第61回カンヌ国際映画祭レポート

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 今年のカンヌ国際映画祭で公式上映された日本映画は『トウキョウソナタ』のみだったが、ある視点部門審査員賞を受賞して存在感を示した。また、日本人俳優が出演し東京で撮影された『TOKYO!』も注目を集めた。これらは従来の枠組を越える新たな軌跡を描いて誕生し、今後の日本映画の可能性を予感させるものとなった。(東京フィルメックス事務局・森宗厚子)
 5月15日に上映された『TOKYO!』は日・仏・韓・独の合作による3部作。監督・脚本は、ニューヨークからミシェル・ゴンドリー(『恋愛睡眠のすすめ』)、フランスからレオス・カラックス(『ポーラX』)、韓国からポン・ジュノ(『グエムル-漢江の怪物-』)が参加し、俳優とスタッフはほぼ日本勢という布陣で作られた。
 ユニークな視点から東京を舞台にし、馴染みある俳優達やありふれた都市風景を被写体としながら、見過ごされていた異なる魅力や東京の本質を描き出し、新鮮な驚きをもたらす。フランス在住の日本人プロデューサーを中心に製作されたが、外国の資本や才能との協働により、日本の環境の中で生み出される映画のバリエーションを広げている。
 そして5月17日、『トウキョウソナタ』は大きな拍手によって迎えられた。1997年『カリスマ』が監督週間で上映されて以来、2001年『回路』がある視点、03年『アカルイミライ』がコンペで、とカンヌで度々紹介されている黒沢清監督だが、今回は「びっくりするくらい反応が良かった」と手応えを記者会見で語った。監督の新境地ともいえる家族のドラマは、世界に通じる普遍性を持ち高く評価された。「この作品が最後に与えるのは映画を見たというよりも、醜さ、恐ろしさ、そして素晴らしさと驚きを全て含むひとつの人生を生き抜いたという感情だ」(シネマティカル)という絶賛評もある。
 また、作品の成立過程も新しい展開を示している。外国との共同製作によるものだが、オーストラリア出身のマックス・マニックスが書いた脚本に興味を持った木藤幸江プロデューサーが、共同製作のパートナーとして、オランダや香港などを拠点に製作/国際セールスを手がける会社フォルティシモのバウター・バレンドレクトと組み、黒沢監督に声をかけたという経緯がある。
 初期段階で木藤プロデューサーは、経済産業省と日本映画の国際振興を担う組織ユニジャパンの主催による共同製作支援プログラム<J-Pitch>に参加して、2006年にカンヌでの企画ピッチングを行ない、スムーズに製作に取り掛かった。そして、2年を経て完成した作品を公式上映で披露し、受賞して作品的に評価されるとともに、ビジネス的にもすでに世界11カ国以上での配給が決まるなど成果を挙げている。
 木藤プロデューサーは、以前より外国映画の共同製作に携わっていたが、日本映画を初めて手がけるにあたり<J-Pitch>のバックアップが「大変ありがたかった」と語る。折しも2006年に始動した<J-Pitch>は改良を重ねつつ、ロッテルダム、ベルリン、香港、プサンなど主要映画祭の企画マーケットとの提携や脚本などの翻訳サポートといった実践的な支援体制を整えてきている。『トウキョウソナタ』をはじめとする実績を内外へのアピールとして、継続的な取り組みにより今後のさらなる展開が期待される。
 日本映画界は特殊性が高いとされ、他国に比べて共同製作がまだまだ活性化していないが、<J-Pitch>など公的支援により内外の映画界の橋渡しとなる効果的なプラットホームの整備が望まれている。
※『TOKYO!』晩夏、シネマライズ、シネリーブル池袋他全国公開予定(配給:ビターズ・エンド)
※『トウキョウソナタ』秋、恵比寿ガーデンシネマ他全国公開予定(配給:ピックス)
以上
(報告者:森宗 厚子)
*公明新聞 2008年6月6日(金) 掲載記事より転載

第9回東京フィルメックスの公式サイトがオープンしました!

今年のメインビジュアルは、「映画の未来へ」を視覚化して、未来性・発信性を表現した光の輪をモチーフとしています。
これから映画祭本番に向けて、少しずつ情報をアップしていきますので、どうぞご注目ください。プログラム発表は10月上旬を予定しています。

「それぞれのシネマ」が劇場公開されます。

昨年の第8回東京フィルメックスのオープニング作品「それぞれのシネマ」が、劇場公開されます。今年5月のカンヌ映画祭開催時に限定公開されましたが、今回は渋谷・ユーロスペースを始め、札幌・シアターキノ、大阪や名古屋でも公開が予定されています。
世界の巨匠が「映画館」を題材に製作した珠玉の短編の数々…。映画館で観てこその作品です。ぜひ、この機会にご覧ください。
「それぞれのシネマ」 公式サイト

「SAPIO」にて新連載、開始!

現在好評連載中の月刊アスキー誌上の新作レヴューに続き、今度は小学館から発行されている国際情報誌「SAPIO」にて新しく連載が開始しました。
連載タイトルは「THE WORLD FILMeX 映画を見れば世界がわかる」。”映画を通じて世界への様々な視点を広い角度から提供すること”を目指して、事務局スタッフによるリレー連載として、劇場などで公開中(もしくは公開間近)の作品の中から注目作品を紹介します。
発売中の号では、記念すべき第1回でアルベール・ラモリス監督による「赤い風船」と「白い馬」を紹介しました。SAPIOは毎月第2・第4水曜日の発売、次号は変則的に8月6日発売です。
また、月刊アスキーの今月号では「ホウ・シャオシェンのレッドバルーン」をご紹介しています。
これからも、東京フィルメックスがお薦めする2つの連載にご注目ください。
SAPIO 公式サイト
月刊アスキー 公式サイト

月刊アスキーにて、新作紹介連載中

「月刊アスキー」5月号より、林ディレクターによる新作レビューが好評連載中です。既報の通り、「ジェリー・フィッシュ」「パラノイドパーク」に引き続き、7月号ではイ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」、そして現在発売中の8月号では是枝裕和監督の「歩いても歩いても」をご紹介しました。
最新号9月号は、7月24日発売です。
月刊アスキー 公式サイト

<「映画」の時間>メイキング映像が完成しました。

2008年3月に開催された子ども映画制作ワークショップ<「映画」の時間>のメイキング映像が完成しました。現在、VOLUME ONEにて全34分(10本)のうち、4本を紹介しています。
メイキング全編、ならびに子どもたちが制作した完成作品5本が収録されたDVDを、ご希望の方に素材の実費負担のみの無料でお配りしております。詳しくはメールでお問い合わせください。
東京フィルメックス事務局 <「映画」の時間>係
E-mail: eiganojikan@filmex.jp

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アピチャッポン作品が上映されます。

現在、シネマート六本木で開催中のタイ式シネマ☆パラダイスにて、東京フィルメックスでお馴染みのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の作品が特別上映されます。
上映作品:
『真昼の不思議な物体』(2000年/83分/B&W)
『ブリスフリー・ユアーズ』(2002年/128分/カラー)
『トロピカル・マラディ』(2004年/118分/カラー)
など。
タイムスケジュールやトークイベントなど、詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
<タイ式シネマ☆パラダイス 公式サイト>

「第8回東京フィルメックス」公式カタログを通販でお求めいただけます。

昨年(2007年)の公式カタログをホームページから通信販売にてお買い求めいただけます。上映された全作品の解説とデータを掲載、また山本薩夫特集とリッティク・ゴトク特集についての解説を、それぞれ佐藤忠男氏と松岡環氏が寄せてくださいました。
また、第1回~第7回のカタログも同様に販売しております。
どうぞお求めください。
<公式カタログ通販のご案内>

「シークレット・サンシャイン」 6月7日より公開

昨年の第8回東京フィルメックスでクロージング作品として上映され、満員の観客から絶賛の拍手で迎えられた「シークレット・サンシャイン」が、来週末の6月7日(土)よりシネマート六本木、池袋シネマ・ロサほかで公開されます。
イ・チャンドン監督にとって「オアシス」以来5年ぶり、その間に韓国の文化観光部の長官という要職を経て久々に届けられた新作は、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、チョン・ドヨンが主演女優賞を獲得するという快挙を成し遂げました。昨年の東京フィルメックスで上映された後も、アジア・フィルム・アワードで3冠を達成するなど、世界中で高い評価を得ています。
昨年は東京フィルメックスコンペティション部門の審査委員長も務めてくださったイ・チャンドン監督。トークショーの中で語ってくださった静かな言葉の奥にある、力強さが映画にもあらわれているように感じます。
ぜひ、この機会にご覧ください。
<「シークレット・サンシャイン」公式サイト>
<「イ・チャンドン監督を囲んで」>
■テキスト
■動画
<イ・チャンドン×柳美里>
■テキスト
■動画

「月刊アスキー」で林ディレクターによる新作紹介コーナーが連載中

アスキー・メディアワークスから発売されているITビジネス誌「月刊アスキー」の5月号より、林 加奈子ディレクターによるレビューが連載中です。
“アフター5コンシェルジュ”と題されたこのページは、映画の他にも展覧会、音楽、ヘル スケア、グルメなど、ライフスタイル系の情報を各分野のプロフェッショナルがおすすめするコーナーです。
ここで「東京フィルメックス通信」として、毎月公開される映画の中から1本をご紹介しています。5月号では「ジェリー・フィッシュ」、現在発売中の6月号では「パラノイドパーク」を紹介しました。
最新号7月号は、5月24日発売です。ぜひ、手に取ってご覧ください。
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