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『ダリー・マルサン』舞台挨拶、Q&A
from デイリーニュース2014 2014/11/26
11月26日、有楽町朝日ホールでコンペティション部門『ダリー・マルサン』が上映され、上映前の舞台挨拶には、髙橋泉監督をはじめ、出演者の廣末哲万さん・大下美歩さん・松本高士さん・並木愛枝さんが登壇した。ワールドプレミアとなった本作は『むすんでひらいて』(07)、『あたしは世界なんかじゃないから』(12)が東京フィルメックスでも上映された、映像ユニット「群青いろ」の髙橋監督の最新作。会場には「群青いろ」ファンも多く見られ、上映後のQ&Aでは高橋監督が制作の舞台裏を語った。
心の中に葛藤を抱えた者たちの交流を描いた本作は「出口のない状態でスタートした」と言う高橋監督。上映前の舞台挨拶で「この日を迎えられて本当に嬉しい」と喜びを語った。また、聾唖者ダリー役の大下さんが「じっくりコトコト煮込んで骨の髄から旨味が出たような作品。言葉の音を越えた声をどうか受け取って下さい」と挨拶すると会場から暖かい拍手が送られた。
上映後のQ&Aには高橋監督が再び登壇し、観客からの質問に答えた。「群青いろ」は自主映画的制作スタイルをとっており、本作もスタッフが集まれる週末を中心に16日から18日程度で撮影された。現場で俳優以外のスタッフは2・3名しかおらず、カメラや音声もその場にいる人が担当するため、高橋監督自らカメラを回すこともあるという。
企画のアイディアをどのように得たのかという質問に対しては「これまでも、基本的に人と人が対話をする作品を描いてきた。今回は、身体を使って対話をしたいという発想から始まった。ダリーは聴覚障がい者だが、障がいについての話を描きたかったわけではない。また、個人的に村上春樹の世界観が好きなので、特に『ねじまき鳥クロニクル』をイメージしました」と明かした。
劇中、手話を自在に操る見事な演技を披露した大下さんについて話が及ぶと「実は撮影の1年前に企画ができており、大下さんに台本を渡していた。その後、私は別の仕事が忙しくて撮影を始められず、久しぶりに大下さんに会ったら手話が上達していて驚いた。耳が聞こえない役をどのように演じるのか楽しみにしていたが、耳で聞こえないものは目で見てやろうという芝居だったので嬉しかったです」と、その熱意を絶賛した。
作品全体のスケールの大きさが印象に残ったという観客から、本作で挑戦したことについて尋ねられると一言「頑張りました」と高橋監督。「同じことを続けていたらお客さんは次の作品を楽しみにしない。お客さんに見て驚いてほしいので、常に新しい試みをしたいと思っています」と語った。
最後に、高橋監督は廣末さんや並木さんといった「群青いろ」作品常連俳優たちの見事な演技アンサンブルも強調。「本当にバランスが超良いです」と太鼓判を押す俳優陣にも注目していただきたい。劇場公開は未定だが、観客の皆さんにはソーシャルメディア等で本作の魅力を発信していただくことをお願いすると共に、再びスクリーンで「群青いろ」ワールドを享受できる日を望みたい。
(取材・文:小嶋彩葉、撮影:穴田香織、白畑留美、村田まゆ)
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