第38回ロッテルダム国際映画祭 報告

第38回ロッテルダム国際映画祭 レポート
映画祭期間:2009年1/21~31
●今年の傾向について
新映画祭ディレクターのルトガー・ウォルフソン(Rutger Wolfson)のもと、映画祭ロゴマークの刷新や部門の統合など、原点に立ち返って映画祭の持ち味を伸ばそうとする意気込みを感じさせた。
特集上映では、近年のトルコ映画の秀作を紹介する<Young Turkish Cinema>が充実したラインナップとなっており、タイガーアワード・コンペティションでの『Wrong Rosary』(Fazil Coskun, トルコ)の受賞も相まって、トルコ映画の躍進ぶりを印象づけていた。
●日本映画の上映について
『ノン子36歳(家事手伝い)』(第9回東京フィルメックスにて上映)がインターナショナル・プレミアされ、熊切監督としては01年『空の穴』、07年『青春金属バット』に続く3度目のロッテルダム参加となり、観客から温かく歓迎されていた。
オダギリジョーが初監督した長編『さくらな人たち』は、英語題名”Looking for cherry blossoms”が日本情緒を期待させることや当地でも俳優として知名度が高いこともあり、注目を集めていた。
上映された日本映画は多彩なラインナップとなっており、『トウキョウ・ソナタ』『アキレスと亀』『歩いても、歩いても』や自主製作映画『へばの』やドキュメンタリー『KIKOE』など、巨匠から新鋭まで日本映画の層の厚みを示すものとなった。
●アジア映画の傾向について (東アジアのホラー映画)特集 
 ロッテルダム映画祭では長年に渡って、アジア映画を精力的に取上げているが、今年は特集企画としてと題して、東アジア(東南アジア含む)のホラー映画を集めて上映した。
 ラインナップはホラーとしての完成度という基準にこだわらず、ジャンル映画としてホラーの企画に新鋭監督が起用された場合や製作上はホラーだが主題は別にある場合なども含まれており、ホラーという枠組の中で作家性がいかに発揮されるかという観点からも興味深いものとなっていた。また、特集にちなんで、ガリン・ヌグロホやリリ・リザ、アミール・ムハマドなど東南アジアの気鋭の映画作家たちによる、お化け屋敷をイメージしたインスタレーション展示も行なわれた。
 明解でインパクトのある「ホラー」というトピックスと作家性の強い映画監督を組み合わせることでイベント的に演出するのは、映画祭ならではの試みだといえる。また、ファンタスティック映画祭とは一味違うアプローチを提示してこそ、ロッテルダム映画祭であえて特集を組んだ意義があるといえるだろう。
(報告者:森宗 厚子)
【2009年授賞結果】
*タイガーアワード・コンペティション
“Be Calm and Count to Seven” Ramtin Lavafipour (イラン)
“Breathless” Yang Ik-June (韓国)
“Wrong Rosary” Mahmut Fazil Coskun (トルコ)
*Fipresci(国際批評家連盟)賞
『空を飛びたい盲目のブタ』”Blind Pig Who Wants to Fly” Edwin (インドネシア)
*NETPAC賞
“The Land” He Jia (中国)
*NETPAC Special Mention
“Agrarian Utopia” Uruphong Raksasad (タイ)
*KNF賞(Dutch Critics)
“Tony Manero” Pablo Larrain (チリ/ブラジル)
*Movie Squad賞(Rotterdam young People’s jury)
『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル (イギリス)
*観客賞(KPN Audience Award)
『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル (イギリス)
【2009年 開催結果について】
総来場者数:341,000人 (前年355,000人)
総ゲスト数:2,128人 (前年2,799人)
プレス数:357人 (前年 458人)
シネマート・ゲスト数:790人(前年 830人)

「SAPIO」で新作映画紹介を連載中

東京フィルメックスのスタッフが、劇場で公開されている新作を中心にご紹介する連載です。
「SAPIO」(2月18日発売号)では、園子温監督の「愛のむきだし」を、市山尚三プログラム・ディレクターがご紹介しています。
先日お伝えしました通り、ベルリン映画祭ではカリガリ賞&国際批評家連盟賞をW受賞するなど、熱狂的に迎え入れられました。東京での公開も、劇場の初日興行収入記録を更新するなど、盛り上がりを見せています。
ぜひ、お手に取ってご覧下さい。
「SAPIO」公式サイト

「マキシモは花ざかり」「世紀の光」が上映されます

第7回東京フィルメックスのコンペ部門で上映された、アウレウス・ソリト監督「マキシモは花ざかり」と、同じく特別招待作品として上映されたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督「世紀の光」が、「国際交流基金アジア映画ベストセレクション」で再び上映されます。
3月14日、15日の2日間に、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、インドから6本の作品が上映されます。前述の2本の他にも、日本初上映となる作品もありますので、ぜひこの機会にご覧ください。
公式サイトでは、市山尚三プログラム・ディレクターが「マキシモは花ざかり」に寄せた推薦文も掲載されています。
国際交流基金アジア映画ベストセレクション
■主催:国際交流基金/
 運営協力:財団法人国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
■会期:2009年3月14日(土)・15日(日)
■会場:赤坂・OAGホール
■入場料:800円(当日券のみ・各回入替制)
お問い合わせは
「国際交流基金アジア映画ベストセレクション」事務局 (エース・ジャパン内)
TEL:03-5562-9574 FAX:03-5562-4423
国際交流基金アジア映画ベストセレクション

「愛のむきだし」がベルリン映画祭でW受賞!

園子温監督作品「愛のむきだし」が、第59回ベルリン国際映画祭フォーラム部門で上映され、カリガリ賞とFIPRESCI賞(国際批評家連盟賞)に輝きました。
カリガリ賞はフォーラム部門で上映された作品の中から、3人の審査員によって選ばれる賞です。副賞の賞金4,000ユーロの半分は監督に、残りの半分はドイツでの公開を支援するために配給会社に贈られます。「愛のむきだし」は、受賞の発表数日前にドイツ国内での公開が決定していました。
また、FIPRESCI賞は国際批評家連盟に所属する批評家が、コンペ部門、パノラマ部門、フォーラム部門の各部門から1作品ずつ、3人の審査員が選出します。
同作は、第9回東京フィルメックスの特別招待作品として上映され、観客からの熱狂的な支持を受けて「アニエスベー・アワード」も受賞しています。
2月6日の公式上映では、園監督と安藤サクラさんも舞台挨拶にたち、ベルリンの観客との質疑応答にも応えていました。受賞が発表された時には既にお二人も日本に帰国されたあとだったため、東京フィルメックスでの上映のご縁で、林 加奈子ディレクターがカリガリ賞を代理受賞いたしました。
また、昨年の東京フィルメックスコンペ部門で上映された、ソヨン・キム監督の「木のない山」が、エキュメニック賞を受賞しています。
ベルリン映画祭 独立審査員による受賞結果一覧
フォーラム部門のサイトより カリガリ賞受賞理由、授賞式模様
FIPRESCI公式サイト

第59回ベルリン国際映画祭、開幕

第59回ベルリン国際映画祭が2月5日から開催されます。第9回東京フィルメックスで上映された「愛のむきだし」はフォーラム部門にてインターナショナルプレミア上映されます。
事務局スタッフによる紹介記事を「世界の映画祭だより」に掲載中ですので、どうぞご覧ください。
第59回ベルリン国際映画祭、開幕

第59回ベルリン国際映画祭 開幕

第59回を迎えるベルリン国際映画祭のプログラムの全容が先月27日に発表された。同映画祭は2月5日から15日にかけて開催される。
プログラムの内容に関しては、個々の作品の国籍や監督名などから判断する限り、同映画祭の例年の傾向から大きく逸脱したものではないように見える。もちろんレトロスペクティブを除けば基本的に新作の映画が上映されるため、その意味では内容は完全に新しいわけだが、メインのコンペティション部門を始め、パノラマやフォーラムといった部門に関しても、部門間、あるいは部門内のプログラミングのバランスは、ほぼ例年通りに保たれているといっていいだろう。
その一方、(もしかしたらプログラムの枠組み以上に)今回の映画祭のポイントとなるのは、世界的な不況が本格化して以降、初めて開かれる大規模な国際映画祭であるということかもしれない。併設されるヨーロピアン・フィルム・マーケットの動向と共に、深刻化する現在の経済状況がどの程度映画の世界に影響を及ぼし、またこれから及ぼしていくのかということが、今回の映画祭を契機に、ある程度は明らかになってくると思われるからだ。
因みに、日本映画に関しては、今年は残念ながらコンペティション出品作はないが、パノラマ部門に『ぐるりのこと。』(橋口亮輔監督)、フォーラム部門に『精神』(想田和弘監督)、『無防備』(市井昌秀監督)、『Deep in the Valley 谷中暮色』(舩橋淳監督)、『愛のむきだし』(園子温監督)、フォーラムエクスパンディドに『16-18-4』(西川智也監督)がそれぞれ選出された他、青少年向けの映画の部門であるジェネレーション部門にて、『そらそい』(監督:石井克人/オースミユーカ/三木俊一郎)が上映される予定だ。
また、昨年の東京フィルメックスで上映された作品としては、前述の『愛のむきだし』(渋谷ユーロスペースにて現在公開中)の他、審査員特別賞コダックVISIONアワードを受賞したソヨン・キム監督の『木のない山』がフォーラム部門にてヨーロッパ初上映される(また、キム監督と共にプロデューサーとして来日したブラッドリー・ラスト・グレイ監督の長編第2作『The Exploding Girl』も同じくフォーラム部門でプレミア上映されることも付記しておく)。
・ベルリン国際映画祭公式サイト(ドイツ語、英語):
http://www.berlinale.de
・プログラムは公式サイトの下記ページから検索が可能:
http://www.berlinale.de/en/programm/
berlinale_programm/programmsuche.php
主要部門のラインアップは以下の通り。

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第9回東京フィルメックス最優秀作品がアカデミー賞ノミネート&日本公開決定!

第9回東京フィルメックスのコンペ部門で最優秀作品賞に輝いたイスラエル映画「バシールとワルツを」(アリ・フォルマン監督)の日本公開が決定しました!
公開タイトルは「戦場でワルツを」、そして劇場もシネスイッチ銀座での公開と決まりました。
そして、今月末に発表される第81回アカデミー賞の外国語映画部門にもノミネートされました!
日本からは「おくりびと」(滝田洋二郎監督)もノミネートされ、国内の注目も高い同部門。この他には、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「クラス」も最終候補5作品に残っています。
「戦場でワルツを」はアカデミー賞前哨戦となる第66回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞や第43回全米批評家協会作品賞、そして1月31日に授賞式が行われたばかりの第61回全米監督組合(DGA)ドキュメンタリー映画賞と、立て続けに受賞して期待も高まっています。
気になる結果の発表は2月22日(予定)です。
東京フィルメックスの開催中には、アニメーション監督のヨニ・グッドマンさんが来日、観客との質疑応答などで応えてくださいました。
デイリーニュースやブロードキャストで、その模様がご覧いただけます。
「戦場でワルツを」Q&A
 同 動画
トークイベント「戦場でワルツを」予備知識講座
 同 動画
「受賞会見」
「閉会式」
 同 動画