今年は公式サイトが充実していました。期間中に時間を空けずに上映後の監督と観客のみなさまとのQ&Aをまとめてアップしたり、また慶應義塾大学DMC機構のご協力を得て、動画配信も試み、臨場感あふれる公式サイトを演出できました。トークイベントなどをまとめるのは一苦労ですが、良いスタッフが力を合わせて実現してくれました。ヒット数も1万件を超える反響となり、事務局スタッフ一同、ビックリ喜んでおります。
また開映前の場内でも過去の記録映像を部分的にご紹介しておりました。改めて素晴らしい作品に恵まれ、素敵な監督たちに、そして素晴らしい審査員のメンバーにご来日いただいた幸せな毎年が思い出されます。
特に今年は会期終了後、ボロボロになっている事務局にとびきりの情報が飛び込みました。ムン・ソリさまと「地球を守れ!」のチャン・ジュヌアン監督がクリスマスにご結婚されるという素敵な朗報です。お二人とも東京フィルメックスには別々にご来日いただいておりましたので、疲れた心と体に染み入る本当にうれしい吉報です。どうぞお二人とも末永くお幸せに。そしてますます良い作品をお作り続けてくださいますよう、信じております。そして願わくば、そのうちいつの日かお二人で東京フィルメックスにひょっこり遊びにいらしてくださいましたら、なんて、欲深な私たちはそんな日を切望しております。
ニュース/事務局からのお知らせ
上映回数について – 林 加奈子ディレクター (7)
フィルムセンターでの岡本喜八特集の場合のように、12本それぞれ2回ずつの上映が決まっている場合などのように、それで企画を進めている時は別として、新作のほうでは作品によって一回しか上映がないものが幾つか出てきてしまっています。私たちとしてもできることなら最低2回は上映したいところなのですが、これは現実的には枠の問題というよりも、作品の権利保有者から映画祭での上映許諾を得る時の条件として「一回上映」で、という場合があるのです。これは、この後に日本での配給会社が決まって公開する際に、その会社にとって東京フィルメックスで2回も上映していては良くないかもというご判断があるのかもしれません。
映画祭は期間中の上映がプレミアのため、期間前に試写などをすることが余り無いので、期間中の評判や盛り上がりで2回目3回目と上映を重ねるごとにお客様が増えていくというのが、美しい現象ではあるのですが、如何せん事務局の希望だけでは簡単に決行できないわけです。実際にカンヌでは、作品によっては公式上映が一回だけという作品もあります(でもマーケットでは何回も上映していますが)。また、ベルリン映画祭は、一般の観客が参加できる世界最大の国際映画祭ですが、全部で5回ほどの上映が行われている作品もあり、観客の人気の程が如実にうかがえます。
他の映画祭では、受賞作品を最終日にリピートする形式を採っているところもありますが、これについても、もちろん権利保有者には許諾を取らないとなりません。
収穫のイラン映画 – 林 加奈子ディレクター (6)
今年はコンペに3本、そして特別招待に2本、合計5本のイラン監督による作品を上映しました。イラン映画がどうしてそんなに多かったのかというお問い合わせもいただきました。答えは全くシンプルで、イラン映画に素晴らしい作品が多かったから、それに尽きます。
私たちは国のバランスとか散らばりとかを重要視していません。面白い映画を順番に選んで行きますので、結果イランが多かったわけです。確かに選考途中で出来る限り多くの作品を拝見するのは必須なのですが、実際イランよりも多く拝見できた他国の作品でも、良いと思えるものが無かったので残念ながらご紹介できなかった国もありました。香港や台湾を入れたいとか、タイや韓国から一本も無いのはおかしいとか、見た目の整然さを重視すると、結果的には妥協して「まぁこのくらいでもいいか」という作品をご招待しなくてはなりません。心底愛していない作品をプログラムに入れるのは、お客様を裏切ることになりますので、それは私たちには出来ません。
ただ、日本での配給会社が決まっている場合に公開時期などの関係で、東京フィルメックスでのジャパンプレミアが吉となって連動できればよいのですが、時期尚早という判断で、私たちがご紹介したくても上映できなかった作品もあるのは事実です。
今年はパラグアイから一本「ハンモック」という映画をご紹介しました。予算が厳しいのも忘れてこの作品は何としても上映したいと心が震えた一本でした。バフマン・ゴバディ監督の「半月」もサンセバスチャン国際映画祭でグランプリを獲る前に決めていたし、ジャ・ジャンクー監督の「三峡好人」もヴェネチアで金獅子賞が決まる前にオープニング上映を決定していましたので、今年は私たちにとってもサプライズだらけでした。
シネカノン有楽町でのレイトショーについて – 林 加奈子ディレクター(5)
今年のシネカノン有楽町のレイトショーは、入場者数が全体で昨年と比べて200人も増えるという現象が起こりました。みなさまご来場ありがとうございました。このレイトショーは、以前(2003年まで)は有楽町駅のすぐそばにあった銀座シネ・ラ・セットで行われていましたが、劇場の移転に伴い、東京フィルメックスも2004年よりシネカノン有楽町にレイトショー会場を移しました。
朝日ホールが夜9時以降は上映ができない、お借りできない事情がありますため、夜のレートショーの場として朝日ホールの上映後にも引き続きご覧いただけますように、タイムスケジュールを組んでございます。また、シネカノン有楽町は一般の映画館ですので、東京フィルメックスの期間中も興行として新作のロードショーがあります。この昼間の上映作品の後、入れ替えの時間の余裕を考慮して、上映のスケジュールを組むことになっています。
なるべく夜11時には上映が終了して電車でスムースにお客様にお帰りいただけますよう、スケジュールを組んでおりますが、作品によって上映時間の長さがそれぞれ違うという現実もございます。また夜の上映ですので監督との質疑応答のお時間は現実的に難しいのですが、監督が冒頭でみなさまにご挨拶をなさりたいとご希望があった場合には、少しのお時間でも一言お話いただいているのはご存知の通りです。いえ、監督によっては興奮して話が長くなる方もしばしばいらっしゃいますけれど。お仕事帰りにお立ち寄りいただくのに便利ということもあって、おかげさまで当日券の売れ行きが伸びるのもシネカノン有楽町のレイトショー上映の特徴でもあります。
シネカノン有楽町の入場のシステムについては、今回まで自由席制で運営しておりましたが、今年のようにお客様が増えますと、ご入場前に階段に並んでお待ちいただく事になりますので、それも心苦しく、劇場も座席指定制を採用していらっしゃる事もございますので、来年以降は東京フィルメックスの期間中でもシネカノン有楽町も座席指定にすべきかと、早速検討を始めております。
座席指定制へのご質問について – 林 加奈子ディレクター(4)
有楽町マリオン朝日ホールは、座席指定なのに開場時間が早まらないのは何故でしょうかと、アンケートでご指摘をいただきました。数年前から朝日ホールは座席指定の方法を取っており、これによって入場口の階段に開場前に並んでいただかずにご入場いただけるようになりました。でも、自由席と座席指定席のシステムにはそれぞれに良い面も不具合な面もあり、部分的に自由席にするような混合のシステムも検討してはみましたが、今のところは座席指定制を続けております。
実は開場まで時間がかかるのは、入れ替えの間に監督みずからによるプリントチェックのための映写をしているというシンプルかつ重要なわけがあります。お客様にはそれぞれの作品を、作り手である方が満足している状態でベストの形で上映したいという、東京フィルメックスのこだわりがあります。まぁ映画祭を運営する側にとっては、これはあたりまえの事でございます。毎日各回で別々のプリントでの上映が組まれていますので、しかもご来日の監督は上映前ギリギリにご到着することもあったり、映写チェック、字幕のタイミングチェックなど、会場整理と共に寸時の時間での確認作業をしています。さすがに監督たちもこだわりをお持ちですのでギリギリまで粘って調整してくださる監督もいらして、彼らのオーケーが出て、初めてご入場いただけるという流れなのです。
5人の審査員たち – 林 加奈子ディレクター(3)
審査員のみなさま5人は、今年も素晴らしいメンバーが揃いました。最終の審査会の後、やっぱりこの5人に依頼してよかったと心底実感しました。世代や性別、ポジションなどバランスを考えての5人でしたが、和気あいあいと仲良く審査をしてくださり、各自しっかり主張しながら徹底的に討論を重ねて、最終的にとても平和に、結論を出してくださいました。
よいチームだったことの証に、授賞式では最優秀作品賞と審査員特別賞のそれぞれを、一人が受賞結果を発表し、もう一人が賞状を授与してくださり、そして委員長が総評を述べられるという、5人が役割を分担した進行となりました。5分で終わるか5時間以上かかるものか分からない審査会ですが、最後にはそれぞれのアドレスを交換して連絡を取り合う約束までしていらっしゃって、喜ばしい限りの情景でした。改めて厳正なる選考を進めてくださいました5人の方々に、深く感謝申し上げます。
黒い衣装 – 林 加奈子ディレクター(2)
「オープニング・セレモニーの登壇者が黒い服で勢ぞろいしたのは何故でしょうか」と、外国のプレスの方からもご質問をいただきました。いえ、全くの偶然で、事前に打ち合わせをしたり、示し合わせたわけではありません。審査員の方々には「東京フィルメックスはご存知の通りカジュアルな映画祭ですので、民族衣装などで着飾る必要はございません」というお話はしていたのですが。結果的には、オープニング作品「三峡好人」のジャ・ジャンクー監督も、女優のチャオ・タオさんも黒い衣装でご来日ということになり、なんだか私たちもビックリしていた次第です。
確かに日本は冠婚葬祭のフォーマルには黒という習慣はありますが、まさか全員黒だったなんて。個人的には事務局スタッフは黒子に徹して、映画が最も輝くように上映をサポートしたいという気持ちは、確かにあります。悲しいかな服装には無頓着な性質なもので、ご指摘いただいても初めはピンと来ないくらいだったのですが。そのうち私も真っ赤なドレスでも着てニコニコ堂々としてステージへ出て行けるくらいに精進いたしますので(無理だと思います)、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。
映画祭を終えて – 林 加奈子ディレクター(1)
あっという間に師走に突入してしまいました。事務局スタッフにとってはつい先日まで夏だったのに、気が付いたら紅葉も深まっている今日この頃です。
会期が無事に終了し、たくさんのお客様にご来場いただきました。ゲストの監督たちもフェアウェルパーティーではご機嫌に歌ってくださった方もいらして、みなさんお元気にご帰国されました。ご協力、ご支援いただきましたみなさまに心からお礼申し上げます。またシャープなご質問をくださった観客のみなさまにも重ねてお礼申し上げます。観客のレベルの高さについては、世界の映画祭の中でも屈指と自負しております。みなさまに支えられて、またより一層のプレッシャーを痛感しながら、事務局スタッフ一同、より楽しんでいただける映画祭の企画・運営について切磋琢磨しながら邁進してまいります。どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。
公式サイトへのヒット数も大幅に増え、特に新しく挑戦したブロードキャストコーナーは1ヶ月の間に10,000件を超える盛況を記録しております。
せっかくの機会なので、これからしばらく期間中に皆様からお寄せいただいたアンケートでのご質問、ご指摘などにもお答えしながら、映画祭会期について振り返ってみたいと考えております。言い訳がましいことを書き連ねるつもりはありませんが、幾つかの選択肢の中でどちらかを選んで進めていかなくてはならない運営上の状況や、ごもっともなご意見とわかりながらも予算やお借りしている会場などの関係で、また一般の劇場公開と違った映画祭ならではの状況の中で、ギリギリの措置を講じている現状もありますため、映画祭の裏側についても少しご紹介できればと存じます。どうぞお付き合いの程お願い致します。
事務局だより – 林 加奈子ディレクター(13)
さぁ。いよいよ本日開幕の第7回東京フィルメックス。怖くて震えてしまいます。事務局では観客賞の投票箱など製作物の準備も着々と進んで、公式カタログも美しく完成しました。人手も荷物も増えてきて、いつもの事務局が狭く感じられます。
全ての作品は当日券もご用意しております。行き届いた映画祭を目指し、力を尽くします。プログラムと観客の質の高さが自慢の東京フィルメックス。映画が好きで好きでというお客様と一緒に映画の力を実感できる10日間。熱気の中で、多くの作品をご覧くださいますよう。
映画は一本一本それぞれの作り手の方が願いを込めて作った作品。私たち映画祭のスタッフは、それぞれの映画が一番輝くように、一番お客様に伝わるように、一番お楽しみいただけますように、一本一本を大切に、ご紹介申し上げます。
みなさま、会場にてお待ちしております。
事務局だより – 林 加奈子ディレクター(12)
期間中のトークイベントについて、ご紹介します。
まず、岡本喜八特集。京橋のフィルムセンターでは、18日と19日の上映後にトークの予定があります。雪村いづみさん、寺田農さんと寺島進さんに岡本演出の事などお話を伺います。
また、MARUNOUCHI CAFE, 丸の内3丁目の新東京ビルに素敵な憩いの場所がありまして、今年の東京フィルメックスでは、24日の午後にモーツァルト生誕250周年絡みの新作の監督をお招きして、トークイベントを2回に分けて行う予定にしています。
そして、おなじみのマリオン朝日ホールのスクエアBでも、祭日の23日と最後の週末25日(土)、26日(日)には、ゲストを招いてのトークを予定しております。公式サイトにお時間、ゲストなどの詳細が載っておりますので、ご確認のうえ、どうぞご来場ください。すべて入場無料です。
映画と共に作り手の生の声を、こじんまりした規模で十分に味わっていただきたいという願いを込めた企画です。お時間が許されれば、皆様からのご質問もお受けしたいと考えていますので、奮ってご参加ください。それぞれ予定人員を越えたところで締め切りますのでご注意を。お待ちしております。