第20回東京フィルメックス受賞結果
第20回東京フィルメックスコンペティション部門審査員は以下の作品に賞を贈ります。
【第20回東京フィルメックス コンペティション 受賞結果】
【最優秀作品賞】
『気球』 Balloon
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)
中国 / 2019 / 102分
副賞として賞金100万円が監督に授与されます。
授賞理由;
東京フィルメックスは過去にこの監督の傑作を評価していますが、この新作は彼の作品の中でも映画表現の新しいレベルに達しています。オープニングの遊びの視点から侯孝賢へのオマージュとなる美しいクロージング・シーンまで、本作品はチベットの特殊な難問を幅広い、洗練された観点で描いています。つまり仏教的信心と国の政策と個人の心理的要因のぶつかり合いを通して今日のチベット人の生活について多くを語っています。2019年のフィルメックス最優秀作品賞はペマツェテン監督の「気球」です。
【審査員特別賞】
『春江水暖』 Dwelling in the Fuchun Mountains
監督:グー・シャオガン(GU Xiaogang)
中国 / 2019 / 154分
副賞として賞金50万円が監督に授与されます。
授賞理由;
この勇敢で野心的な初監督作品は家族の物語と地方文化を正確にそして見事な文体で究めています。中国の古代のそして近代の伝統文化もそのストーリーテリングや映像で描写されそれでいて同時に現代の中国の映画文化の現代的な表現となっています。グー・シャオガンの初監督作品としては驚くべき出来栄えです。
【スペシャル・メンション】
『昨夜、あなたが微笑んでいた』 Last Night I Saw You Smiling
監督:ニアン・カヴィッチ(NEANG Kavich)
カンボジア、フランス / 2019 / 77分
授賞理由;
そこにある記憶を慈しむようにカメラと対峙させたこの映画は、決して過去を見つめる映画ではありませんでした。日本企業の買収によって数百の世帯が立ち退きを余儀なくされたホワイト・ビルディング。都市の発展や国や私企業の利益のために破壊される生活。それはやはり暴力なのです。そしてそれは今も再開発の進むあらゆる場所で起きているはずです。その現実をこの映画は静かに私たちに差し出してきました。
【スペシャル・メンション】
『つつんで、ひらいて』 book-paper-scissors
監督:広瀬奈々子 (HIROSE Nanako)
日本 / 2019 / 94分
配給:マジックアワー
授賞理由;
はじめに言葉ありき。言葉は神と共にあり、言葉は神であった……
本作品は古来から今日に至るまで人類の永遠の友である本の地位に対し称賛と敬意を示しています。
未来の人びとも本の紙を触ったり、匂いを嗅いだり、見たり感じたりし続けることができますよう。本は高貴な友です。私たちがそれを受け継ぐことができますように。
■第20回東京フィルメックス コンペティション審査員:
トニー・レインズ(審査委員長:Tony RAYNS /イギリス / 映画批評家、キュレーター、映画作家 )、べーナズ・ジャファリ( Behnaz JAFARI /イラン / 女優 )、操上和美( KURIGAMI Kazumi / 日本 / 写真家 )、サマル・イェスリャーモワ( Samal YESLYAMOVA / カザフスタン / 女優 )、深田晃司( FUKADA Koji / 日本 / 映画監督 )
■観客賞
『静かな雨』 Silent Rain
監督:中川龍太郎 (NAKAGAWA Ryutaro)
日本 / 2019 / 99分
配給:キグー
■学生審査員賞
『昨夜、あなたが微笑んでいた』 Last Night I Saw You Smiling
監督:ニアン・カヴィッチ(NEANG Kavich)
カンボジア、フランス / 2019 / 77分
授賞理由;
1つの場所と1つのカメラさえあれば映画ができます。
さり気なくも計算された監督のカメラは、映画の原点ともいえるその事実を証明してしまいました。
無限だと錯覚した日常が有限だと悟ったとき、私たちはカメラを手に取りそれをやはり永遠のものにできるのです。
映画が終わったとき、私たちはすぐにでも映画を撮りたいと思いました。
● 学生審査員:
渡邉安悟(東京藝術大学院)、北川未来(東京学芸大学)、木村翔武(慶應義塾大学)
世界的に大きな注目を集めるアジアからは、才能ある新鋭たちが次々と登場しています。
そんなアジアの新進作家が2018年から2019年にかけて製作した作品の中から、10作品を上映します。
また5名からなる国際審査員が、最優秀作品賞と審査員特別賞を選び、11/30(土)に行われる授賞式で発表します。
(日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作)
『水の影』 Shadow of Water
インド / 2019 / 116分
監督:サナル・クマール・シャシダラン (Sanal Kumar SASIDHARAN)
マラヤラム語映画界の俊英シャシダランがインドの女性問題を3人の登場人物に凝縮して描いた問題作。若い男がガールフレンドを連れ出し、先輩格の男の運転する車でドライブに出るが……。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。
カンボジア、フランス / 2019 / 77分
監督:ニアン・カヴィッチ(NEANG Kavich)
歴史的建造物として知られたプノンペンの集合住宅「ホワイト・ビルディング」。取り壊し直前のこのビルにカメラを持ち込み、そこに暮らす人々をとらえたドキュメンタリー。ロッテルダム映画祭でNETPAC賞(アジア映画賞)を受賞した。
シンガポール、台湾 / 2019 / 103分
監督:アンソニー・チェン (Anthony CHEN)
「イロイロ/ぬくもりの記憶」以来となるアンソニー・チェン待望の監督第2作。前作のキャストを再び起用し、中学生と担任の女性教師の間の感情の揺れ動きを繊細に描く。トロント映画祭のプラットホーム部門でワールド・プレミア上映された。
フィリピン / 2019 / 126分
監督:レイムンド・リバイ・グティエレス(Raymund Ribay GUTIERREZ)
ドメスティック・バイオレンスの問題を正面からとらえた作品。日常的に暴力を振るう夫を訴える女性の戦いを臨場感溢れる映像で描く。ブリランテ・メンドーサがプロデュース。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で審査員特別賞を受賞。
台湾、マレーシア、ミャンマー / 2019 / 102分
監督:ミディ・ジー (Midi Z)
ハリウッドを震撼させたMe Too問題に触発された作品。台湾映画界を舞台に主役の座を射止めたものの精神的に追い詰められる女優を描く心理サスペンス。ミディ・ジー作品の常連ウー・カーシーが脚本兼主演を務めた。カンヌ映画祭「ある視点」で上映。
中国 / 2019 / 102分
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)
大草原に暮らす家族を主人公に、一人っ子政策が人々に与える影響をチベット文化の視点から描いた作品。ペマツェテンの前作「轢き殺された羊」の主人公を演じたジンパが父親役を演じる。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映された。
中国 / 2019 / 154分
監督:グー・シャオガン(GU Xiaogang)
杭州の富陽の美しい自然を背景に、一つの家族の変遷を悠然と描いたグー・シャオガンの監督デビュー作。絵巻物を鑑賞しているかのような横移動のカメラワークが鮮烈な印象を残す。カンヌ映画祭批評家週間のクロージングを飾った。
韓国 / 2019 / 89分
監督:パク・ジョンボム(PARK Jung-Bum)
「ムサン日記/白い犬」のパク・ジョンボムの監督第3作。過疎化が進む小島に赴任した女性警官の目を通して外界から閉ざされた村社会に生きる人々の間にうずまく欲望を鋭く抉り出した作品。ロカルノ映画祭で審査員特別賞を受賞した。
日本 / 2019 / 99分
監督:中川龍太郎 (NAKAGAWA Ryutaro)
配給:キグー
宮下奈都のデビュー小説を仲野太賀とこれが映画初出演となる衛藤美彩の主演で映画化した作品。大学の研究助手の行助と鯛焼き屋を経営するこよみ。親密になりかけた二人の関係はこよみが交通事故に会ったことをきっかけに暗転する……。
日本 / 2019 / 94分
監督:広瀬奈々子 (HIROSE Nanako)
配給:マジックアワー
「夜明け」の広瀬奈々子監督がブックデザインの第一人者、菊地信義を追ったドキュメンタリー。デジタル全盛の時代にあって紙の書籍にこだわり、手作業でデザインを行う菊地の仕事の工程を見つめながらものづくりの原点を探る作品。