映画祭の大切な役割の一つに、市場原理を貫徹すれば不要となってしまうような作品を擁護する、ということがあると思う。つまり、芸術的価値は高くとも商業的には厳しい作品をきちんと評価し、観客やプレスの注意をそこに集める、という役割だ。しかし、いかなるジャンルでもそうだが、そうした種類の作品への理解を支えているのはある程度以上の量的・質的な受容体験であり、そのことは逆に言うと、受け手全体の数を限定することにもつながってしまう。つまり、受け手(観客やプレス)にとっても、ある程度以上の時間と労力をその分野(ここでは映画)に投資しているということが、多かれ少なかれ前提になってくるわけである。しかも、そういった価値を共有できる受け手の層自体が決定的に収縮していることは間違いなく、また、それはある程度、世界的な傾向だとも言えるのではないかと思う。
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ニュース/事務局からのお知らせ
「巨匠が描いた花街の女たち」 英語字幕付き上映会 開催の御案内
今月17日より19日までの3日間、独立行政法人国際交流基金主催のもと、英語字幕付き日本映画上映会第5弾の企画として、「巨匠が描いた花街の女たち」と題した特集上映が開催されることになりました。東京フィルメックスは、企画・運営協力として関わっています。赤坂・国際交流基金フォーラムを会場にして、全6本を全て英語字幕付きでご紹介いたします。
スクリーンで上映される機会の少ない名作を、日本に在住する外国の方々に触れていただくとともに、日本の方々にも<再発見>していただける貴重な機会になっております。
ぜひ、会場までお越しください!
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topic/movie/fsp-5.html
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第56回ベルリン映画祭 開催
2月9日から19日にかけて開催される第56回ベルリン国際映画祭の全容が先日発表された。
最も注目を集めるコンペティション部門の長編作品は全部で26本。その内19本が金熊賞を争い、残る7本はコンペ外作品として上映される。開催国ドイツ絡みの作品を始め、欧米諸国の作品がラインアップの大半を占め、またオスカーを狙うアメリカ映画が数本含まれているのはほぼ例年通り。他の地域に目を転じてみると、アジアからは、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督(タイ)・浅野忠信主演作品『Invisible Waves』、香港のパン・ホーチョン(彭浩翔)監督(『AV』などがこれまで東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映されている)の新作『Isabella』、そしてイランからの2作品、Rafi Pitts監督の『Zemestan(It's Winter)』とジャファール・パナヒ監督の『Offside』、そしてコンペ外作品として、中国のチェン・カイコー(陳凱歌)監督の『PROMISE』がそれぞれ選出されている。
またシャーロット・ランプリングが委員長を務める審査員8人には、アメリカのマシュー・バーニーのほか、アジアからは韓国の女優イ・ヨンエがあたる。
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