事務局だより – 林 加奈子ディレクター(11)

今年はモーツァルト生誕250周年。という事で、早くから日本でもコンサートなどが行われていましたが、映画の分野でもニュークラウンドホープというモーツァルト・プロジェクトがあり、東京フィルメックスでも関連の5作品が上映されます。「半月」(バフマン・ゴバディ)、「オペラ・ジャワ」(ガリン・ヌグロホ)、「世紀の光」(アピチャッポン・ウィーラセタクン)、「ハンモック」(パス・エンシナ)、そして「黒眼圏」(ツァイ・ミンリャン)の5本は,このプロジェクトで製作されました。
まさに11月のオーストリアのウィーンでは総合芸術祭が開催されて、舞台演出家のピーター・セラーズ監修のもと、音楽・演劇・舞踏・建築などのアートが華やかに紹介されているそうです。ヌグホロ監督、ゴバディ監督、エンシナ監督、そしてウィーラーセタクン監督は、ウィーンから東京フィルメックスへのご来日になりますので、あちらの様子も伺ってみようと思っています。それぞれ、今によみがえるモーツァルトとでも言ったらよいのでしょうか。個性あふれる5本で、特に「ハンモック」はパラグアイの女性監督のデビュー作です。モーツァルトもすごいけど、こういうユニークなすばらしい5本を製作したプロデューサーも監督も、作り手の方々には頭が下がるばかりです。是非ご覧ください。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター(10)

映画のタイトルについて、お話します。配給が決まっている作品はともかく、上映を決めた後に、事務局みんなで日本語のタイトルを考えます。基本的には元のタイトルに沿って日本語でおかしくないように固めるのですが、原語でのタイトルと英語で流布しているものの意味が微妙に違う作品も、中にはあります。例えば今年は「世紀の光」の英語タイトルは[Syndromes and a Century]なのですが、 監督ご本人にも確認してから決定しました。バフマン・ゴバディ監督の「半月」は、英語では「Half Moon」だったので、カタカナで「ハーフムーン」という方法も考えましたが、中国のインリャン監督の「アザー・ハーフ」とお客様が混乱しないように漢字に決めました。またフィリピンの「マキシモは花ざかり」も意味を汲みながら雰囲気を出そうとみんなで相談して決めましたが、英語タイトルは「Blossoming of Maximo Oliveros」です。ちなみに小林政広監督の「幸福」は、コウフクではなく「しあわせ」と読みますのでご注意ください。タイトルには作り手の気持ちが込められていますので、大事にご紹介したいものです。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (9)

映画祭の公式カタログは、その編集たるや熾烈な作業を強いられます。まず初日には必ず完成していないといけない。資料的な価値、データなどが間違っていてはいけない。それなのにプログラムの数や、配給の動き、ゲストの来日変更などによってのイベントのドタキャンなどギリギリになって突然の変更が多すぎる難点があります。海外から取り寄せる資料もバラバラで、情報もさまざまだったりして、確認に確認を重ねて念押ししても変更がありえるのが実情です。監督ひとりひとりの心のこもったメッセージが記載されていますので、みなさまどうぞ会場でお買い求めください。どうしても映画チケット一枚よりも安い値段を設定したくて、第2回目からは一冊1000円です。バックナンバーも是非是非どうぞ。

「オフサイド」の映像を部分紹介しています!

ただいま「ブロードキャスト」コーナーでは、特別招待作品「オフサイド」の1?2分程度の映像を、全4本紹介しています。少女たちの奮闘ぶり、ぜひご覧ください!
W杯イヤーを締めくくるこの作品。きっと見終えた誰もが笑顔で席を後にする、素敵な映画です。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (8)

ボランティアスタッフは、映画祭の顔ともなりうる大事な存在です。うれしい事に毎年続けてくださる方々もいらっしゃいます。今年は総勢80名ほどが集結して、心をひとつにしてお客様とゲストのみなさまの架け橋となりながら会場運営やカタログ販売、語学を生かしたホスピタリティーのお手伝いをしてくださいます。夏ごろから応募をして、面接によって厳選し、10月頭からミーティングを重ねて組織化していきます。スタッフ同士がまさしく同志となって仲良しの雰囲気が出来上がります。過去にはスタッフの間で結婚したカップルもいたとか、映画最後に配給会社から引き抜かれた人もいたとか。映画祭を見る側としてでなく、開催する側で関わる事も貴重な体験と楽しんでいただけるとうれしい限りです。
今からでも来年のボランティアスタッフをと考えてくださる方は、来年の募集を要チェックお願いします。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (7)

今年のメインビジュアルは、例年にも増してご好評をいただいております。第7回ということで、虹色のイメージです。みなさまご存知の通り、「虹色のタングステン」というモノクロの谷内六郎さんが描かれた鉛筆画をモチーフに、映画の天使が集まる映画祭の心をうたっております。実はこのビジュアル、今年のベルリン国際映画祭のポスターをヒントに捻った作品なのですが、このポスターデザインは、毎年中平一史さんという大変映画がお好きでご理解のあるアーティストにお願いしています。メインビジュアルはスタッフが心を一つにして今年の成功を共にイメージする上で大切なもの。毎年新しいビジュアルを5月のカンヌで世界にお披露目すべく制作を進行しています。細かい部分まで全てスタッフ一同納得しながら作り上げていきます。「映画の未来へ…」というキャッチコピーが数々の素晴らしい作品に呼応して、会場で映えることと信じております。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (6)

一般には開放していませんが、期間中にはインダストリー・スクリーニングをやっています。今年で4回目の企画で、英語字幕の付いた日本映画の最新作を海外からの業界関係者、国際映画祭の選考担当者の方々にご紹介しています。これを目当てに今までもプサン、チョンジュ、トライベッカ、シカゴ、カンヌ、香港などの映画祭から来日がありました。東京であるべき国際映画祭として、自国の映画が海外へ出て行くことを支援してお手伝いしていきたい。そんな自然な気持ちから生まれた企画です。
今年ワールドプレミアで上映するコンペ部門の「幸福」(しあわせと読みます)も、このあと間違いなく海外での上映が待っています。邦画に限らず昨年の「あひるを背負った少年」(イン・リャン監督・中国)は、東京フィルメックス後に、すばらしき展開がありました。ここだけの話ですが、イン・リャンは去年の初日ではオープニング上映のホウ・シャオシェン監督と一緒に写真撮って欲しいなんて、ファン丸出しだったのですが、今年は大きく成長して映画監督の顔になっているでしょう。どうぞお楽しみに。映画祭が監督をよい意味で刺激できるとしたら、うれしい限りです。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (5)

岡本喜八特集。9月の記者会見でも発表しましたが、来年の2月のベルリン国際映画祭で、岡本喜八特集の実現が既に決定しています。ヨーロッパでの岡本特集は歴史的にも初めて。快挙です。
東京フィルメックスから発信という企画としては、清水宏特集、中川信夫特集に続いてのベルリンでの上映ですが(内田吐夢はロッテルダムで上映)、共催でもありニュープリントを作ってくださったフィルムセンターのおかげで、よい形で岡本作品をヨーロッパの人たちに楽しんでいただけます。東宝にも大感謝。みなさまはフィルムセンター大ホールでの日本一の国立の映写状態でお楽しみください。「結婚のすべて」「地獄の饗宴」など今改めて岡本さんの弾けるリズムのフレッシュな魅力をご堪能ください。また「大菩薩峠」を内田吐夢版と比較してみるのも一興です。岡本特集は当日券のみです。それでは、みなさま、京橋でお待ちしております。

事務局だより – 林 加奈子ディレクター (4)

いよいよオープニングまで10日を切りました。カウントダウン状態。みなさまに素晴らしい作品を早くみていただきたくて待ちきれないという気持ちと、準備に時間がまだまだ必要という気持ちと、揺れる心の日々です。プリント到着などキワドイ作品もあって、綱渡りです。上映プリントは英語字幕付きのプリントを海外からこの上映のために送ってもらう手配をしている作品が多いのですが、11月はことのほか国際映画祭が多い季節。プサンから直送なんて時間に余裕あるとラッキーですが、そんな事はまずありません。ロンドンからとかアメリカからとかギリギリの到着で、しかも通関手続き、東京税関の試写もあり、そのうえ日本語字幕のためのタイミングを取る作業が待っていて、この業務を担当していただいているアテネフランセ文化センターの方にはカミワザとしか言いようの無い酷な状況での字幕投影をお願いしている舞台裏があります。今年も何が何でも全て間に合いますように。