第43回カルロビバリ国際映画祭 報告

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配慮細やかな映画祭
チェコ スタッフに情熱
チェコ西部の人口5万人余りの町で、第43回カルロビバリ国際映画祭(7月4~12日)は上映作品235本,14万人以上の観客動員を記録して幕を閉じた。組織運営が世界一と言えるほどのスタッフの情熱とそれを裏付ける豊穣な予算に支えられ、東京フィルメックスとしても数々の運営上のアイデアを教えてもらえた。審査員として参加してみて、会期終了前にメンバー集合の公式写真をくれるような心配りある映画祭を私は他に知らない。
社会主義政権下にはモスクワと隔年での開催だったので60回を超えるベネチアやカンヌに回数では及ばないが、94年から現在のエバ・ザオラローバをディレクターに国際的にも高評価を積み重ねた。メーン会場はプレスセンターやホテルも隣接して利便性にたけている。観客は若くて中には寝袋持参者やホテルのロビーで寝る人たちもいたが、そんな熱意を鷹揚に受け入れる穏やかさがこの大映画祭にはある。
開・閉幕式でのステージ上ライブ短編映画製作は心憎い演出だったし、功労賞受賞者とトロフィーを絡めたユーモア溢れる短編は上映前の良い雰囲気を作り出していた。閉幕式でスタッフ全員の名前が映画のエンドタイトルの如く紹介されるのも心に沁みる。人を大事にする映画祭の精神がスタッフを鼓舞し、彼らの細やかな心配りに結びつくのだろう。
当初ベルリンが6月末から7月頭の開催でカンヌとべネチアに挟まれ作品選考に苦慮して2月に移った経緯もあるほどだから、確かにこの時期プレミアで傑作ばかりをコンペに集めるのは至難の業である。それでも近年欧州のプロデューサーたちが新作紹介やプロジェクト製作の詰めにここを活用する機運が高まり、カンヌよりリラックスして商談している。今年日本からは「闇の子供たち」(阪本順治監督)だけだったが、欧州とのネットワーク固めに、また監督が新作の構想を膨らませるにも、カルロビバリは日本からも大いに活用しがいのある映画祭だと思えた。
東京フィルメックス/映画祭ディレクター,林 加奈子
(2008年8月2日 朝日新聞夕刊より転載)

第61回カンヌ国際映画祭レポート

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 今年のカンヌ国際映画祭で公式上映された日本映画は『トウキョウソナタ』のみだったが、ある視点部門審査員賞を受賞して存在感を示した。また、日本人俳優が出演し東京で撮影された『TOKYO!』も注目を集めた。これらは従来の枠組を越える新たな軌跡を描いて誕生し、今後の日本映画の可能性を予感させるものとなった。(東京フィルメックス事務局・森宗厚子)
 5月15日に上映された『TOKYO!』は日・仏・韓・独の合作による3部作。監督・脚本は、ニューヨークからミシェル・ゴンドリー(『恋愛睡眠のすすめ』)、フランスからレオス・カラックス(『ポーラX』)、韓国からポン・ジュノ(『グエムル-漢江の怪物-』)が参加し、俳優とスタッフはほぼ日本勢という布陣で作られた。
 ユニークな視点から東京を舞台にし、馴染みある俳優達やありふれた都市風景を被写体としながら、見過ごされていた異なる魅力や東京の本質を描き出し、新鮮な驚きをもたらす。フランス在住の日本人プロデューサーを中心に製作されたが、外国の資本や才能との協働により、日本の環境の中で生み出される映画のバリエーションを広げている。
 そして5月17日、『トウキョウソナタ』は大きな拍手によって迎えられた。1997年『カリスマ』が監督週間で上映されて以来、2001年『回路』がある視点、03年『アカルイミライ』がコンペで、とカンヌで度々紹介されている黒沢清監督だが、今回は「びっくりするくらい反応が良かった」と手応えを記者会見で語った。監督の新境地ともいえる家族のドラマは、世界に通じる普遍性を持ち高く評価された。「この作品が最後に与えるのは映画を見たというよりも、醜さ、恐ろしさ、そして素晴らしさと驚きを全て含むひとつの人生を生き抜いたという感情だ」(シネマティカル)という絶賛評もある。
 また、作品の成立過程も新しい展開を示している。外国との共同製作によるものだが、オーストラリア出身のマックス・マニックスが書いた脚本に興味を持った木藤幸江プロデューサーが、共同製作のパートナーとして、オランダや香港などを拠点に製作/国際セールスを手がける会社フォルティシモのバウター・バレンドレクトと組み、黒沢監督に声をかけたという経緯がある。
 初期段階で木藤プロデューサーは、経済産業省と日本映画の国際振興を担う組織ユニジャパンの主催による共同製作支援プログラム<J-Pitch>に参加して、2006年にカンヌでの企画ピッチングを行ない、スムーズに製作に取り掛かった。そして、2年を経て完成した作品を公式上映で披露し、受賞して作品的に評価されるとともに、ビジネス的にもすでに世界11カ国以上での配給が決まるなど成果を挙げている。
 木藤プロデューサーは、以前より外国映画の共同製作に携わっていたが、日本映画を初めて手がけるにあたり<J-Pitch>のバックアップが「大変ありがたかった」と語る。折しも2006年に始動した<J-Pitch>は改良を重ねつつ、ロッテルダム、ベルリン、香港、プサンなど主要映画祭の企画マーケットとの提携や脚本などの翻訳サポートといった実践的な支援体制を整えてきている。『トウキョウソナタ』をはじめとする実績を内外へのアピールとして、継続的な取り組みにより今後のさらなる展開が期待される。
 日本映画界は特殊性が高いとされ、他国に比べて共同製作がまだまだ活性化していないが、<J-Pitch>など公的支援により内外の映画界の橋渡しとなる効果的なプラットホームの整備が望まれている。
※『TOKYO!』晩夏、シネマライズ、シネリーブル池袋他全国公開予定(配給:ビターズ・エンド)
※『トウキョウソナタ』秋、恵比寿ガーデンシネマ他全国公開予定(配給:ピックス)
以上
(報告者:森宗 厚子)
*公明新聞 2008年6月6日(金) 掲載記事より転載

「それぞれのシネマ」が劇場公開されます。

昨年の第8回東京フィルメックスのオープニング作品「それぞれのシネマ」が、劇場公開されます。今年5月のカンヌ映画祭開催時に限定公開されましたが、今回は渋谷・ユーロスペースを始め、札幌・シアターキノ、大阪や名古屋でも公開が予定されています。
世界の巨匠が「映画館」を題材に製作した珠玉の短編の数々…。映画館で観てこその作品です。ぜひ、この機会にご覧ください。
「それぞれのシネマ」 公式サイト

「SAPIO」にて新連載、開始!

現在好評連載中の月刊アスキー誌上の新作レヴューに続き、今度は小学館から発行されている国際情報誌「SAPIO」にて新しく連載が開始しました。
連載タイトルは「THE WORLD FILMeX 映画を見れば世界がわかる」。"映画を通じて世界への様々な視点を広い角度から提供すること"を目指して、事務局スタッフによるリレー連載として、劇場などで公開中(もしくは公開間近)の作品の中から注目作品を紹介します。
発売中の号では、記念すべき第1回でアルベール・ラモリス監督による「赤い風船」と「白い馬」を紹介しました。SAPIOは毎月第2・第4水曜日の発売、次号は変則的に8月6日発売です。
また、月刊アスキーの今月号では「ホウ・シャオシェンのレッドバルーン」をご紹介しています。
これからも、東京フィルメックスがお薦めする2つの連載にご注目ください。
SAPIO 公式サイト
月刊アスキー 公式サイト

月刊アスキーにて、新作紹介連載中

「月刊アスキー」5月号より、林ディレクターによる新作レビューが好評連載中です。既報の通り、「ジェリー・フィッシュ」「パラノイドパーク」に引き続き、7月号ではイ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」、そして現在発売中の8月号では是枝裕和監督の「歩いても歩いても」をご紹介しました。
最新号9月号は、7月24日発売です。
月刊アスキー 公式サイト

<「映画」の時間>メイキング映像が完成しました。

2008年3月に開催された子ども映画制作ワークショップ<「映画」の時間>のメイキング映像が完成しました。現在、VOLUME ONEにて全34分(10本)のうち、4本を紹介しています。
メイキング全編、ならびに子どもたちが制作した完成作品5本が収録されたDVDを、ご希望の方に素材の実費負担のみの無料でお配りしております。詳しくはメールでお問い合わせください。
東京フィルメックス事務局 <「映画」の時間>係
E-mail: eiganojikan@filmex.jp
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アピチャッポン作品が上映されます。

現在、シネマート六本木で開催中のタイ式シネマ☆パラダイスにて、東京フィルメックスでお馴染みのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の作品が特別上映されます。
上映作品:
『真昼の不思議な物体』(2000年/83分/B&W)
『ブリスフリー・ユアーズ』(2002年/128分/カラー)
『トロピカル・マラディ』(2004年/118分/カラー)
など。
タイムスケジュールやトークイベントなど、詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
<タイ式シネマ☆パラダイス 公式サイト>