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【レポート】4/18タレンツ・トーキョー2017 プレイベント実施報告


4月18日(火)、都内の国際交流基金さくらホールにて「タレンツ・トーキョー2017」のプレイベントが開催された。「タレンツ・トーキョー」とは、ベルリン国際映画祭の「ベルリナーレ・タレンツ」と提携し、アジア圏の監督・プロデューサーを対象に実施している人材育成プロジェクト。今回のプレイベントでは、「タレンツ・トーキョー2017」の募集開始を前に、3名の修了生によるトークショーを実施。現在も意欲的な活動を続ける修了生たちが、それぞれの体験を踏まえて、タレンツ・トーキョーの魅力を語った。

7年前にスタートしたタレンツ・トーキョーは、毎年11月後半の東京フィルメックス期間中に開催されている。応募者の中から選抜された15名を受講生(タレンツ)として、少数精鋭で行われることが特徴だ。また、すべてのプログラムは英語で、タレンツ以外には非公開で実施される。“エキスパート”と呼ばれる講師陣には、これまで台湾の侯孝賢、中国のジャ・ジャンクーなど世界の一流監督や、プロデューサーたちを招いてきた。

トークに先立ち、海外の修了生2名のビデオメッセージを上映。マレーシア出身のラウ・ケクフアット監督(2015年修了)は、英語が母国語ではなかったため、プレゼンの前に原稿を書いて暗記した自身の体験を披露。「自分の企画のためにベストを尽くしてください」と激励した。フィリピンから参加したプロデューサーのビアンカ・バルブエナさん(2012年修了)は、ペドロ・コスタ監督やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督との出会いを、「とても有意義で、実りの多い経験でした」と振り返った。彼女は、現在ラヴ・ディアス監督作品のプロデュースにも関わっている。

続いて、修了生の木下雄介監督、中村真夕監督、谷元浩之プロデューサーによるトークショーを実施。

2003年にぴあフィルムフェスティバル(PFF)で準グランプリと観客賞を受賞した木下監督は、新たな一歩を踏み出すために昨年のタレンツ・トーキョーに応募。全員が同じホテルに宿泊する合宿形式によって参加者間の交流が深まり、世界各国の映画祭の生の情報を得られたことを1つの成果として挙げた。

 

高良健吾のデビュー作『ハリヨの夏』(06)で長編監督デビュー後、テレビのドキュメンタリーを中心に活動してきた中村監督は、映画制作に対するモチベーションを維持したいとの思いから、同じく昨年のタレンツ・トーキョーに参加。出演者や原作が重視される日本とは異なり、監督の作家性を重視する海外の視点から映画を見つめ直すことができたことを「恵まれた経験だった」と振り返った。

 

2013年に参加した谷元プロデューサーは、初めての長編プロデュースとなった作品『人間 ningen』(13)がトロント国際映画祭に出品された実績を持つ。だがそれは、既に経験豊富な二人の監督に導かれるようにして、右も左もわからないままプロデューサーを務めたものだったらしい。トロントでプロデューサーとしての勉強の必要性を感じたことが、応募のきっかけとなった。受講の成果については、「監督だけでなくセールス系の方など、色々な講師から話を聞けたことが役立った」と、プロデューサーらしい視点で語った。

現在は3名ともタレンツ・トーキョーで築いた海外とのコネクションを生かして、更なるステップアップを目指して活動中。中村監督は、250名もの受講生がいるベルリナーレ・タレンツと違い、少数精鋭のタレンツ・トーキョーでは濃密な人間関係が築けることを改めて強調した。

最後に「熱意ある参加者から刺激を受け、互いに切磋琢磨できる(木下)」、「海外の視点から自分の企画を見てもらえる貴重な機会(中村)」、「日本にいると気付かない世界の中での自分の立ち位置が分かる(谷元)」と、それぞれが考える魅力をアピールしてトークショーは終了。

締めくくりとして、タレンツ・トーキョー実行委員会の林加奈子委員長が、「素晴らしい才能のあるタレンツを、是非とも日本からもお迎えしたい」と、日本国内からの応募を呼びかけた。

タレンツ・トーキョー2017の募集期間は、5月15日(月)から6月15日(木)の1か月間。必要とされるのは「英語力」よりも「映画力」と熱意とのこと、意欲ある監督やプロデューサーは、公式サイトで詳細を確認の上、ぜひ挑戦してほしい。

(取材:井上健一 撮影:白畑留美)

※2016年4月にもプレイベントが実施され、その模様をテキストと動画でレポートしております。こちらもご参照ください。
「TT2016 プレイベントレポート」

※当日、会場で上映しました2人の修了生のビデオメッセージの内容的ストを以下にご紹介します。

ラウ・ケクフアット監督(マレーシア/台湾、2015年修了)

私は、「A Love of Boluomi」という自身の企画で、タレンツ・トーキョー2015に参加しました。この企画には何年も携わっていて、今年、この企画をLa Fabrique Cinéma de l’Institut françaisで発表できることはとても光栄です。
「タレンツ・トーキョー」と「ネクスト・マスターズ・サポート・プログラム」の「フェローシップ・プログラム」は私にとって大きな助けとなりました。英語は私の母語ではないので、誰かに自分の企画を話したり、プレゼンをするときはいつも、わかりやすく伝わるように原稿を書いて暗記しなければなりません。タレンツ・トーキョーに参加したことはとてもよいスタートとなりました。

もしあなたが自分がやっていることに熱意と誇りをもっているなら、人生に何かすてきなことをもたらしたいなら、それらを進めるために言語がその障害となるようではいけません。
もしあなたにチャンスがあれば、タレンツ・トーキョーに参加すべきです。自分の企画のためにベストを尽くしてください。

ビアンカ・バルブエナ プロデューサー(フィリピン、2012年修了)

最近の作品には(1)ラヴ・ディアス監督の『痛ましき謎への子守唄』(ベルリン国際映画祭・銀熊賞) (2)ペペ・ジョクノ監督の「Brotherhood」(カルロヴィ・ヴァリ 国際映画祭出品)、そして (3)ブラッドレイ・リュー監督の 「Singing in Graveyards」(ベネチア国際映画祭批評家週間で上映)があります。

2012年に「ベルリナーレ・タレンツ」に参加した時に、「タレンツ・トーキ ョー(TT)」のことを聞きました。当時、国際的な映画製作や複数の国による共同制作についてもっと学びたいと思っていたので、応募し、幸運なことに選ばれました。
それは、これまで私のキャリアの中で経験した最高の映画ワークショップの1つ でした。7日間のプログラムで、私たちは共同プロデューサー、セールスエージェント、監督などのプロフェッショナルに出会いました。 ペドロ・コスタ監督に会った時、彼は「今の映画 に欠けているのは、木々をそよぐ風だ。」と言いました。私はその時のことを鮮明に覚えています。アピチャッポン・ウィーラセタクン監督にも会い、自分のプロジェクトについてたくさん話をしました。彼からの貴重なフィードバックや建設的なアドバイスは 、間違いなく私のモチベーションをあげました。そして、どんどん エネルギーがわいてきました。

将来一緒に仕事をしたいと思うタレンツなど興味を惹かれる人たちにも出会いました。TTは私に前進するためのインスピレーションを与えてくれ、何よりも自分のプロジェクトに自信を持つことができました。また、刺激を与えてくれる映画をフィルメックスの期間中にたくさん観ることができました。とても有意義で、実りの多い経験でした。
今でも多くのタレンツと連絡を取っており、いつか一緒に仕事をしたいと考えています。 また、TTで会ったプロフェッショナルとも引き続き連絡を取っています。実際、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督が先週マニラにきた時にはディナーをしました。機会があれば、フィリップ・ボベール氏ともぜひ仕事をしたいと考えています。きっと何かが起こると期待しています。

「ネクスト・マスターズ・サポート・プログラム」の対象者として二度選出されたことも、大きな助けとなりました。一度目は「フェローシップ・プログラム」で、その資金を活用してParis Co-Production Marketに渡航し、ラヴ・ディアス監督の新作フィルム・ノワールを売り込みました。多くの今後協力者となりうる人々や興味を持ってくれるプロデューサーたちに会えました。現在脚本を仕上げ中で、今年撮影できればと考えています。二度目は、ブラッドレイ・リュー監督の「Singing in Graveyards」のために「プロモーション・ファンド」を受けてベネチアへ渡航する助けとなりました。昨年9月、ベネチア国際映画祭批評家週間後、約17の映画祭を訪れました。コルカタ国際映画祭で受賞し、最近ではMalaysia Golden Global Awards (MGGA)を 獲得しました。

若い映画製作者へは、「懸命に働き前進し、拒絶されても気にしないで」と言いたいです。受け入れられないことも経験の一部です。決して諦めてはいけません。私たちが今ここにいるのは、やめなかったからです。リスクのあるプロジェクトやエッジーなプロジェクト、あるいは自分の力量が試されるようで怖いと感じるようなプロジェクトこそ選ぶべきだと覚えておいてください。能力が試されるようなプロジェクトでなければ、取り組む価値はないのです。映画製作は決して容易いものではありません。だから絶え間ない努力を続けましょう。

プレイベント当日の模様は、動画でもご覧いただけます。

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