2006年03月20日
第56回ベルリン映画祭 レポート
映画祭の大切な役割の一つに、市場原理を貫徹すれば不要となってしまうような作品を擁護する、ということがあると思う。つまり、芸術的価値は高くとも商業的には厳しい作品をきちんと評価し、観客やプレスの注意をそこに集める、という役割だ。しかし、いかなるジャンルでもそうだが、そうした種類の作品への理解を支えているのはある程度以上の量的・質的な受容体験であり、そのことは逆に言うと、受け手全体の数を限定することにもつながってしまう。つまり、受け手(観客やプレス)にとっても、ある程度以上の時間と労力をその分野(ここでは映画)に投資しているということが、多かれ少なかれ前提になってくるわけである。しかも、そういった価値を共有できる受け手の層自体が決定的に収縮していることは間違いなく、また、それはある程度、世界的な傾向だとも言えるのではないかと思う。
投稿者 FILMeX : 10:39