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東京フィルメックス・コンペティション






『扉の少女』(仮題) A Girl at My Door / DOHEE YA
韓国 / 2014 / 119分
監督:チョン・ジュリ(JUNG July)
配給:CJ Entertainment Japan

【作品解説】
主人公はソウルから港町ヨスに派遣されてきた女性警察官ヨンナム。地方都市の習慣になじめずに孤独な日々を送っていたヨンナムは、近所に住む少女ドヒと知り合う。母親が蒸発し、義父と祖母に暴力をふるわれているドヒを救おうとするヨンナム。だが、ある日、ヨンナム自身の過去が人々に明らかになり、ヨンナムは窮地に陥る......。DV(家庭内暴力)、セクシャルマイノリティに対する偏見、外国人の不法就労問題など韓国社会に内在する様々な社会問題を絡めつつ、社会から阻害された二人の女性の力強いドラマを作り上げたのはこれが長編デビューとなるチャン・ジュリ。名匠イ・チャンドンがプロデュースを担当した。カンヌ映画祭「ある視点」部門で上映された。






チョン・ジュリ


韓国出身。ソウルの成均館大学、韓国芸術総合学校映像院に学ぶ。2007年、短編映画『A Man Under the Influenza』を監督。同作はプサン映画祭で短編映画を対象とするソンジェ賞を受賞した。その後、短編映画『11』(08)、『The Dog that Came into my Flashlight』(10)を監督。『扉の少女』(14)が長編監督デビュー作である。





11/24『扉の少女』(仮題) Q&A
from ブロードキャスト 2014/11/26


 
11/24 『扉の少女』(仮題)Q&A
有楽町朝日ホール
 
チョン・ジュリ(映画監督)
ペ・ドゥナ(俳優)
 
市山 尚三(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)
根本 理恵(通訳)

 
韓国 / 2014 / 119分
監督:チョン・ジュリ(JUNG July)
 
 
A Girl at My Door / DOHEE YA / 『扉の少女』(仮題)
Korea / 2014 / 119 min.
Director: JUNG July





新情報は順次、追加されます。


『扉の少女』(仮題)チョン・ジュリ監督Q&A
from デイリーニュース2014 2014/11/27

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11月27日、TOHOシネマズ 日劇での『扉の少女』(仮題)上映後、チョン・ジュリ監督によるQ&Aが行われた。ぺ・ドゥナさん演じる警察官ヨンナムと、キム・セロンさん演じる少女ドヒ、社会から疎外された二人の女性の出会いから展開される緊張感に満ちたドラマに、観客からは主演女優二人の演技を絶賛する声が相次いだ。チョン監督は「お褒めの言葉は必ず二人に会った時に伝えたい」と感謝を述べた。


まず、長編デビュー作で同性愛や未成年者への虐待といった難しいテーマを選んだ理由についての質問が上がった。
それについてチョン監督は「この作品にはさまざまな要素が描かれていますが、私が一番描きたかったのは寂しい二人の人物の出会いです。寂しさを強調するために、二人をこのような状況に置きました」と語り、また「脚本を書いているときは自分自身が寂しく、辛い時期でもあった」と明かした。「ドヒは自分が寂しいことを理解すらしていない。それは、彼女がこれまで一度も誰かの愛情の対象になったことがないからなのです。それとは対照的に、ヨンナムは孤独を充分すぎるほどに自覚していますが、それを克服する方法を知らず、克服できるとも考えていません」


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「主演の二人の涙が美しく印象に残った」という観客からは「どのような演技指導を行ったのか」との質問が寄せられた。監督は「非常に才能豊かな二人の女優を起用できたことは本当に幸運で、恵まれていたと思います」と応じ、「私がやったのは、彼女たちが可能な限り役柄に感情移入できるようにお話を作り、この世界にとけ込めるようにすること。そして心の底から正直にいろんなことを話し合いました」と語った。撮影に入ってからはチョン監督から言葉を掛ける必要はほとんどなく、二人が互いにインスピレーションを与え合い、呼吸を合わせて演じてくれたそう。


続いての質問は、ドヒに暴力を振るう継父ヨンハについて。彼も寂しい人物だと感じた、という観客から、人物造形をどのように意識したのか、と問われると「今回の映画に登場する人物たちすべてを、筋の通った人物として造形することを心がけていました」とチョン監督。それぞれに人生があり、あらゆる行動、言葉には背景がある。限られた時間の中にも、それが反映されているように描こうとしたという。ヨンハは救いがたい悪人であるように見えるが「それも彼の人生、彼なりの理由があってそうなっているのだということを、演じたソン・セビョクさんが見事に表現してくれたと思います」と語った。


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この映画のもうひとつの登場人物ともいえる、寂れた港町ヨス。監督はこの町を舞台に選んだ理由を、「韓国の南端にあり、ソウルからは非常に離れている。ヨンナムが逃げるように辿り着いた場所として、ふさわしいと考えた」と説明した。そして、ヨスは監督自身が生まれ、高校時代まで過ごした町でもある。大学進学で町を離れてからはお盆や正月に短期間帰省するだけだったが、今回のシナリオを書くために長く滞在し、ヨスの知らなかったさまざまな面に気付くことになった。幼い頃からの懐かしい思い出の数々と結びついた風景であると同時に、まるで見知らぬ場所であるかのように、新しい姿で立ち現れたのだという。


最後の質問は、ラストシーン、ヨンナムがドヒに掛ける言葉について「日本語字幕・英語字幕ともに、こうしたシチュエーションでの表現としては少し変わっているように感じたが、どのような意図だったのでしょうか」というもの。
それに対して「この言い回しには二人の行く末についての私自身の願いが込められていて、韓国語の台詞でもそのような表現になっています。英語字幕を作成する際に、翻訳に特にこだわった点」とチョン監督。今回の日本語字幕を手掛けたのはこのQ&Aの通訳を務めた根本理恵さん。「日本語字幕でもその意図を汲んでくださって、ありがとうございます」と監督から感謝の言葉が述べられると、会場からも根本さんに大きな拍手がおくられた。


寄せられた質問の鋭さに感心しきりだったチョン監督。夜遅い時間にも関わらず、ロビーで待ち構えた熱心な観客に丁寧に応じる姿が印象的だった。


『扉の少女』(仮題)は、2015年G.W.に渋谷ユーロスペースでの公開が決定している。


(取材・文:花房佳代、撮影:白畑留美)

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『扉の少女』(仮題)チョン・ジュリ監督、ぺ・ドゥナさんQ&A
from デイリーニュース2014 2014/11/24

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11月24日、有楽町朝日ホールにてコンペティション部門の『扉の少女』(仮題)が上映された。本作は、韓国の港町ヨスを舞台に、ソウルから派遣された女性警察官と家族から虐待を受けているひとりの少女との交流が描かれている。上映後に行われたQ&Aには、本作が長編デビューとなるチョン・ジュリ監督と主演のペ・ドゥナさんが登壇し、会場は朝早くから詰めかけた多くの観客で興奮と熱気に包まれた。


初めに、チョン監督が「こんなに朝早くから大勢のみなさんに来ていただき驚いています。ありがとうございます」と述べ、ペさんは「おはようございます(日本語で)。久々に日本の観客のみなさんにお会いできて本当に嬉しく思っています」と挨拶した。


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挨拶が終わるや否や、待ちきれない観客から早くも手が挙がり質疑応答に移った。まず、日本映画への出演を経てハリウッドへ進出しているペさんに対して、めざましい活躍の裏で感じているストレスやそのストレスの解消法を訊ねる屈託のない質問が出ると、会場は一気に和やかなムードとなった。ペさんは「面白い質問ですね」と笑顔で応じながら、『リンダ リンダ リンダ』(05)や『空気人形』(09)では日本語を、ハリウッド映画では英語を駆使したことに触れ、「俳優というのは演技をしながら言葉で伝えなければならないので、その作業はストレスになる」と努力の跡をにじませた。しかし、今回の作品では母国語で演技することができたためストレスは一切なかったそうだ。「韓国映画にはこれからもできる限り出演し続けたいです。自分の持っているものを100%発揮できると思うから」と、今後の意気込みも語ってくれた。


ストレス解消法については、この作品で演じた女性警察官ヨンナムのようにお酒を飲んで解消することもあるそうだ。大好きなワインを飲むと不思議と英語の台詞がスラスラ出てくると言う、茶目っ気たっぷりのペさん。また、台詞のない舞台を観に行ったりオーケストラの演奏を聴きに行ったりして、耳を休ませ身体で感じることも心がけているそうで、そうしたリフレッシュ方法にもプロらしい一面をのぞかせた。


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次に、本作でレズビアンが扱われることになった経緯について質問が投げかけられた。それに対してチョン監督は、「どうしたら寂しい二人が出会うことができるか、ということでかなり悩んだ」と明かした。実母に捨てられ義父から虐待を受けている孤独な少女をまず思いつき、その少女と出会う主人公ヨンナムの心寂しい境遇を人物設定として考える中で、男性中心社会で珍しい女性の幹部警察官であることや、社会から疎外されている同性愛者というアイデンティティを見出したそうだ。


続いて、『子猫をお願い』(01)や『クラウド アトラス』(12)に続き本作でも女性監督との作業にあたったことについて問われると、「女性監督や新人監督と仕事をするのが大好き」と答えたペさん。というのも、新人監督とは作品を一緒に作り上げていく一体感を強く感じられ、また、女性監督とは女性のキャラクターを作る上でいいヒントを得ることができると信じているからだという。特にチョン監督とは年齢が近いため、友人のように、姉妹のように接することができたそうだ。さらに、本作のスタッフは少数精鋭のチームだったため、友人のようであり、お兄さんやお姉さんのようでもあり、みんなで少女役のキム・セロンさんの世話をして、現場はとても家族的な雰囲気だったそうだ。また、チョン監督は、厳しい条件で働いていた現場のスタッフを常に励ましてくれたペさんを「心強い同志」と感謝をこめて評した。そして、来場していた演出チームが紹介され、会場から温かい拍手が送られた。


最後に、ラストシーンの暗い画調の意図について訊かれると、チョン監督は「二人の物語はこれからスタートするという意味合いがあり、シナリオを書いた者として今後の二人を心配しています」と説明した。さらに、主人公ヨンナムのその後について話が及ぶと、チョン監督は、「過去の一件があっても警察を辞めなかったヨンナムは、人間の尊厳を守るために最後まで辞めずに黙々と仕事をするはず」と語った。ペさんも撮影中に感じたことを踏まえて、「ヨンナムはどこにいても制服を着ていた。どんなことが起きても制服を脱ぐことがなく、警察官であることが当然のことだと思っているのではないか」と応え、チョン監督と息の合ったところを見せてくれた。


ここで時間切れとなり、Q&Aが終了。会場からは名残惜しそうな様子がうかがえた。その直後にロビーで急遽開催されたサイン会では、チョン監督とペさんが熱心な観客たちと気さくに言葉を交わす姿が印象的だった。『扉の少女』(仮題)は、来年の劇場公開が決定。
なお、11月27日(木)にTOHOシネマズ日劇にて2回目の上映があり、チョン監督のQ&Aを予定している。


(取材・文:海野由子、撮影:明田川志保、穴田香織、村田まゆ)
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