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10/6 ラインナップ発表記者会見

 

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10月6日、第17回東京フィルメックスのラインアップが発表され、林 加奈子ディレクターと市山尚三プログラム・ディレクターが東銀座・松竹本社にて会見を行った。林ディレクターは「今年は特に、劇場公開が決定していない作品が多い。貴重な上映のチャンスを、どうぞお見逃しのなきようお願いいたします」と挨拶した。

今年も、国際審査員は映画祭プログラマー、監督、俳優、プロデューサー、研究者などそれぞれの専門のバランスを重視して選ばれた5名。審査委員長には映画評論家・映画祭プログラマーのトニー・レインズさん。そのほか、フィリピンから女優のアンジェリ・バヤニさん、韓国からパク・ジョンボム監督、フランスからプロデューサーのカトリーヌ・ドゥサールさん。日本からはアジア映画研究者の松岡環さんが参加する。会場で挨拶した松岡さんが「私はアジア映画研究者を名乗ってはいますが、実のところ“ミーハー”なアジア映画ファンでして、それでは審査員は務まらないと尻込みをしていたところ、林さんに上手に説得されてしまいました」とコメントすると、林ディレクターは「松岡さんのその“ミーハー”と“アカデミック”の絶妙なバランスに学ぶところは多い。期待しています」と応じた。

東京学生映画祭主催の学生審査員賞は今年で6回目を迎える。「若い世代に選ばれることは、作り手にとって非常に励みになっている」と林ディレクター。

また、毎年恒例の観客賞のほか、その「発展形」として映画レビューサービス「Filmarks」とコラボレーションしたFilmarks賞を新たに創設。新作・過去作問わず全ての上映作品を対象に、一般参加者の★評価によって決定される。

続いて林ディレクターが、コンペティション作品を紹介。「どうしても創らねば、という気持ちで創っている本気の作品ばかり。私たちがどうしてもみなさまに紹介したいと思った10本です」。イスラエル、スリランカ、フィリピン、ミャンマー、中国、韓国、日本から10作品が最優秀作品賞を審査員特別賞を競う。そのうち、6作品が長編監督デビュー作。また2作目以降となる監督の作品も、林ディレクターが「前作とはまったく異なるアプローチで創られているものばかり」とコメントする通り、今年も挑戦的な作品が揃った。

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次に、市山Pディレクターから特別招待作品が紹介された。

オープニングを飾るのはキム・ギドク監督の『THE NET 網に囚われた男』。クロージングの『大樹は風を招く』は、ジョニー・トー監督が主催する短編映画祭の受賞監督3名を起用した作品で、人材育成という点でも興味深い一本となっている。今年のヴェネチア国際映画祭で「監督・ばんざい!」賞を受賞したアミール・ナデリ監督の新作『山<モンテ>』はイタリアの山中で撮影されたが、「世界中のどこで撮っても、ナデリ監督のスタイルは貫かれている」と市山Pディレクター。リティ・パン監督の『エグジール』は、『消えた画 クメール・ルージュの真実』(13)を別のアプローチで撮った姉妹編というべき作品。ワン・ビン監督の『苦い銭』は縫製工場の労働者の姿を描き、ドキュメンタリーながらヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を受賞している。

「特別招待作品 フィルメックス・クラシック」では、デジタルリマスター作業により復元された過去の傑作5本が上映される。モフセン・マフマルバフ監督の『ザーヤンデルードの夜』は1990年に製作され、ファジル国際映画祭で上映されたものの、その後イラン当局の検閲によって没収された作品。今回はかろうじて国外に持ち出されたフィルムから復元された63分版を上映する。エドワード・ヤン監督の『タイペイ・ストーリー』(1985)はボローニャ市立シネマテークによるデジタル復元版での上映。「抽象的な作品の多いヤン監督の映画の中ではめずらしく、80年代の台北の空気をリアルに伝えている」と市山Pディレクター。巨匠キン・フー監督の代表作『侠女』(1971)と『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967)、今年生誕百年を迎える加藤泰監督の幻の遺作『ざ・鬼太鼓座』(1981)も、鮮烈な色彩で蘇る。

また、「特集上映 イスラエル映画の現在」と題し、近年国際的に高い評価を受けているイスラエル映画を2本紹介する。エラン・コリリン監督の『山のかなたに』は『迷子の警察音楽隊』(2007)以来の新作。前作同様イスラエルとパレスチナの問題を扱いつつ、より根底にある部分をあぶり出している。アヴィシャイ・シヴァン監督の『ティクン〜世界の修復』は、超正統派ユダヤ教徒の青年の彷徨をモノクロの画面に描く。市山Pディレクターが「ツァイ・ミンリャンに匹敵する才能がイスラエルに現れたと感じた」と評する強烈なヴィジュアル・イメージは必見だ。この特集に関連して、イスラエル・フィルム・ファンドのエグゼクティブ・ディレクターであるカトリエル・シホリさんによるトークイベントが予定されている。

今年で7回目となる映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー2016」では、メイン講師にモフセン・マフマルバフ監督らを迎え、11月21日から26日まで6日間にわたって開催される。「参加者のレベルは今年も非常に高い」と林ディレクター。11月24日には一般への公開講義が開催される。

会期前のイベントとして、11月9日には<字幕翻訳セミナー>、11月12日には第15回東京フィルメックスのオープニングを飾った塚本晋也監督の『野火』(2014)の聴覚障がい者向け日本語字幕付き上映が行われる。

また映画祭2日目となる20日には、有楽町朝日ホール11階スクエアにて、アジア映画に関するシンポジウムを予定している。

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「上映作品すべてに共通する一つのテーマというものが見いだせるわけではないが、それぞれの作品の中で描かれるさまざまな国の社会の問題、登場する人びとの姿が少しずつ重なり合い、理解が深まっていくという印象がある」と林ディレクターが語る通り、世界の縮図を映す22本が上映される第17回東京フィルメックスは11月19日(土)から27日(日)、有楽町朝日ホールとTOHOシネマズ 日劇にて開催される。

チケットは11月3日発売。今年は25歳以下の割引料金「U-25割」が導入される。TOHOシネマズ日劇での上映分はインターネットチケット販売vitまたはTOHOシネマズ日劇チケットカウンターでの販売となる。有楽町朝日ホールでの上映チケットは、セブンチケットでの取扱いのみとなり、会場での当日券販売はないため、注意が必要だ。詳細は公式サイトにて確認されたい。

(取材・文:花房佳代、撮影:白畑留美)


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