東京フィルメックス・コンペティション

『気球』
Balloon
作品詳細

中国 / 2019 / 102分
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)

大草原に暮らす家族を主人公に、一人っ子政策が人々に与える影響をチベット文化の視点から描いた作品。ペマツェテンの前作「轢き殺された羊」の主人公を演じたジンパが父親役を演じる。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映された。

監督 ペマツェテン(Pema Tseden)
ムービー

11/26 『気球』Q&A

2019.11.28

11/26 『気球』Q&A
有楽町朝日ホール

ペマツェテン(監督)

市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
海老原 志穂(通訳)

中国 / 2019 / 102分
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)

China / 2019 / 102min.
Director: Pema Tseden

ニュース

【レポート】『気球』ジンパさんQ&A

2019.11.27

11月26日(火)、有楽町朝日ホールにて、コンペティション作品『気球』が上映された。チベットの草原で3人の息子たちと暮らす夫婦の生活と葛藤を描いた。上映後のQ &Aには、主演俳優のジンパさんが登壇した。

ジンパさんは、ペマツェテン監督の前作『轢き殺された羊』(第19回東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞)でも、主演を務めた。今回が初めての来日となる。

 

最初に、市山尚三 東京フィルメックス・ディレクターが、客席に向けて「『轢き殺された羊』を観た方はどれ位いらっしゃいますか?」と尋ねると、ほとんどの人の手が挙がっていた。

ジンパさんは俳優になる以前、詩や文学の創作、教員、政府の仕事などを経験。2011年に初めて短編映画に出演し、2014年から本格的に俳優の道に進んだ。同年、北京でペマツェテン監督と初めて出会い、2017年に『轢き殺された羊』を、2018年に『気球』を撮影し、共に作り上げてきた。

「ペマツェテン監督は、私にとって様々なことを教えてくれる先生であり、友人です」とジンパさん。

 

続いて、客席との質疑応答に移った。劇中、暴れる羊を捕まえる場面が登場するが、その技術をどのように身につけたかという観客からの質問に、ジンパさんは「放牧を行う地域で育ったので、羊の扱いには子どもの頃から慣れていました」と答えた。

また、「子役の演技も自然で、本当の親子のようだった」という観客から、その秘訣を尋ねられると、撮影の1ヶ月前から一緒に過ごし、コミュニケーションをとったと明かした。一例として、お小遣いをあげてみたり、好きなことを言わせてみたり、とジンパさんが現実的な手段を挙げると、会場から笑いが起きた。

「嘘のない演技が、最も良いと考えています。私たちの演技を褒めてくだる方が多いのですが、それは彼らとのコミュニケーションが上手くいったからだと思います」

 

最後の質問は、アミール・ナデリ監督から。「編集も音も演技も演出も素晴らしく、こんなに純粋な映画をひさしぶりに観ました」と絶賛し、脚本について尋ねた。ジンパさんは「もともと脚本は完成していたのですが、撮影をする中で少しずつ修正していきました。映画の冒頭から順番に撮影したわけではありません。撮影の1-2ヶ月の間に、私の演技が上達するにつれて、色々な場面を加えていったのです」と説明した。

 

終始、和やかな雰囲気の中で行われたQ &A。ジンパさんも出演する、ソンタルジャ監督の『巡礼の約束』が2020年2月8日(土)より岩波ホールで公開されることが発表され、会場から温かな拍手が送られた。

 

(文・宇野由希子、写真・明田川志保)