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【レポート】『素敵なダイナマイトスキャンダル』Q&A

第19回東京フィルメックスの開催に合わせ、有楽町スバル座で多様な観客に向けて実施された上映会「映画の時間プラス」 。11月17日(土)には、『素敵なダイナマイトスキャンダル』が聴覚障がい者向け日本語字幕付きで上映された。本作は母親が隣家の青年と不倫の末、ダイナマイト心中した体験を持つ雑誌編集者・末井昭さんの自伝的エッセイを映画化したもの。上映後のQ&Aには冨永昌敬監督が登壇した。

冨永監督が原作を読んだのは30代前半。オダギリジョーさん主演の『パビリオン山椒魚』(06)で長編商業映画デビューを果たし、続く『コンナオトナノオンナノコ』(07)を発表した頃だ。自主映画の制作とは勝手が違うことから壁にぶつかり、「プロにならなくては」と葛藤していた時期だという。「もっと早く読んでいればと後悔しました。末井さんはグラフィックデザイナーを目指していたものの、紆余曲折を経てキャバレーの看板を描き、やがてエロ雑誌の編集者になった人。いわば〝素人〟から出発し、自分のやり方を確立している。慰められると同時に、これ位やらないといけないと刺激を受けました」と冨永監督。だからこそ、この作品は「若いクリエイターにも観てもらいたい」という思いがある。末井さんの半生を映画にしたいと考えた冨永監督は、直接本人に会いに行った。実物の末井さんは想像の通り、何を考えているか分からない飄々とした人物で、「演じるとしたら柄本佑さんしかいない」とすぐに頭に浮かんだという。

観客からはまず、眼鏡が汚れている人物が多く登場する理由について問われた。冨永監督は「衣装合わせのときに、末井さんの本の記述を思い出したんです」と説明する。末井さんはキャバレーの看板を描いていた頃、理想と現実の自分のギャップに悩んでいた。しかし、高度経済成長期の最中、死ぬ物狂いで働くキャバレーのマネージャーやホステスたちの姿を目の当たりにする。彼らは服が汚れていようが、眼鏡が壊れようが、怪我していようが平然と仕事をしていたのだ。「それを描写するために新たな場面をつくるよりも、主人公の〝敵〟となる人物に汚れた眼鏡をかけさせ、体のどこかを怪我している設定にしたら、画的に分かりやすいと考えました」。とはいえ、やり過ぎたとの思いもあるようで、「本当は気付かれないくらい、さり気なくやりたかった」と話し、会場の笑いを誘った。

また、「クリエイターとしての末井さんに共感する部分はあるか」との質問には、
「末井さんの創造性が最も発揮されたのは、過激な誌面表現をめぐる警察との攻防だと思う。ルールに抵触するなら違う方法で読者を楽しませよう、と考えるのが得意だった」と答え、その精神は映画づくりにも通じると語った。「お金や時間がないときに、自分のやりたいことを表現するにはどうすれば良いか。次のアイディアを考えるきっかけでもあり、楽しい瞬間でもあります」

『素敵なダイナマイトスキャンダル』 は11月9日より、Blu-ray&DVDが販売されている。冨永監督が影響を受けたという末井さんの半生。この作品を観た人にとっても、人生を変える起爆剤となるかもしれない。

(文責:宇野由希子 撮影:明田川志保)


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