11月29日、有楽町スバル座にて<特集上映:ツァイ・ミンリャン>の『河』(97)の上映が行われ、舞台挨拶にツァイ・ミンリャン監督と主演のリー・カンションさんが登壇した。『河』はツァイ監督の3作目の作品。首が曲がったままになる奇病を患った息子と、その家族を描いている。ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した。
ツァイ監督は「この作品はデビュー作の『青春神話』(92)を作った後、撮りたいと思った作品です」と説明した。撮影のきっかけとなったのは、リーさんが首が曲がる病気にかかったこと。ツァイ監督は10カ月リーさんに付き添い、病院を回った。人間が病に体を苛まれるのを目の当たりにし、人間というのは意外と不自由なのだと衝撃を受けたのだという。ツァイ監督は「自分の命運に逆らえない人間を描こうと思い、映画にしたのです」と制作の経緯を語った。また、撮影時について「シャオカン(リーさんの愛称)はもう一度、自分が病気だったときの状態を演じなければならず、非常に辛かったと思います。私は彼の演技を見て、当時を再現できていないと感じ、もっと首は曲がっていないといけないと随分要求しました」。最近、リーさんの病気が再発したというが「彼の運命に対して、私は何をしていいかわかりません。しかし病状がどうなろうとも、私は彼とずっと仕事をしていくと思います」と力を込めた。
また、日本の観客にお礼が言いたかった、というツァイ監督。「国民性かもしれませんが、作品に対して非常にこだわりがあり、自分が好きだと思うものをずっと支持してくださる。デビューからずっと応援してくださる方が少なからずいらっしゃいます。この上映をきっかけにして、またこれから私と一緒に歩いてくださるお客さまに出会えたらと思います」と語った。
リーさんは、「日本の皆さま、今日はありがとうございます。私の病気が治るか治らないかにかかわらず、今後も努力していい演技をしたいと思っています」と決意を表明した。
(取材・文:宇野由紀子、撮影:穴田香織、白畑留美)