家の齋藤敦子さん、フランスから映画配給会社で買付を担当するグレゴリー・ガジョスさんの5名を迎える。 AMG_0026Sコンペティション部門には、カザフスタン、スリランカ、ネパール、タイ、フィリピン、台湾、中国、韓国、日本から、「作り手の強い覚悟を感じられる、映画の未来を担う10本」(林ディレクター)が出品される。 『人質交換』のプロデュースを手がけたビアンカ・バルブエナさんは2012年に映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」の修了生(当時は「タレント・キャンパス・トーキョー」の名称で実施)。カンヌ国際映画祭カメラ・ドールを獲得した『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013、アンソニー・チェン監督)、昨年の東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞した『クロコダイル』(2014、フランシス・セイビヤー・パション監督)など、これまでに着実な成果を上げてきた「タレンツ・トーキョー」は、今年も11月23日から28日までの6日間にわたって開催される。授業は参加者のみで行われるが、11月26日には一般への公開講座も予定している。 AMG_0071S特別招待部門では短編と長編あわせて9作品が上映される。オープニング作品には園子温監督の最新作『ひそひそ星』が決定。9月に開催されたトロント国際映画祭ではNETPAC賞を受賞している。審査員を務めるシルヴィア・チャンさんはクロージング作品『山河故人(原題)』(ジャ・ジャンクー監督)に出演しているほか、自身の監督作『念念』、脚本・演出を手がけたミュージカルを盟友ジョニー・トー監督が映画化した『華麗上班族』が上映されるなど、今年は「シルヴィア・チャン・イヤー」(林ディレクター)と言えそうだ。同じく審査員を務める塩田明彦監督は、企業のウェブサイトのために製作された短編『約束』と、長編『昼も夜も』が上映される。イラン政府による映画製作禁止の処分が続くジャファル・パナヒ監督の『タクシー』は、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞した話題作である。 AMG_0096S今年は、3つの特集上映が企画されている。 一つ目は、「特集上映 ホウ・シャオシェン」。今年、『黒衣の刺客』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞したことも記憶に新しい台湾のホウ監督の初期から中期の代表作『風櫃の少年』(1983)『悲情城市』(1989)『戯夢人生』(1993)を上映する。『戯夢人生』は長らく上映が不可能な状態であったため、今回の上映は名手リー・ビンビンによる美しい撮影をスクリーンで堪能できる貴重な機会である。 有楽町スバル座での開催となる「特集上映 ツァイ・ミンリャン」(11月28日〜12月4日)では、同じく台湾の巨匠であるツァイ監督作品を上映する。商業映画からの引退を宣言して以降も積極的に作品を発表しているツァイ監督だが、“行者(Walker)”シリーズ最新作として今年初めに東京で撮影された『無無眠』ほか、全9作品の上映を予定している。ツァイ監督の長編最新作『あの日の午後』は特別招待部門で上映される。監督と、その分身ともいえる俳優のリー・カンションとの親密な対話を記録した作品で、ファンはこちらも見逃せない。 AMG_0110S3つ目の特集上映では、ピエール・エテックスを紹介する。ジャック・タチ作品のポスターデザインを手がけたことでも知られるエテックスは、ブレッソン、フェリーニ、カウリスマキなど巨匠の作品に俳優として出演しているばかりでなく、自ら主演・監督して優れた作品を発表してきた。今回の特集では、日本初上映となる代表作『ヨーヨー』(1965)『大恋愛』(1969)の2本を上映し、この知られざるマルチクリエイターの魅力を紹介する。(『大恋愛』のスチールは今年の映画祭メイン・ビジュアルに使用されており、駅舎にたたずむ男性はエテックス本人である) IMG_0028_1S会見では駐日フランス大使館映像放送担当官のヌーレディン・エサディさんが登壇し、エテックス特集にメッセージを寄せた。「エテックスは、ひとつのカテゴリーに分類できないアーティストです。俳優、音楽家、映画監督、脚本家、イラストレーター…そして道化師としての顔を持っています。ジェリー・ルイスと親交を持ち、ジャック・タチにインスピレーションを与えました。自ら演じ、監督するという意味で、チャップリン、キートンやロイドといった、長いコメディ映画の歴史に連なる存在です。私は数年前、ハバナの映画祭で類まれな優雅さとユーモアを備えた彼と会う機会を得ました。今回、残念ながら来日はかないませんでしたが、もし日本の観客にお目にかかったら、ハバナでそうしたように、言葉を発して挨拶するのではなく、赤い鼻をつけ、マジックを披露して皆さんを楽しませてくれたことでしょう」 ちなみに有楽町朝日ホールで『大恋愛』が上映される11月23日は、エテックス87歳の誕生日である。 アンスティチュ・フランセ東京では11月13日(金)より、ピエール・エテックス特集の連動上映として、「フレンチタッチ・コメディ!」と題し、エテックス作品を中心にフランスのコメディ映画を紹介する特集が開催される。 AMG_0158_1S会見の最後に、オープニング作品『ひそひそ星』の園子温監督が登壇。驚くべきペースで新作を発表し続けている園監督だが、自主映画的な作品作りをしたい、と昨年独立プロを設立。『ひそひそ星』はその第一弾となる。園監督はこの作品について「トロントではミニマル・サイファイ・ムーヴィーなんて言われまして、SF映画の設定ですが、撮影したのは住民が退避した福島の無人地域。出演者の3分の2が福島の仮設住宅で避難生活をおくっている一般の人びとっていう、ちょっと変わった映画です」と紹介し、「日本での第一歩がフィルメックスのオープニングというのは名誉なこと。この作品にとって幸せなスタートだと思っています」と喜びを語った。 10月10日より東銀座・東劇にて開催される「松竹120周年祭」では、東京フィルメックスとの連動企画として11月21日から27日の間、小津安二郎監督3作品をデジタル修復版で上映する。『晩春』のデジタル修復版は日本初上映。21日11:00の回は聴覚障がいのある方に向け、日本語字幕付きで上映を行う。また、毎日18:50の回は英語字幕付きの上映となる。 第16回東京フィルメックスは11月21日から29日の日程で有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇1(開会式+オープニング作品)、TOHOシネマズ日劇3(レイトショー)で開催される。「特集上映 ツァイ・ミンリャン」は11月28日から12月4日の日程で有楽町スバル座での開催となる。 本年度より、チケット販売がticket board(チケットボード)に変更される。公式サイト各作品の詳細ページからリンクするticket boardサイトで購入できるほか、電話(ticket boardインフォメーションセンターで日時限定)、開催期間中の会場窓口での販売も行う。詳細はチケット情報ページをご確認されたい。(https://filmex.jp/2015/ticket) (取材・文:花房佳代、撮影:白畑留美)


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