第22回東京フィルメックス受賞結果
第22回東京フィルメックス・コンペティションの審査員は以下の作品に賞を贈ります。
【第22回東京フィルメックス コンペティション 受賞結果】
【最優秀作品賞】
『見上げた空に何が見える?』What Do We See When We Look at the Sky?
監督:アレクサンドレ・コべリゼ(Alexandre KOBERIDZE)
ドイツ、ジョージア / 2021 / 150分
副賞として賞金50万円が監督に授与されます。
授賞理由;
この、クタイシという街についての美しいポートレイトにおいて、カメラは人々や動物たち、木々や雨どいなど存在するすべてのものに平等な視線を注ぐ。一方的な暴力装置にもなりうる映画=カメラを使いながら、本作品では被写体とフェアな関係を結ぶことに成功し、イメージは映画と世界との対話へと開かれてゆく。魔術のように突拍子もないフィクションは単に嘘の世界を信じさせるためにではなく、現代において断ち切られた世界への信頼を再び回復させるために機能するだろう。『見上げた空に何が見える?』と問うこのユニークな挑戦は、映画の未来に一筋の光を見せてくれる。
【最優秀作品賞】
『時の解剖学』Anatomy of Time
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン(Jakrawal NILTHAMRONG)
タイ、フランス、オランダ、シンガポール / 2021 / 118分
副賞として賞金50万円が監督に授与されます。
授賞理由;
『時の解剖学』は、登場人物の過去と現在、さまざまな時間の層が、魅力的に挑戦的な方法で絡み合わされ、時が止まったかのようなシークエンスに突然残酷で暴力的な歴史の要素が織り合わされ、流麗な映画空間を創り出し、それが現在と過去の境界線をこえる。老人の肉体のイメージと歴史によって刻まれた痕跡を通して、私たちは具体的なたしかな手触りで時間を体験し、その精神性も感じとる。登場人物たちの動機や背景は必ずしも十分に説明されず謎のまま残される。ときには不思議な印象を与え、観客に自由に解釈する余地をあたえてくれる。わたしたちは現実と非現実が共存するところにいざなわれ、物語のかけらをつなぎ合わせてそれぞれの観点から捉え直すよううながされる。アンビバレントな要素、自然、登場人物たちや状況もまたこの映画の魅力である。
■第22回東京フィルメックス コンペティション審査員:
諏訪敦彦 ( SUWA Nobuhiro / 日本 / 映画監督 )
ウルリケ・クラウトハイム ( Ulrike KRAUTHEIM / ドイツ / ゲーテ・インスティトゥート東京 文化部 コーディネーター )
オリヴィエ・デルプ ( Olivier DELPOUX / フランス / アンスティチュ・フランセ日本 映像・音楽部門統括マネージャー )
小田香 ( ODA Kaori / 日本 / 映画監督・アーティスト )
■観客賞
『偶然と想像』Wheel of Fortune and Fantasy
監督:濱口竜介(HAMAGUCHI Ryusuke)
日本 / 2021 / 121分
■学生審査員賞
『見上げた空に何が見える?』What Do We See When We Look at the Sky?
監督:アレクサンドレ・コべリゼ(Alexandre KOBERIDZE)
ドイツ、ジョージア / 2021 / 150分
授賞理由;
カメラに映るすべてのものが、私たちに何かを語りかけてくるように感じ、圧倒されました。足元だけで映される男女の出会いや、サッカーに夢中なクタイシの人々、街で生きている犬たちなどが、愛に溢れた視点で描かれ、とても美しく感じました。私たちが何気なく生活している日常の愛おしさに気付かされました。描かれていることも、描き方も、本当にとても素敵でした。
● 学生審査員:
堀内友貴(HORIUCHI Yuki / 東放学園映画専門学校)、福岡佐和子(FUKUOKA Sawako / 日本大学芸術学部)、栁川碧斗(YANAGAWA Aoto / 慶應義塾大学)
世界的に大きな注目を集めるアジアからは、才能ある新鋭たちが次々と登場しています。そんなアジアの新進作家が2020年から2021年にかけて製作した作品の中から、10作品を上映します。また4名からなる国際審査員が、最優秀作品賞と審査員特別賞を選び、11/7(日)に行われる授賞式で発表します。
(日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作)
『見上げた空に何が見える?』 What Do We See When We Look at the Sky?
ドイツ、ジョージア / 2021 / 150分
監督:アレクサンドレ・コべリゼ ( Alexandre KOBERIDZE )
街で偶然出会い、一目で恋に落ちたリザとギオルギ。しかし彼らの外見は、不思議な力によって翌日に完全に別人になってしまう……。ジョージアの俊英アレクサンドレ・コベリゼの遊び心溢れる長編第2作。ベルリン映画祭コンペティション部門で上映された。
イスラエル、フランス / 2021 / 101分
監督:エラン・コリリン ( Eran KOLIRIN )
結婚式に出席するため、パレスチナの故郷の村に戻ってきたサミ。しかし結婚式の後、村はイスラエル兵によって完全封鎖され、彼は家族と共に閉じ込められてしまう。『迷子の警察音楽隊』で知られるエラン・コリリンの『山のかなたに』以来となる長編4作目。
イラン / 2021 / 93分
監督:パナー・パナヒ ( Panah PANAHI )
ロードトリップに出ている4人家族と1匹の犬。大はしゃぎする幼い弟を尻目に、他の3人は心に口には出せない何かを抱えている……。イランの巨匠ジャファル・パナヒの息子パナーの長編デビュー作。カンヌ映画祭監督週間でワールドプレミア上映された。
インド / 2021 / 74分
監督:P.S.ヴィノートラージ ( P.S. VINOTHRAJ )
気が短く暴力的な父親とその寡黙な息子。バスに乗り損ねた二人は、灼熱の中、広大な荒野を家に向かって歩き始めるが……。タミル・ナードゥ州マドゥライ出身の俊英P.S.ヴィノートラージの長編デビュー作。ロッテルダム映画祭でタイガー・アワードを受賞した。
タイ、フランス、オランダ、シンガポール / 2021 / 118分
監督:ジャッカワーン・ニンタムロン ( Jakrawal NILTHAMRONG )
1960年代後半と現代のタイ。一人の女性の人生が時を隔てて描かれ、そこに国家の負の歴史が交錯する。『消失点』に続くニンタムロンの長編第2作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア上映された。
カンボジア、フランス、中国、カタール / 2021 / 90分
監督:ニアン・カヴィッチ ( NEANG Kavich )
1963年にプノンペンに建造された集合住宅「ホワイト・ビルディング」。建物の取り壊しの期日が近づく中、それまで青春を謳歌していた青年と、その家族の姿が描かれる。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア上映された。
インドネシア、シンガポール、フランス、オーストラリア / 2021 / 95分
監督:カミラ・アンディニ( Kamila ANDINI )
高校の最終学年に通うユニ。彼女は自分自身に多くの可能性を見出しているが、ある出来事を機に、それが急激に霞んでいってしまう……。10代の少女が直面する葛藤を描いた、カミラ・アンディニの『見えるもの、見えざるもの』に続く3作目の長編作品。
中国 / 2021 / 123分
監督:ウェイ・シュージュン ( WEI Shujun )
映画の製作チームが撮影準備のために湖南省にやって来たことから派生する物語を3部形式で描く。映画の製作が地方の田舎町に引き起こす幾つかの「波紋」が多面的に切り取られている作品。カンヌ映画祭監督週間でワールドプレミア上映された。
中国 / 2021 / 110分
監督:クィーナ・リー ( Queena LI )
ある島の灯台の光の中でのみ繁殖するとされるロブスター。チベットのラサで出会ったその聖なるロブスターを故郷に帰すため、一人の若い女性が車で旅をするロードムービー。ミュージシャンのリア・ドウが主演を務め、映画の音楽も担当している。
日本 / 2021 / 97分
監督:奥田庸介 ( OKUDA Yosuke )
中華料理店で働く男とその同僚の女、そして彼女の高校生の息子。小劇団の女と漫画家志望の男。彼らの人生は交錯し、やがて意外な結末を迎える。『東京プレイボーイクラブ』と『クズとブスとゲス』が東京フィルメックスで上映された奥田庸介の新作。