11月21日、コンペティション作品『バーニング・バード』の上映が行われ、上映後のQ&Aにサンジーワ・プシュパクマーラ監督が登壇した。デビュー作『フライング・フィッシュ』(2011、第12回東京フィルメックスで上映)に続く三部作の2作目となる本作。前作同様、スリランカ内戦の中で生きる人びとの過酷な運命を描いた。東京フィルメックスには2度目の参加となる監督は、「大好きな映画祭。ここで上映していただけることに心から感謝します」と挨拶した。
最初に、司会の市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターが本作の企画の始まりについて質問した。
この作品の舞台となるのは1989年のスリランカ。1977年生まれのプシュパクマーラ監督の少年時代に当たる。監督は11歳の時に父をなくし、8人兄弟の長子だったため、母と2人で家族を支えることになったという。その頃は内戦のさなかで、政府による残虐行為が激化していた。監督は「少年期の個人的体験と当時の政治状況を結び合わせ、この映画の企画が生まれました」と語った。
続いて、観客との質疑応答へ。
燃えさかる鳥、というタイトルにこめた意味について訊かれると、監督は「この作品に登場する家族は、好きな人生を生きることができない。空を自由に飛ぶことができない鳥になぞらえました」と説明した。
主人公の家族の暮らす家が印象的だった、という観客からは「頼る者もなく孤独な主人公の姿と重なるようで印象的だったが、意識したのか」という質問が上がった。周囲に建物もなく、木々もまばらな平地にぽつんと立っている家は、撮影用に建てたものだという。「私はすべての細部を、意図を持って作り込んでいます。それで、製作に4年もかかってしまいました」と監督。すべて監督の故郷の村でロケが行われ、予算に限りがあったため、自宅も使ったという。
出演者の力強い演技に称賛の声が寄せられると、監督は「役者たちに関心を持っていただき、ありがとうございます」と応じた。役名とともにクレジットされている登場人物はプロの俳優だが、一家の子どもたちは、年の離れた長女以外は村で見つけてきたそう。自らのヴィジョンにもとづき徹底して細部を作り込むというプシュパクマーラ監督だが、「役者に対してそれを押し付けるということはしませんでした」と、大部分は演者の裁量に任せたと明かした。
作中、夫を失くし困窮することになった主人公は、ヒンドゥー教の神であるガネーシャのお守りを身につける。物語の中でこのお守りは印象的に用いられているが、宗教的な背景について訊かれると、監督は「彼女は仏教徒ですが、厳しい生活の中でヒンドゥー教にも救いを求めたのです。ヒンドゥーの神々は、ブッダよりも具体的な願いを叶えてくれると考えられているからです。これは、現代ではそれほど珍しいことではありません」と説明。しかしお守りに対する彼女の行動は、神の加護について軽く考えているわけではないということを示している、と語った。
最後に、スリランカ出身という観客から「ショッキングな作品だが、当時のスリランカの人びとが置かれた状況が見事に描かれていた。東京で観られるのは素晴らしいこと。この作品を作ってくださって深く感謝します」とのコメントが寄せられた。三部作の締めくくりとなるであろうプシュパクマーラ監督の次回作にも期待したい。
(取材・文:花房佳代、撮影:明田川志保)