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『数立方メートルの愛』 A Few Cubic Meters of Love
イラン、アフガニスタン / 2014 / 90分
監督:ジャムシド・マームディ(Jamshid MAHMOUDI)

【作品解説】
アフガン難民たちが法の目をかいくぐりながら働いているテヘラン郊外の小さな工場。若いイラン人労働者のサベルはアフガン人労働者の娘マロナと密かにプラトニックな恋愛関係をはぐくんでいる。周囲の目を避けるため、二人は古びたコンテナの中で逢い、自分たちの未来を語り合う。だが、マロナの父親が違法労働者として摘発されてアフガニスタンに送還されることになり、事態は思わぬ方向に進んでゆく......。自身もアフガン難民であるジャムシド・マームディの監督デビュー作。緊張感を保ったドラマ展開と終盤のパワフルな描写はマームディの確実な演出力を証明している。2015年アカデミー賞外国語映画賞のアフガニスタン代表に選ばれた。











ジャムシド・マームディ


1983年、フガニスタンのパルヴァンに生まれる。幼少の頃に両親とともにパキスタンに、続いてイランに移住。早くから映画に親しみ、高卒後、テヘラン芸術大学の入学資格を得たものの、助監督として働く道を選ぶ。短編作品『Ageh Yek Rouz Zanha』(06)、『Delet Oumad』(07)を監督し、2008年にはテレビ映画『Mitouneh Akharish Basheh』を監督。その後数本のテレビ映画を監督した後、『数立方メートルの愛』(14)で長編映画監督デビューを飾った。





11/28 『数立方メートルの愛』 Q&A
from ブロードキャスト 2014/11/29


 
11/28 『数立方メートルの愛』 Q&A
有楽町朝日ホール
  
ジャムシド・マームディ(映画監督)
ナウィド・マームディ(プロデューサー)
 
林 加奈子(東京フィルメックス ディレクター)

ショーレ・ゴルパリアン(通訳)
 
 
イラン、アフガニスタン / 2014 / 90分
監督:ジャムシド・マームディ(Jamshid MAHMOUDI)
 
A Few Cubic Meters of Love  
Iran, Afghanistan / 2014 / 97 min.
Director: Jamshid MAHMOUDI





新情報は順次、追加されます。


『数立方メートルの愛』ジャムシド・マームディ監督、ナウィド・マームディ プロデューサーQ&A
from デイリーニュース2014 2014/11/28

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11月28日、有楽町朝日ホールにてコンペティション部門の『数立方メートルの愛』が上映された。本作は、イラン人の若者とアフガン難民の娘との恋物語を軸に、イランとアフガニスタンの人々が共生しようとする姿が描かれており、自身もアフガン難民であるジャムシド・マームディ監督の長編デビュー作である。上映後のQ&Aには、ジャムシド・マームディ監督と、監督の兄でプロデューサーのナウィド・マームディさんが登壇し、会場では熱心なやりとりが行われた。


(注:Q&Aでは、会場から結末をめぐって多く意見が寄せられたことから、本レポートにおいても結末について触れていることをあらかじめご了承いただきたい。)


まず、「美しく素晴らしい映画」と評した林 加奈子東京フィルメックス・ディレクターが、プロデューサーのナウィドさんに製作の契機について訊ねた。ナウィドさんは「日本のみなさんとこの作品を観ることができて嬉しいです」と挨拶し、アフガニスタンを旅行中に目に留まったひとつの記事が本作の端緒となったことを明かした。それはコンテナの中で2人の男女が死亡した記事だったという。


次に、マームディ監督が「映画祭に招待していただきとても光栄です。みなさんとお会いできたことに加え、この映画祭での大きな収穫はイラン映画の巨匠アミール・ナデリ監督とお会いできたこと。夢のようです」と挨拶。会場におられたナデリ監督にも観客から拍手が送られ、「この映画祭で感じたことは、観客を含めてみなさんが心を込めて映画に接しているということで、とても感動しています」と続けた。


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ここで、マームディ監督から、本作のキャスティングについて説明がなされた。主なイラン人はプロの俳優で演劇出身者を起用。アフガン難民の少女マロナの父親役もイラン人だが、誰が見てもアフガン人のように演技しているという。少女マロナはアフガン難民で、花売りのストリートチルドレンだったそうだ。工場で働く労働者たちは、実際にイランの建設現場で働いていたアフガン人たち。マームディ監督は、「プロの役者と素人をうまく合わせバランスをとることが、演出する上で最も難しかった」と振り返った。


早速、会場からの質問に移ると衝撃的な結末をめぐって数多くの意見が寄せられ、その中でマームディ監督は、「アフガニスタンのみならず他の国においても難民の問題は存在します。私自身が難民として非常に苦労してきたので、デビュー作であるこの映画でその苦労を一度説明させてください。この作品は事実に基づいていますが、私自身が心の中にしまっていたことをすべて話したいのです」と作品への思いを吐露した。


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結末に他の選択肢はなかったのかと問われると、ナウィドさんは「事実に基づき、最初からハッピーエンドにするつもりはありませんでした。それは、伝統を重んじ宗教や習慣に縛られている人たちに対して、恋愛を妨げてはならないとのメッセージを伝えたかったから」と答えた。また、実はディテールの中に結末を示唆するコードが数多く含まれていることをマームディ監督が明かすと、林Dが「この作品は緻密な伏線がはりめぐらされている」と応じた。


続いて、父と娘の愛情関係を強く感じたという観客の感想に、マームディ監督が父親役のキャラクターについて補足した。主人公の少女マロナの父親は誇り高き元アフガン軍人で、現在の状況に怒りを抱きつつも怒りを沈黙で表わしている。ただ、母親のいないマロナの母親代わりも務めていて、月経痛の娘に温めたレンガを渡したり、汚れた居住環境でも娘を身綺麗にさせ、悪魔の目を払うために娘の美しい寝顔にお香を焚くなど、武骨ながらも父親の深い愛情が示されているという。


さらに、二人が一緒にいるのであれば、ある意味ハッピーエンドではないかという意見も出され、実際にイラン人とアフガン人が恋に落ちた場合はどうなるのかと問われると、奥様がイラン人だというナウィドさんが次のように答えた。「私たちもこの映画の結末が暗いとは思っていません。二人が一緒になることで愛は成就するのだと思います。国際結婚となるとさまざまな法的な手続きが必要なのはどこの国でも同じことですが、この映画で言いたかったことは、恋に国境も法律もないということ。恋に落ちるときは、他のことはどうでもよく、ただ恋に落ちるだけでしょう」


結末に対する意見が続いたせいか、マームディ監督から観客に問いかける一幕も。「みなさんは、なぜこの話がハッピーエンドではないと思われるのでしょうか。この映画祭のオープニング作だった日本映画はとても暗い悲劇でした。私たちの映画は日本人にとってそれほど重たい話なのでしょうか」と。続けて、「この映画の結末は暗いものではないと自分を納得させるために、日本映画をたくさん見ることにします」とユーモアを交えて語り、会場から笑いを誘った。そして、「この映画を支持する方、拍手をお願いします」と林Dから呼びかけると、会場からひときわ盛大な拍手が起こった。


最後に、マームディ監督が「本作はアカデミー外国語映画賞のアフガニスタン代表に選ばれました。本選に残れるよう応援してください」と締めくくった。イランでは2週間後に公開を控えているという本作だが、日本での配給は現在未定。この作品の魅力をひとりでも多くの観客に感じてもらえることを願いたい。


(取材・文:海野由子、撮影:白畑留美)

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