11月22日(木)、有楽町朝日ホールにて特別招待作品『 8人の女と1つの舞台』が上映された。本作は、 舞台復帰をめざすかつてのスターなど8人の女性たちが繰り広げる バックステージを描く。上映後にはスタンリー・クワン監督が登壇しQ&Aに臨んだ。 フィルメックスで上映された監督の作品は本作で3作目とな るが、監督本人の来場は初めてだ。クワン監督は、「 今回はなんとしても来ようと思いました。 このように大きな劇場で、皆さんに観ていただき、 本当に嬉しく思います」と挨拶した。
市山尚三東京フィルメックス・ ディレクターから本作の制作のきっかけを尋ねられたクワン監督は 、劇中に登場した劇場について語り始めた。その劇場は、 香港のランドマークであるシティホール。 3年前に香港政府がこのホールを壊すと発表し、 多くの人がニュースを聞いて猛反対したそうだ。クワン監督は、 シティホールが多くの人にとって「映画祭、舞台、音楽、 展覧会を楽しむとても神聖な場所」であると捉え、 シティホールへの思いを本作に込めたことを明かしてくれた。 幸い、シティホールを壊す計画はなくなり、 一時的に閉鎖し全面的に改修されることになったそうだが、「 英国統治時代の名残が改修後に全く別ものになるのではないかと心 配」というクワン監督。
ここ10年ほど映画を撮っていなかったクワン監督だが、 その理由について、 香港映画人と中国との関わりを踏まえて説明した。 90年代半ばから終わりにかけて、香港の映画監督たちは、 映画に対する真摯な姿勢、確立された映画システム、 ジャンルの専門性などが買われ、 中国に招かれて中国で映画を撮るようになったそうだ。ただ、 中国で香港映画を撮るわけではないので、 なかなか環境に馴染めず、クワン監督は、監督としてではなく、 中国の若手監督を助けるプロデューサーとして映画と関わっていた という。「 シティホールが壊されるというニュースを聞いて何かをしなければ と思い、映画を撮るために中国側からも投資を募ったところ、 結果的に上手くいきました。というのも、 合作は必ずしも中国で撮らなくてもよく、 そのおかげで本作が出来上がったのです。 私はやはり監督をするのが大好きです」と、 監督として映画に関わる喜びを語ったクワン監督。
市山尚三東京フィルメックス・
ここ10年ほど映画を撮っていなかったクワン監督だが、
また、本作には「ウィリー・チャンさんに捧げる」 という献辞が添えられているが、ジャッキー・ チェンさんの作品のプロデューサーとして知られるウィリー・ チャンさんとの縁について話が及んだ。ウィリー・チャンさんは、 クワン監督の『ルージュ』(’87)と『ロアンリンユイ 阮玲玉』(’91)のプロデューサーを務めていたそうだ。 長年現場でやってこられたウィリー・チャンさんは、ジャッキー・ チェンさんとの仕事がなくなってから退屈だったのかもしれないと 推察したクワン監督。本作を撮る前に、 名前だけでもプロデューサーとしてクレジットして欲しいと依頼さ れたため、投資者とも相談し、理解を得ていたそうだ。 ところが残念なことに、 本作のクランクイン前に亡くなられてしまったという。
さらに、本作ではLGBTを扱っているが、 今後もLGBTを扱うのかという質問が挙がった。 これまでの作品では女性を描くことが多かったクワン監督だが、 自身をフェミニストと称しているわけでもなく、「 すべては登場人物の人間性からスタートしている」と説明。 LGBTのテーマは、『藍宇~情熱の嵐』(’01)のほか、『 ホールド・ユー・タイト』(’98)でも扱われているが、 クワン監督は「登場人物に合わせて必要に応じて描いています。 描きたい題材の中にたまたま同性愛者がいるという流れなのです」 と述べた。
最後に、「もう一度、言わせてください。 私は監督をするのが大好きです」と、 クワン監督の力強い言葉で質疑応答が終了。 久しぶりにメガホンを取ったクワン監督の作品を心待ちにしていた 観客からは大きな拍手が贈られた。
さらに、本作ではLGBTを扱っているが、
最後に、「もう一度、言わせてください。
取材・文:海野由子 撮影:吉田(白畑)留美