【レポート】開会式

11月17日(土)、TOHOシネマズ日比谷スクリーン12にて、第19回東京フィルメックスの開幕式が行われた。今春、長らくフィルメックスの主力スポンサーだったオフィス北野による支援が打ち切られ、一時期は開催が危ぶまれていたフィルメックスだが、新たに木下グループの支援を得て開催の運びとなった。開会式に登壇した市山尚三東京フィルメックス・ディレクターは、「みなさんにご心配をおかけしたかと思いますが、このように無事に初日を迎えることができ、サポートをしていただいたみなさんに感謝したいと思います」と謝辞を述べた。

続いてコンペティション部門の審査員が紹介され、アートディレクターのエドツワキさん(日本)、昨年のコンペティション作品『殺人者マルリナ』で最優秀作品を受賞したモーリー・スリヤ監督(インドネシア)、東京テアトルの西澤彰弘さん(日本)、審査委員長を務めるウェイン・ワン監督(米国)の4名が登壇した。また、開会式には間に合わなかったが、韓国から映画ジャーナリストのジーン・ノさんも審査員に加わる。

市山ディレクターによると、審査委員長のワン監督もフィルメックスの行く末を案じていた一人で、ワン監督から協力の申し出があり、今回の審査委員長の就任依頼に至ったという。さらに、昨年フィルメックスの会期中に来日していたワン監督は、1本ぐらい観ようかというつもりでやって来たが、結局、1日1本観に来ることになるほどフィルメックスに魅せられたというエピソードを披露。ワン監督は、「今回のラインナップを見ても本当に興味深い作品が勢揃いしていて、楽しみにしています。フィルメックスへのご支援をありがとうございます」と述べ、観客から大きな拍手が寄せられた。

今年のコンペティション部門は全10作品。最優秀作品賞と審査員特別賞などの審査結果は11月24日(土)に行われる授賞式にて発表される。今回は、アミール・ナデリ監督の特集上映、日本の6作品をはじめとした個性豊かな気鋭の監督作品が並ぶ特別招待作品のほか、映画批評を検証する<国際批評家フォーラム>、親子で映画&聴覚障がい者向けの日本語字幕付き鑑賞会<映画の時間プラス>、トークショーなど、多彩な関連イベントが組まれている。

アジア各国の秀逸な映画が集う第19回東京フィルメックス。映画作家と観客の出会いの場として、映画の未来へ新たな歩みを踏み出した映画祭が幕を開けた。

 

文責: 海野由子  撮影: 明田川志保、吉田(白畑)留美

【レポート】『僕はイエス様が嫌い』舞台挨拶

第19回 東京フィルメックスの初日となる11月17日(土)、開会式に先駆けて有楽町スバル座にて『僕はイエスさまが嫌い』が上映された。東京から雪深い地方のミッション系の学校に転校した少年ユラが、新たな習慣に戸惑いながら、突然現れた小さなイエス様や友達と過ごす姿を描いた作品。奥山大史監督が監督、脚本、撮影、編集を手がけた長編デビュー作で、去る9月にサンセバスチャン映画祭で最優秀新人賞を獲得した話題作。今回のフィルメックスでの上映が日本初公開となる。 続きを読む

【レポート】『素敵なダイナマイトスキャンダル』Q&A

第19回東京フィルメックスの開催に合わせ、有楽町スバル座で多様な観客に向けて実施された上映会「映画の時間プラス」 。11月17日(土)には、『素敵なダイナマイトスキャンダル』が聴覚障がい者向け日本語字幕付きで上映された。本作は母親が隣家の青年と不倫の末、ダイナマイト心中した体験を持つ雑誌編集者・末井昭さんの自伝的エッセイを映画化したもの。上映後のQ&Aには冨永昌敬監督が登壇した。 続きを読む

【追加上映作品のお知らせ】アミール・ナデリ監督初期の傑作『タングスィール』

「特集上映 アミール・ナデリ」にて、アミール・ナデリ監督作品『タングスィール』の追加上映が決定いたしました! 本作品は、日本初上映となります(日本語字幕のみ)。
11月25日(日)9:50より、有楽町朝日ホールにて上映いたします。
チケットは、11月20日(火)10:00より、セブンチケットで発売中です
チケット

『タングスィール』Tangsir
イラン / 1973年 / 114分
監督:アミール・ナデリ(Amir NADERI)
狡猾な商人たちの企みによってその全ての財産を奪われた男の復讐を描くナデリの監督第3作。鮮烈なバイオレンス描写が全編に炸裂する。1970年代イラン映画のスター、ベヘルーズ・ヴォスーギが怒りに燃える主人公を演じ、公開当時大ヒットを記録した。
※日本初上映、日本語字幕のみ
「『タングスィール』Tangsir」作品詳細

【どなたでも参加できます!】フィルメックス作品の批評を一般公募しています!国際批評フォーラム「映画批評の現在と未来を考える」開催中!

国際批評フォーラム「映画批評の現在と未来を考える」

東京フィルメックスでは、これまでに現代における映画と社会の関わりを探ってきました。今年は、先ず第1回の批評フォーラムでは、新聞の映画記者にお集りいただき、日本の映画批評の現在地を検証します。

第2回目では、海外の識者として、フランスから映画評論家でカンヌ映画祭批評家週間ディレクターのシャルル・テッソン氏を招き、講演を行ないます。

そして昨年同様、第19回東京フィルメックスの上映作品を鑑賞後、書かれた批評を一般から公募します。映画祭の最終日には3回目として、ふりかえりを行い、講師から講評していただきます。優れた批評は、映画祭期間終了後に、公式サイトで公表し、この国際批評フォーラムのレポート掲載と併せて、批評について考える機会を広げることも目指します。

第1回「ラウンドテーブル:映画担当新聞記者と語る」
日時:11/18(日)12:00-14:00
場所:有楽町朝日スクエア
登壇者: 藤井克郎(産経新聞)、石飛徳樹(朝日新聞)、勝田友巳(毎日新聞)、古賀重樹(日本経済新聞)、恩田泰子(読売新聞)

第2回「シャルル・テッソンによる基調講演」
日時:11月22日(木)18:30-20:00
場所:有楽町朝日スクエア
※日本語通訳付:
講演:シャルル・テッソン(フランス、映画評論家、カンヌ映画祭批評家週間ディレクター)*Charles TESSON

第3回「ふりかえりと合評会」
日時:11月25日(日)12:20-13:20
場所:有楽町朝日スクエア
登壇者:古賀重樹(日本経済新聞)、齋藤敦子(字幕翻訳家・映画評論家)

この国際フォーラムの一環として、第19回東京フィルメックスの上映作品を鑑賞して書かれた批評を一般から公募します。

11月18日(日)と11月22日(木)に開催された国際批評フォーラムを受けて、フィードバックを実施します。一般から応募のあった批評の中から、映画祭事務局が事前選考を行ない、最終選考に進出した批評について講師2名に講評を述べていただきます。

優れた批評は、映画祭期間終了後に公式サイトで公表し、この国際批評フォーラムのレポート掲載と合わせて、広く批評について考える機会を広げることも目的とします。

◎批評投稿規定

対象作品:第19回東京フィルメックス上映作品(部門は不問)

内容:日本語であれば批評の形式は自由です(複数の上映作品や、映画祭上映作品以外と関連させて批評してもかまいません)。
文字数:2,000字以内

以下の必要事項を記入した上で、Word形式の原稿ファイルをEメールに添付し、メール本文にも同じ原稿を貼付して送信ください。
尚、提出された原稿の修正や変更・差替えはお受け出来かねますので、ご容赦ください。
————————
・必要記入事項
1、氏名:
2、ペンネーム(希望する場合):
3、メールアドレス:
4、25日(日)12時20分から開催されるフィードバックに参加可能か:出席/欠席/未定
5、映画祭の公式サイトへの掲載になった場合:同意する/同意しない

送信先:info@filmex.jp

投稿締切:2018年11月22日(木・祝)23:59

【どなたでも参加できます!】Talents Tokyo 2018 <オープン・キャンパス・デー>のご案内

オープン・キャンパス

「海外セールスと国際共同製作——一般的な傾向とアジア映画に焦点を当てて——」

日時:11/22(木)13:00-14:00 場所:有楽町朝日スクエア

講師:ジュリエット・シュラメック氏(MK2 Films, マネージング・ディレクター)

 

*英語、日本語通訳

 

Talents Tokyo 2018 Open Campus

Nov. 22th (Thu) 13:00-14:00

<International sales and coproductions: general aspects and Asian focus>

Venue: Yurakucho Asahi Square

Speaker: Juliette SCHRAMECK (Managing Director, MK2 Films)

 

公開プレゼンテーション

日時:11/22(木)13:00-14:00
場所:有楽町朝日スクエア

*英語、日本語通訳

 

Talents Tokyo 2018 Open Presentation

Nov. 22th (Thu) 14:30-17:30

Venue: Yurakucho Asahi Square

 

入場無料、事前申込制、同時通訳有り。

お申込は、 https://goo.gl/2oDMnn

締切;11/16(金)

「フィルメックス新人監督賞 supported by 木下グループ」応募要項

「フィルメックス新人監督賞 supported by 木下グループ」、同時募集:シナリオ賞 応募要項

応募期間:2018年12月1日から2019年1月31日
公式サイト:近日公開予定
https://new-directors.jp/

【フィルメックス新人監督賞・シナリオ賞とは】
撮影機材も編集方法もデジタル化が進み、誰もが簡単に映画を作れるようになりましたが、日本映画界の次代を担う新しい才能は、 まだまだ活躍する場を与えられていないのが現状です。
自主映画の映画祭などで賞を獲った後、どうすれば彼らが商業映画に進むことが出来るのか。ストーリーとアイデアがあっても、それを具現化する資金や術がない人たちは夢を実現出来ないのか。そんな才能溢れる若いクリエイターにむけて、我々は明確な道しるべを提示するために立ち上げられた<木下グループ新人監督賞>を継承し、<フィルメックス新人監督賞・シナリオ賞>として実施します。
プロ・アマ問わず、現実的な映画化を念頭においた企画を募集し、新人監督賞のグランプリ受賞作品は木下グループのバックアップにより製作・配給されます。

主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
特別協賛:木下グループ

<受賞作品は>*シナリオ賞は、3の賞金を授与しますが、映画化については確約するものではありません
1.劇場公開に向けて開発!
配給会社を持ち、数多くの映画に参画する木下グループが劇場公開にむけての企画開発をバックアップします。映画化が実現した作品はキノフィルムズが配給いたします。
2.5,000万円を上限とした製作費!
商業映画としてのクオリティを確保するための適正な予算を設定し、木下グループのプロデュースにより製作します。
3.映画製作費とは別に賞金を授与!
<グランプリ1本 賞金50万円、準グランプリ最大3本 賞金各25万円>を授与します。この賞金は映画製作費とは別に支払われます。

 

【募集内容・条件】

応募条件:
A、新人監督賞
長編映画(実写)の企画書を募集します。
原則として商業映画デビューとなる監督を対象としますが、全国公開実績延べ20スクリーン以下、興行収入500万円以下でしたら、公開実績があってもそれが1作であれば応募は可能です。
プロデューサーによる応募の場合は、同企画における監督が決定していることが条件です。
B、シナリオ賞
長編映画(実写)の未発表のオリジナル・シナリオを募集します。
AB共通:
プロアマ、年齢、性別、国籍、など一切の制限はございません。
ただし企画書、脚本は、日本語のものに限ります。
また、他の映画祭、コンクールに既出の企画でも応募可能ですが、その場合は既出の映画祭、コンクールの応募要項に準じてください。

詳しくは、後日公開する公式サイトに掲載の応募方法をご確認下さい。

お問い合わせメールアドレス:info@filmex.jp

上映スケジュール更新しました

本日、コンペティション(10作品)、特別招待作品(16作品)、特集上映 アミール・ナデリ(4作品)のスケジュールを発表致しました。
なお、チケットの発売は11月3日(土・祝)となります。ゲストの来日情報につきましては、お待たせしておりますが、改めて本欄で発表させていただきます。
スケジュール

【レポート】第19回東京フィルメックス、ラインナップ発表記者会見

2018年10月4日
第19回東京フィルメックスのラインナップ発表記者会見が行われました。

10月4日、ゲーテ・インスティトゥート東京にて第19回東京フィルメックスのラインナップ発表記者会見が行われ、市山尚三東京フィルメックス・ディレクターが登壇した。まず、市山ディレクターから、長らくフィルメックス支援の中心的役割を果たしてきたオフィス北野による支援打ち切りに伴い、各方面から心配の声や激励が寄せられたことについて謝辞が述べられ、新たに木下グループの支援のもと、新体制でのフィルメックス開催の運びとなったことが報告された。

本年のフィルメックスでは、コンペティション作品10本、特別招待作品16本、「特集上映アミール・ナデリ」で4本、計30本(現時点)が上映される。また、国際批評家フォーラム、映画の時間プラスでの上映など、様々な関連イベントも予定されている。

コンペティション部門には、新進気鋭の作家たちの独創的な作品が揃う。フィルメックスのコンペ選出初となるトルコ作品『シベル』をはじめ、カザフスタン出身の主演女優がカンヌ映画祭最優秀女優賞を受賞した『アイカ』、ロヒンギャ難民の問題を扱った『マンタレイ』、タレンツ・トーキョー修了生が手がけたロカルノ映画祭金豹賞受賞作『幻土(げんど)』、力強い構成力でストーリーに引き込む『幸福城市』、フィルメックスのコンペではおなじみのイン・リャン監督の新作『自由行』、ウォン・カーウァイがプロデュースを手がけたペマツェテン監督の『轢き殺された羊』、圧巻のワンカット3D映像に加えてタン・ウェイやシルヴィア・チャンが出演する『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)』、自らの命を絶った若き監督のデビュー作であり遺作の『象は静かに座っている』、是枝裕和監督や西川美和監督の助手を務めた広瀬奈々子監督がオリジナル脚本で挑む『夜明け』が選出された。

審査委員長には『スモーク』(’95)などで知られるウェイン・ワン監督を迎え、審査員は、昨年のコンペティション部門で『殺人者マルリナ』が最優秀作品賞に輝いたモーリー・スリヤ監督、イラストレーターでアートディレクターのエドツワキさんのほか、あと2名(後日発表)が務める。市山ディレクターによると、ウェイン・ワン監督も今春の騒動を知りフィルメックスの先行きを案じておられたひとりで、「ウェイン・ワン監督からは何かできることがあれば言ってくださいと言われたので、審査委員長をお願いしたところ、快諾していただいた」というエピソードも明かされた。

特別招待作品には実績のある気鋭の作家たちによる多彩な作品が並び、特に日本から6作品が紹介される。オープニングを飾るのはホン・サンス監督の新作『川沿いのホテル』、クロージング作品にはジャ・ジャンクー監督の『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト(原題)』。ほかに、アモス・ギタイ監督が現在のイスラエルとパレスチナを映し出す長編『エルサレムの路面電車』と短編『ガザの友人への手紙』、クメール・ルージュによる暗黒の支配を一貫して描くリティ・パン監督の『名前のない墓』、坂本龍一が音楽を担当したツァイ・ミンリャン監督の『あなたの顔』、ホン・サンス監督のもうひとつの新作『草の葉』など、フィルメックス常連ともいえる顔ぶれが揃う一方で、意外にもフィルメックスでは初お目見えのブリランテ・メンドーサ監督がドゥテルテ政権の麻薬取締政策を題材にした『アルファ、殺しの権利』も上映される。日本映画としては、豊田利晃監督による小笠原を舞台にしたドキュメンタリー『プラネティスト』をはじめ、東日本大震災後の人間関係を詩情豊かに描く篠崎誠監督の『共想』、福島とハワイの意外な結びつきに注目した中江裕司監督のドキュメンタリー『盆唄』、先ごろサン・セバスチャン国際映画祭にて最優秀新人監督賞を獲得した奥山大史監督の『僕はイエス様が嫌い』も上映される。

記者会見でゲストとして登壇した奥山監督は、大学卒業間近の今年2月に本作を撮影し、卒業後、会社に勤務しながら編集を行って完成させた。サン・セバスチャン国際映画祭での反応を訊かれると、「キリストを扱っているため、カトリック教国でどのような反応があるか不安だったが、みなさん面白がってくれた」と現地での手応えを語った。本作の劇場公開は来年以降となる予定で、年内に国内で上映されるのはフィルメックスのみとなる。

さらに「特集上映 アミール・ナデリ」と題して、ナデリ監督の初期作品『ハーモニカ』(’74)、『期待』(‘74)、ナデリ監督が脚本を執筆したマイケル・B・ジョーダン出演作『華氏451(2018)』、新作の『マジック・ランタン』が上映される。

本年で9回目の映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」も引き続き開催され、選りすぐりの15名のタレンツたちに期待が寄せられる。なお、本事業のプログラムは非公開だが、公開イベントとして11月22日(木)には「オープン・キャンパス」が予定されている。

また、フィルメックスでは、木下グループが掲げる映画業界の新しい才能の発掘という理念を継承し、「フィルメックス新人監督賞・シナリオ賞」を創設し、企画の応募を受け付ける。応募要項は11月1日に開設される公式サイトを確認されたい。

第19回東京フィルメックスは11月17日(土)から25日(日)まで、有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日比谷、有楽町スバル座(11/17、11/18のみ)にて開催される。チケットの発売は11月3日(土・祝)。有楽町朝日ホールでの上映回はセブンチケットでの取り扱い、TOHOシネマズ日比谷での上映回はインターネットチケット販売vitまたはTOHOシネマズ日比谷チケットカウンターでの発売となる。詳細は、公式サイトにて確認されたい。

文:海野由子、写真:白畑留美