2009年08月03日
カンヌから「映画の未来」を見据える
スターが集う華やかさの一方で若い才能を支援する多くの企画
◆作品上映が最大の支援
第62回カンヌ国際映画祭が先月開催された。メインのコンペ部門では常連が顔をそろえ、ミヒャエル・ハネケの『ザ・ホワイト・リボン』がパルム・ドール(最高賞)に輝いた。「例年よりも作品の水準が高い」という評判の中で、ベテランが実力通りの貫禄を見せ、気鋭の若手たちは意欲的な作品を発表して確かな一歩を踏み出した。そこには、未来を担う映画作家を積極的に支援する映画祭の姿勢がはっきりと見えた。
当然ながら、作品を上映することが映画祭による最大の支援だ。もっとも注目を集めるコンペの他にも"ある視点"や"監督週間""批評家週間"など多くの部門があり、そこに並んだ作品にはきらめく可能性が秘められている。
中でも注目は、1998年に創設されたシネフォンダシオン部門だ。カンヌの総代表ジル・ジャコブの肝いりで始められ、当初は学生による短編映画を上映する部門だった。映画学校から推薦された作品を上映し、審査を行い、一席を獲得した監督には長編1作目がカンヌの公式部門で上映されることが約束される。
2000年からは新たに<レジデンス>が始まった。選抜された監督がパリに4か月半にわたり滞在、そこで企画開発や脚本執筆に取り組む。これは映画よりも美術の分野で広く定着している手法だ。今年のカンヌで「インディペンデンシア」「マニラ」の二本が上映されたフィリピンの異才ラヤ・マルティンもレジデンス出身だ。
<アテリア>という企画マーケットも05年より開始。監督たちにプレゼンテーションの場が与えられ、製作会社や出資者とのマッチングを行う。今年の上映作品では、コンペの「顔」(ツァイ・ミンリャン/台湾)、ある視点のポルトガル映画「男らしく死ぬために」などが、2年前のアテリアに選ばれた企画だった。
◆花開く若い作家たち
創設から12年を経て、これら3つの軸が有機的に機能し、一定の成果を挙げ始めている。その一例が近年勢いが目覚ましいルーマニア出身のコルネリウ・ポルンボイウだ。04年に短編がシネフォンダシオンで上映されて二席を獲得。翌05年にはレジデンスに選抜され、06年のデビュー作でカメラドールに輝いた。そして、2作目の「警察、形容詞」は今年のある視点で上映されて審査員賞、とまさにシンデレラストーリーを地で行く。「警察、形容詞」は官僚主義への痛烈な批判を、カメラの長回しや、繰り返しの演出によってユーモアでうまく包み込むことに成功した、特異な作品だ。
もちろん、シネフォンダシオンはあくまでも「きっかけ」や「場」であり、それを活かすのは作り手次第だ。しかし、世界中から映画の目利きが集まるカンヌにおいて、スポットライトがあたるステージが用意されている魅力は何物にも替え難い。
スターがレッドカーペットを上った先の、同じ建物の中でジーンズ姿の学生が、上映前にたどたどしい英語でスピーチをしている。数年後にはタキシード姿で、隣の会場に立っているかもしれない。一方で、この部門での日本映画の長い不在について考える。製作環境に恵まれた国だから、あまり気にされないのだろうか。
だが、ここには資金だけではない、もっと多義的なチャンスが転がっている。そして、映画祭は「映画の未来」を見据えて彼らを待っている。
(報告者:岡崎 匡)
今年のカンヌ国際映画祭で公式上映された日本映画は『トウキョウソナタ』のみだったが、ある視点部門審査員賞を受賞して存在感を示した。また、日本人俳優が出演し東京で撮影された『TOKYO!』も注目を集めた。これらは従来の枠組を越える新たな軌跡を描いて誕生し、今後の日本映画の可能性を予感させるものとなった。(東京フィルメックス事務局・森宗厚子)
5月15日に上映された『TOKYO!』は日・仏・韓・独の合作による3部作。監督・脚本は、ニューヨークからミシェル・ゴンドリー(『恋愛睡眠のすすめ』)、フランスからレオス・カラックス(『ポーラX』)、韓国からポン・ジュノ(『グエムル-漢江の怪物-』)が参加し、俳優とスタッフはほぼ日本勢という布陣で作られた。
ユニークな視点から東京を舞台にし、馴染みある俳優達やありふれた都市風景を被写体としながら、見過ごされていた異なる魅力や東京の本質を描き出し、新鮮な驚きをもたらす。フランス在住の日本人プロデューサーを中心に製作されたが、外国の資本や才能との協働により、日本の環境の中で生み出される映画のバリエーションを広げている。
そして5月17日、『トウキョウソナタ』は大きな拍手によって迎えられた。1997年『カリスマ』が監督週間で上映されて以来、2001年『回路』がある視点、03年『アカルイミライ』がコンペで、とカンヌで度々紹介されている黒沢清監督だが、今回は「びっくりするくらい反応が良かった」と手応えを記者会見で語った。監督の新境地ともいえる家族のドラマは、世界に通じる普遍性を持ち高く評価された。「この作品が最後に与えるのは映画を見たというよりも、醜さ、恐ろしさ、そして素晴らしさと驚きを全て含むひとつの人生を生き抜いたという感情だ」(シネマティカル)という絶賛評もある。
また、作品の成立過程も新しい展開を示している。外国との共同製作によるものだが、オーストラリア出身のマックス・マニックスが書いた脚本に興味を持った木藤幸江プロデューサーが、共同製作のパートナーとして、オランダや香港などを拠点に製作/国際セールスを手がける会社フォルティシモのバウター・バレンドレクトと組み、黒沢監督に声をかけたという経緯がある。
初期段階で木藤プロデューサーは、経済産業省と日本映画の国際振興を担う組織ユニジャパンの主催による共同製作支援プログラム<J-Pitch>に参加して、2006年にカンヌでの企画ピッチングを行ない、スムーズに製作に取り掛かった。そして、2年を経て完成した作品を公式上映で披露し、受賞して作品的に評価されるとともに、ビジネス的にもすでに世界11カ国以上での配給が決まるなど成果を挙げている。
木藤プロデューサーは、以前より外国映画の共同製作に携わっていたが、日本映画を初めて手がけるにあたり<J-Pitch>のバックアップが「大変ありがたかった」と語る。折しも2006年に始動した<J-Pitch>は改良を重ねつつ、ロッテルダム、ベルリン、香港、プサンなど主要映画祭の企画マーケットとの提携や脚本などの翻訳サポートといった実践的な支援体制を整えてきている。『トウキョウソナタ』をはじめとする実績を内外へのアピールとして、継続的な取り組みにより今後のさらなる展開が期待される。
日本映画界は特殊性が高いとされ、他国に比べて共同製作がまだまだ活性化していないが、<J-Pitch>など公的支援により内外の映画界の橋渡しとなる効果的なプラットホームの整備が望まれている。
※『TOKYO!』晩夏、シネマライズ、シネリーブル池袋他全国公開予定(配給:ビターズ・エンド)
※『トウキョウソナタ』秋、恵比寿ガーデンシネマ他全国公開予定(配給:ピックス)
以上
(報告者:森宗 厚子)
*公明新聞 2008年6月6日(金) 掲載記事より転載
今年で第60回を迎えたカンヌ国際映画祭が、5月27日に閉幕した。コンペティション部門では、ルーマニア映画「4ヶ月、3週間と2日」がパルムドール(最高賞)を獲得、次席のグランプリには日本の「殯(もがり)の森」(河瀬直美)が輝いた。節目を記念する数々のイベントで、話題に事欠かなかった映画祭をリポートする。
映画祭の花形であるコンペ部門には、各国から22作品が集められた。パルムドール受賞経験者が何人も参加する中で、映画祭2日目に登場して話題をさらったのがルーマニアの俊英・クリスティアン・ムンジウ監督だ。妊娠した女子学生が違法な手段で堕胎を試みるという衝撃的な内容で生命の尊厳を問うた、長編劇映画2作目。審査員たちからも最高賞の栄誉を得た。
3度目のカンヌ参加となった河瀬直美の「殯の森」は、コンペ最終上映。妻の死を受け入れられない老人と、子どもを亡くした若い介護士が、老人の妻の墓参りのために森に分け入る。殯とは、古来の倭言葉で、本葬に移すまでの間、遺体を安置する場所や行為のことを言う。2人が深い森の中で、次第にそれぞれの愛する人の死を受け入れる過程を圧倒的な映像美と緊張感あふれる演技で描き出した。
その他のコンペ各賞も、比較的製作本数が少ない若手の監督たちの作品が受賞を重ねた。一方でコーエン兄弟や、ウォン・カーウァイ、エミール・クストリッツァなどは各々の実力を示したものの無冠に終わり、ベテラン勢の中ではガス・ヴァン・サントが60回記念賞を受賞。これは、映画監督のスティーブン・フリアーズ率いる審査員団が、これからの新しい才能の可能性に賭けた結果と言える。
コンペの他に注目を集めたのは、競作オムニバス「To Each His Own Cinema」だ。ケン・ローチやホウ・シャオシェン、ナンニ・モレッティなど各国の巨匠33組が映画館をテーマとした3分の短編を製作。日本からはただ1人、北野武監督が「素晴らしき休日」で参加、満場の観客の笑いを誘った。それぞれにおいて作家の個性が十二分に発揮され、カンヌが独創的な監督たちを意欲的に発見して、紹介を続けてきた底力がこの1つの映画の中に示された。なお、「素晴らしき休日」のみ、北野監督の最新作「監督・ばんざい!」の公開時にあわせて上映される。
映画祭が果たすべき使命は多いが、今年のカンヌに参加して筆者が強く感じたことは、映画祭は作家を育てるということである。河瀬監督は会見で「カンヌが私を育ててくれた」と感謝の念を込めて語った。若手に与えられた賞の数々は、今後その結果が証明されていくことになろう。「大日本人」の松本人志監督は、賛否両論の激しい反応に驚きを受け、それだけに次回作への意欲とも思われる発言を残した。北野監督は「『HANA-BI』のベネチア映画祭での金獅子賞以来、10年をかけてようやくここまでたどり着けた」と感慨深く振り返った。「映画の授業」を行ったマーティン・スコセッシは、「情熱とクレイジーさをもって製作に努めて欲しい」と若者たちを励ました。
人間で言うところの還暦を迎えようとしているカンヌ映画祭は、伝統と格式を誇りながらも、新しい映画と才能を迎え入れ続け、若々しさを失わない。
(報告者:岡崎 匡) *公明新聞(2007年6月2日)に掲載された記事を転載
今年で60回の節目を迎えるカンヌ国際映画祭が、5月16日から27日まで開催される。
もっとも注目を集めるコンペティション部門では、過去にカンヌやベネチア、ベルリンなどでの受賞実績のある巨匠や人気監督がすらりと並び、そこに気鋭の若手が挑む。
コンペティション部門は、全22本(他、コンペ外1本)。
このうち、昨年の同映画祭で審査委員長を務めたウォン・カーウァイの「My Blueberry Nights」はオープニング作品として上映される。主演にジュード・ロウと歌手のノラ・ジョーンズを迎え、全編を英語で撮影した野心作だ。
史上初の3度目の受賞を狙うエミール・クストリッツアの他、クエンティン・タランティーノ、ガス・ヴァン・サント、コーエン兄弟などパルムドール経験者が並ぶ。
三大映画祭常連のキム・ギドクは、意外にもこれが初めてのカンヌ映画祭コンペ参加となる。同じ韓国からは「オアシス」でベネチア映画祭の監督賞や新人俳優賞(ムン・ソリ)に輝いたイ・チャンドンが五年ぶりの新作「Secret Sunshine」で臨む。
アレクサンドル・ソクーロフは、「Alexandra」で五度目のコンペ参加となる。
コンペ初参加組の中では、ハンガリーの鬼才タル・ベーラによる「The Man From London」や、第5回東京フィルメックスで「アヴァニム」が上映されたラファエル・ナジャリの「Tehilim」も注目だ。
日本からは、河瀬直美の「殯(もがり)の森」(6月公開予定)が上映される。10年前に「萌の朱雀」でカメラドールに輝き、一躍世界の注目を集めることになった縁起のよい舞台で、再びの栄光を目指す。コンペティション上映作品の中でも、最後の上映となる。
これらの作品を審査するのは、「クイーン」でヘレン・ミレンをアカデミー賞最優秀主演女優賞に導いたスティーブン・フリアーズが審査委員長を務める9人の審査員。
他には香港のマギー・チャン、オーストラリアのトニー・コレット、カナダのサラ・ポーリーなど、女優が目立つ顔ぶれとなっている。
コンペティション部門のラインアップ(短編、学生映画部門は除く)は以下の通り(07年5月14日現在)。
◇オープニング
My Blueberry Nights(ウォン・カーウァイ)香港
◇クロージング
The Age of Darkness(ドゥニ・アルカン)カナダ *コンペ外上映
◇コンペティション
An Old Mistress (Une Vieille Maitresse)(カトリーヌ・ブレイヤ)フランス
The Love Songs (Les Chansons d'amour)(クリストフ・オノレ)フランス
The Diving Bell and the Butterfly(ジュリアン・シュナベール)フランス
Auf Der Anderen Seite Des Lebens(ファティ・アキン)トルコ
Breath(キム・ギドク)韓国
No Country for Old Men(ジョエル&イーサン・コーエン)アメリカ
Zodiac(デビッド・フィンチャー)アメリカ
We Own the Night(ジェームズ・グレイ)アメリカ
殯の森(河瀬直美)日本
Promise Me This(エミール・クストリッツァ)セルビア
Secret Sunshine(イ・チャンドン)韓国
4 Months, 3 Weeks and 2 Days(Cristian Mungiu)ルーマニア
Tehilim(ラファエル・ナジャリ)フランス
Silent Light(カルロス・レイガダス)メキシコ
Persepolis(Marjane Satrapi and Vincent Paronnaud)フランス
Import/Export(ウルリッヒ・ザイドル)オーストリア
Alexandra(アレクサンドル・ソクーロフ)ロシア
Death Proof(クエンティン・タランティーノ)アメリカ
The Man From London(タル・ベーラ)ハンガリー
Paranoid Park(ガス・ヴァン・サント)アメリカ
The Banishment(アンドレイ・ズビャギンツェフ)ロシア
◇コンペティション審査員
スティーブン・フリアーズ / 審査委員長 / 英国、監督
マギー・チャン / 香港、女優
トニー・コレット / オーストラリア、女優
マリア・デ・メディロス / ポルトガル、女優・監督
サラ・ポーリー / カナダ、女優・監督
マルコ・ベロッキオ / イタリア、監督
オルファン・パムク / トルコ、作家
ミシェル・ピコリ / フランス、俳優・監督
アブドラマン・シサコ / モーリタニア、監督
以上
カンヌに来る度に考えさせられることは多々あるのだが、その内の一つは、映画と文化の関わりについて、あるいはそれらの事柄と社会との関係についてである。これは何も抽象的で大仰なことを述べているわけではなく、つまりはカンヌが、あるいはフランスという社会が、映画という文化を非常に重視し尊重しているということが、カンヌ映画祭に参加すると体感として実感できるということなのだ。
もちろん、社会が映画を文化として尊重するかどうかというのは、その社会(の成員)の責任で決めればいいのであって、尊重しようがしまいがそれは基本的にその社会内部の合意事項である。またそうした合意の成立には、その社会で文化や対抗文化が占めてきた位置や、国家権力、あるいはメディアや現代的な広告産業など、様々な要素が複雑に絡んでくるものだろうから、日本もフランス社会を見習うべきだ、といった単純な話にすぐさま回収できるようなことでもない。だから、ここで一旦はっきりと強調しておきたいことは非常にシンプルなことで、カンヌは映画祭として、フランス社会の上述の態度をメッセージとして明確に表象しているということであり、そのことを僕は個人としてしっかりと実感することができるし、また、その状況を非常に羨望をもってみてしまうということなのだ。
今年で45回目を迎えるカンヌ映画祭・批評家週間(5月18日-26日)のラインアップは以下の通り。日本からは中野裕之監督の短編作品「IRON」が選ばれている。
○長編作品
Drama/Mex (ヘラルド・ナランホ)メキシコ
Friss Levego/Fresh Air(アーグネシュ・コチシュ)ハンガリー
Komma(マルタン・ドワイエン)ベルギー
Sonhos de peixe(キリル・ミハノフスキー)ブラジル=ロシア=アメリカ
Den brysomme mannen/The Bothersome Man(イェンス・リーエン)ノルウェー
Pingpong (マティアス・ルータルト)ドイツ
Les amities malefiques(エマニュエル・ブルデュー)フランス
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今年で38回目を迎えるカンヌ映画祭・監督週間(5月18日-28日)のラインアップは以下の通り。西川美和監督(『蛇イチゴ』)の最新作『ゆれる』は、新作の長編作品としては、公式部門や批評家週間を含め、今年、日本からの唯一のエントリー作品となった。
○長編作品
A Fost sau n-a fost?(Corneliu PORUMBOIU)ルーマニア
Anche libero va bene(キム・ロッシ・スチュアート) イタリア
Les Anges exterminateurs(ジャン=クロード・ブリソー)フランス
Azur et Asmar(ミシェル・オスロ)フランス=イタリア=ベルギー=スペイン
Bug(ウィリアム・フリードキン)アメリカ
Ca brule(クレール・シモン)フランス=スイス
Changement d’adresse(エマニュエル・ムーレ)フランス
Congorama(フィリップ・ファラルドー)カナダ=ベルギー=フランス
Daft Punk’s Electroma (トマ・バンガルテル、ギ=マニュエル・ドゥ・オメン=クリスト)アメリカ
Dans Paris(クリストフ・オノレ)フランス
Day Night Day Night(ジュリア・ロクテフ)アメリカ=ドイツ
Feher tenyer/White Palms (ザボルチ・ハイデュ)
The Hawk is Dying (ジュリアン・ゴールドバーガー)アメリカ
Honor de Cavalleria(アルベール・セラ)スペイン
The Host/Gue Mool(ポン・ジュノ)韓国
Jindabyne(レイ・ローレンス)オーストラリア
Lying(M.ブラッシュ)アメリカ
On ne devrait pas exister(HPG)フランス
Princess(アンデルス・モルゲンターラー)デンマーク=ドイツ
Sommer 04 An Der Schlei / Ete 2004 au bord de la Schlei(シュテファン・クロマー)ドイツ
Transe/Trance(テレサ・ヴィラヴェルデ)ポルトガル=フランス=イタリア
ゆれる/Sway(西川美和)日本
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第59回カンヌ映画祭が5月17日に開幕する。それに先立ち、公式部門、監督週間、批評家週間の各部門のラインアップが先日相次いで発表された。
最も注目を集めるコンペティション部門には20作品がエントリー(5月11日現在)。ナンニ・モレッティ、ペドロ・アルモドバル、アキ・カウリスマキ、ケン・ローチらのいわゆる常連組から、既に一度はレッド・カーペットを経験している作家たち(ブルーノ・デュモン、ニコル・ガルシア、パオロ・ソレンティーノ、ロウ・イエ、ヌーリ・ビルゲ・ジェイランなど)、そして、キャリアは様々だがコンペ初登場となる監督たちまで、常連組が軒並み顔を揃えた昨年と比べて、比較的多様性のあるラインアップとなった。ただ、地域的には欧米の比重が随分高くなっており、アジアの作品はロウ・イエ(中国)の『Summer Palace』のみと、やや寂しい結果となっている(トルコをアジアと見なしたとしても、ヌーリ・ビルゲ・ジェイランの『Iklimer』と併せて 2本)。その辺りのバランスを取るためか、今年の審査委員長は香港出身のウォン・カーウァイ。彼を中心に、映画監督と俳優のみで構成される今年の審査員団が最終的にどんな決断を下すのか、世界の注目が集まる。
公式部門の他の部門に目を転ずると、「ある視点」で新進作家の発掘と地域的な多様性を示しながら、特別上映作品で華やかさや話題性を加え、さらにはブニュエル劇場のプログラムでドキュメンタリー作品、クラシック作品、あるいはフィクションの小品を上映するという、比較的少数精鋭のプログラムでありながらも、“カンヌ”ならではの懐の深さを示そうとする姿勢は相変わらず。ここから発信される多様な作品たちが、今後どのように世界に受け入れられていくのか、今年もまた楽しみなサイクルが始まろうとしている。 (文/神谷直希)
カンヌについて書くのは難しい。
その主な理由は、しばしばそれが「世界最大の映画祭」とも称される通り、巨大な映画祭だからだろう。何をもって「世界最大」なのかは全く不明ではあるものの、確かにその甚大な影響力まで考えれば、その呼称も納得がいくような気もしてくるから不思議だ。実際、今年の公式部門(*1)の作品数は短編や学生映画部門(Cinefondation)の作品を合わせても約150本であり、これより総作品数が多い映画祭は他にいくつも存在しているのだが(*2)、カンヌの場合に感じるのはそういった次元の話ではなく、どちらかというと虚実の入り混じったような、焦点のはっきりとしない巨大さであるのが厄介なのである。
第44回「批評家週間」ラインアップが発表された。
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第37回カンヌ映画祭 監督週間ラインナップが発表された。
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カンヌ映画祭事務局より5月3日付で公式プログラムの追加(及び変更)が発表された。追加(及び変更)は以下の通り。
○コンペティション部門
ホン・サンス 『Keuk Jang Jeon (Tale of cinema)』
○「ある視点」部門
青山真治『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』
La浜a Marrakchi 『Marock』
小栗康平『埋もれ木』(ノガ・ヒルトン劇場にて、公式部門と「監督週間」部門が共同で上映)
○特別上映
ヤン・クーネン 『Darshan ミ l'Etreinte』 (ドキュメンタリー)
ジャン・リュック・ゴダール 『Morceaux choisis des Histoire(s) du cin士a』(公式部門と「批評家週間」が共同で上映)
Anibal Massaini Neto 『Pel Eterno』 (ドキュメンタリー)
以上。
第58回カンヌ国際映画祭の公式部門のラインアップが発表された。
http://www.festival-cannes.fr/
今年のコンペティション部門でまず目を引くのは、ラース・フォン・トリアーやダルデンヌ兄弟といったカンヌと関係の深い監督たちの作品がラインアップの多くを占めていることである。この傾向は、その半数以上がコンペ初参加だった昨年のラインアップからのゆり戻しという側面が強い(ということを主催者自らが半ば認めている)が、その中にあって、アジアからは、侯孝賢を除けばコンペに初参加の監督たちの作品が顔を揃える、という結果となった。他の部門に目を向ければ、コンペでの常連組重視のバランスをとってか、「ある視点」部門は出品作の約半数が初監督作品という非常にフレッシュなラインアップとなっており、この部門の存在意義が今一度確認できる内容となっているのが注目に値する。加えて、『スター・ウォーズ』シリーズの最新作にしてラスト作である『シスの復讐』を特別上映するなどして映画祭に派手さを加える一方、例えばカンボジア出身の映画作家リティ・パニュの新作を他方で堅実に上映するなど、“カンヌ”の懐の深さを改めてアピールするようなラインアップになっているといえる。あとは、実際の作品がそれぞれどのように評価され、受け入れられるかである。(文=神谷直希)
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2004年5月12日から23日にかけて開催される第57回カンヌ国際映画祭の公式部門のラインアップが、去る4月21日に発表された。
今年のコンペティション作品は昨年より5本少ない18本で、その分、コンペ外作品の数が増加している。ただ、ここにはメイン会場のリュミエールではなく、座席数の少ない会場ブニュエルで上映されるドキュメンタリー作品も含まれている。コンペティション作品の監督のうち、今回を含めて3回以上コンペティションに選ばれたのはクストリッツァ、コーエン、アサヤス、王家衛(ウォン・カーウァイ)の4人のみ。18本中、11本の監督がカンヌ・コンペ初登場というフレッシュな顔ぶれとなった。
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