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『豊山犬(原題)』チョン・ジェホン監督Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/22
11月22日(火)、有楽町朝日ホールにてコンペティション作品『豊山犬(原題)』が上映された。終映後に登場したチョン・ジェホン監督は、席を埋めた多くの観客から大きな拍手で迎えられ、寄せられた質問に丁寧に応じてくれた。
まず、司会の林 加奈子東京フィルメックス・ディレクターが「低予算とは思えない骨太な作品」と評したのを受けて、チョン監督は「低予算ながらも、情熱で映画を撮るという信念のもと、製作者、スタッフ、キャストが一体となって実現した作品」とコメント。
続いて会場からの質問に移り、終盤の印象的な場面について複数の質問が寄せられた。チョン監督は、「鳥のように休戦ラインを飛び越える主人公プンサンには、北にも南にも属さない平和の象徴として、南北の統一を祈願する韓国人の気持ちを込めました」と、主人公の人物像について語った。さらに、南の情報員と北の工作員を密室で対峙させる場面の意図について訊かれると、チョン監督は、「韓国では南北が休戦中であるという現実を忘れがちです。映画を見る若い世代がその現実をより身近に感じられるように、風刺の意味も込めて表現しました」と答えた。
次に、主人公にユン・ゲサンさんをキャスティングした経緯について質問が及んだ。チョン監督はシナリオを読んで真っ先にユンさんが浮かび出演をオファーしたものの、ユンさんは当時太っていたため出演を躊躇したとか。その後、ユンさんは1日5~6時間のアクショントレーニングを積み、監督と1日2時間の台本リーディングを行って、撮影に備えたそうだ。
また、プンサンをセリフのない設定にした理由について、チョン監督は「北と南ではアクセントが異なり、ソウルの言葉ならソウル、ピョンヤンの言葉ならピョンヤンと出身地が特定されます。プンサンは南北どちらにも属さない独立したキャラクターなので、セリフは必要ないと思いました」と説明した。
さらに、チョン監督は南北分断の認識についての個人的な経験も語ってくれた。監督が海外留学していた時、北朝鮮から来た学生と出会っても互いに警戒して言葉を交わせなかったそうだ。「その時、これがまさに分断だと認識しました。統一を果たせていない現実を、現在30代である自分の視点で、この作品で描きたいと思いました」
観客からは、本作の音楽についての質問が続いた。音楽監督は、韓国でも数々の人気アーティストの作品を手がけるパク・イニョンさん。
もともとは声楽を専攻していて、後に映画界に転身した経歴を持つチョン監督は、音楽の面で参加したいと強く希望していたそうで、「劇中、プンサンの自宅でカセットから流れる曲の声は私の声です」と思いがけないエピソードを披露し、場内を沸かせた。
最後に、林ディレクターがオダギリジョーさんのカメオ出演の経緯について尋ねると、場内からざわめきが起こった。オダギリさんが韓国を訪問した際、キム・ギドク監督を交えた食事の席で、チョン監督が冗談まじりで出演依頼をしたことがきっかけで実現したのだそうだ。特別出演扱いをしないで欲しいとオダギリさんから頼まれ、クレジットでは"軍人2"となっているとのこと。
ここで時間切れとなりQ&Aが終了。熱い思いを作品に託したチョン監督には、観客から惜しみない拍手が送られた。
『豊山犬(原題)』は11月24日夜、TOHOシネマズ 日劇にて再び上映される。また、2012年に劇場公開予定。
(取材・文:海野由子、撮影:米村智絵)
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