第58回カンヌ国際映画祭 公式部門ラインアップ

第58回カンヌ国際映画祭の公式部門のラインアップが発表された。
http://www.festival-cannes.fr/
今年のコンペティション部門でまず目を引くのは、ラース・フォン・トリアーやダルデンヌ兄弟といったカンヌと関係の深い監督たちの作品がラインアップの多くを占めていることである。この傾向は、その半数以上がコンペ初参加だった昨年のラインアップからのゆり戻しという側面が強い(ということを主催者自らが半ば認めている)が、その中にあって、アジアからは、侯孝賢を除けばコンペに初参加の監督たちの作品が顔を揃える、という結果となった。他の部門に目を向ければ、コンペでの常連組重視のバランスをとってか、「ある視点」部門は出品作の約半数が初監督作品という非常にフレッシュなラインアップとなっており、この部門の存在意義が今一度確認できる内容となっているのが注目に値する。加えて、『スター・ウォーズ』シリーズの最新作にしてラスト作である『シスの復讐』を特別上映するなどして映画祭に派手さを加える一方、例えばカンボジア出身の映画作家リティ・パニュの新作を他方で堅実に上映するなど、“カンヌ”の懐の深さを改めてアピールするようなラインアップになっているといえる。あとは、実際の作品がそれぞれどのように評価され、受け入れられるかである。(文=神谷直希)
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第6回チョンジュ国際映画祭 開幕

(2005年4/28?5/6、韓国全州にて)
http://www.jiff.or.kr/en_2005/
チョンジュ国際映画祭は、「Freedom, Independence, and
Communication」のキャッチフレーズのもと、インディペンデントやDV作品を含め新進の才能を紹介している。第6回となる今年は、30ケ国より170本の作品が上映される。
昨年より全体的な上映本数は減少したが、より落ち着いて作品が見られるように本数を絞り、実験映画部門は規模を縮小しながらも監督を招いての特集上映をプログラミングし、また地元の観客が映画祭に親しみやすいように家族向けの作品を取り上げるなど配慮がうかがえる。
また、上映会場の分散を改善し、オープニングとクロージングを除いて商店街内の映画館街のシネコンを使用しチケットセンターやゲストオフィスなども同地区に設置し、不便さを解消するよう試みている。
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第55回ベルリン国際映画祭 レポート

2005/2/10-2/20
http://www.berlinale.de/en/HomePage.html
 ディーター・コスリックがディレクターに就任して、早くも今年で4年目を迎えたベルリン国際映画祭。就任2年目にタレント・キャンパス(*1)、3年目に「ベルリナーレ・スペシャル(*2)」という新セクションを設けるなど新たな試みを続けてきたコスリック体制だったが、本年度はそうした特筆すべき新味はなく、昨年までに整えられた体制を概ね維持していたように見受けられた。「『今年の映画祭では何が新しいの?』と誰もが私に聞くが、私はこう答えることにしている。『映画さ』と」とは、Screen誌のインタビューによる、コスリック本人の弁である(Screen at the Berlinale, Day 1)。
 そんなコスリック体制が今年掲げた主要テーマは“アフリカ”(*3) 。このことは各所で再三強調されていたので、結果的に南アフリカ映画『ウ・カルメン・イ・カエリチャ』が最高賞の金熊賞を受賞したことは、主催者側にとっては悪いことではなかったはずだ。そして、このようにアフリカに関係する映画が公式プログラム(*4)に複数組まれていた以上、そこに社会的・政治的なテーマが多分に含まれていることは、ある種の必然だったといえるだろう。それに加えて、その他の地域の作品(その多くはヨーロッパ)にもシリアスな社会派の映画が顔を揃えていたことは、ここ日本でも複数の新聞・雑誌報道が伝えていた通りである。
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第29回香港国際映画祭 開催

映画祭期間:2005年3月22日?4月6日
http://www.hkiff.org.hk/hkiff29/index.html
28部門にて全240本を上映。
オープニング作品としては、中国から顧長衛(クー・チャンウェイ)監督の「孔雀」と日本から山田洋次監督「隠し剣 鬼の爪」、またオープニング・ナイトとして香港映画の新作「精武家庭(House of Fury)」(監督・出演:スティーブン・フォン、出演:アンソニー・ウォン、マイケル・ウォン、ダニエル・ウー、ツインズ)が上映される。
クロージング作品としては、中国のジャ・ジャンクー監督「世界」とフランスのアラン・コルノー監督「Words in Blue」。
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第34回ロッテルダム国際映画祭 レポート

映画祭期間:2005年1/26?2/6
<今回のロッテルダム映画祭のトピックス>
●今年の傾向について
映画祭ディレクターが、オランダ人のサンドラ・デン・ハマー氏の単独担当となったこと、および、オランダの映画監督で昨年11月にイスラム過激派により暗殺された、テオ・ヴァン・ゴッホ監督の作品上映が話題となったことなど、ややオランダよりの傾向があったように感じられた。
また昨年と引き続いての特集企画<Homefront USA>への注目など、政治的な関心が高かったことも指摘できる。
タイガーアワード・コンペティションについては、どちらかというと暗い作品が多かった中で、受賞作としては、目を引く美しさや視覚的にインパクトのあるものに重きが置かれたように思われる。
●日本映画の上映について
今回のロッテルダムで上映された日本映画はというファンタ系作品を集めた部門に作品が多く、バイオレンス色の濃いものが目立った。あるいは、その他の部門では対照的に静謐な作品といったラインナップとなっていて、両極端のようにも感じられた。(欧米から見た90年代以降の日本映画に対する視点として、バイオレンスなものか、あるいはスローなものか、というステレオタイプのようなものがあって、そういった興味にあてはまる作品が注目を集める機会が多いということがあるのかもしれないと思われる)。
『おそいひと』(第5回東京フィルメックスにてプレミア上映)は、その独創性が好評を持って受け入れられ、柴田剛監督と主演の住田雅清さんによるQ&Aも盛り上がっていた。
●内田吐夢作品(7本)の上映について
旧作にスポットライトを当てる部門において、ミニ特集として、第5回東京フィルメックスでの特集上映も好評を博した内田吐夢作品が7本上映された。映画祭デイリーペーパーで大きく掲載されたり、また批評家や映画祭関係者などから注目を集めていた。
特に『恋や恋なすな恋』や『飢餓海峡』が激賞されていた。
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第23回ファジル国際映画祭 レポート

開催期間:2005年1月31日?2月10日 (マーケット開催期間:2月4日?8日)
今年からコンペティションに2部門を新設して、より大きな成長を目指したファジル国際映画祭が、今月10日に閉幕した。新設されたのはスピリチュアル・シネマ部門とアジアン・シネマ部門。映画祭事務局からのニュース・リリースはもちろん、期間中に連日発行されるデイリーニュースや、クロージングセレモニーなどのイベントの際にも、この2つの新設部門を積極的にアピールしていた。
受賞結果については下に報告してある通りだが、この"改革"によって上映作品数は増加し、主催側が目指す「より大きな映画祭としての存在感」に近づいたものと言える。今年からクロージング・セレモニーが2日間に分けて行なわれたことも、その拡大路線を象徴している。最終日には従来の目玉部門である(イランのアカデミー賞とも言える)国内コンペティションの各賞が発表される「ナショナル・セレモニー」が行なわれたが、その前日には今回の新設2部門や国際コンペティションなどを併せて表彰した「インターナショナル・セレモニー」が行なわれた。単純に眺めればセレモニーが増えて華やかになったとも考えられるが、実際には国際コンペティションのために映画祭に出席した海外ゲストは少なく、代理受賞が数多く見うけられて盛り上がりに欠けた点も指摘できる。
ロッテルダム映画祭とベルリン映画祭という強力な2つのヨーロッパの映画祭に挟まれた日程の中で、今後、新設の2部門を含めて国際コンペティションがもっと海外ゲスト・出品側にとって魅力ある部門となることが重要な課題であろう。
映画祭期間中には、約30年振りとも言われる記録的な大雪に街中が真っ白に包まれたが、観客は例年通り熱狂的に映画祭を迎え入れていた。市内各所の一般の映画館が映画祭の会場として使用されているのだが、どこもチケットを求める観客で大にぎわいである。
10日後の2月19日(イスラム暦のため、毎年若干変わる)が、イランのもっとも重要な宗教儀式のひとつであるアーシュラーの日にあたり、町中は赤や緑などの原色のネオンサインで色とりどりにライトアップされて、華やかな雰囲気に包まれている。ファジル映画祭はこの熱狂的な1日を華やかに演出するイベントとして、市民から熱烈に受け入れられている。
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第55回ベルリン国際映画祭 開催

2005/2/10-2/20
http://www.berlinale.de/en/HomePage.html
今年で55回目を迎えるベルリン国際映画祭(2月10日?20日)のラインアップが、2月1日に正式に発表された。
コンペティション部門の作品は全部で26本。その内21本が金熊賞を争い、残る5本はコンペ外作品として上映される。地域的には欧米の作品が多くを占めるが、内容的にはルワンダや南アフリカ等アフリカに関係する作品や、昭和天皇を扱ったA.ソクーロフ監督作『The Sun (Solnze)』、パレスティナ問題に迫った『Paradise Now』など、地域的・政治的な作品も目を引く。尚、アジアからは日本映画1本、台湾映画1本、中国映画1本の計3本がコンペティションに選ばれている。
新作の日本映画では、コンペティション部門に山田洋次監督の『隠し剣 鬼の爪』が前作『たそがれ清兵衛』に引き続き選出された他、併設の「パノラマ」部門に大林宣彦監督の『理由』、「フォーラム」部門に羽田澄子監督『山中常盤』と風間詩織監督の『世界の終わり』と中川陽一監督の『真昼の星空』、児童映画部門に岩井俊二監督の『花とアリス』と瀬木直貴監督『千年火』が、それぞれ選ばれている。 また、山本寛齋監督の映画版『アボルダージュ』と木下恵介監督の『二十四の瞳』(1954年)が特別上映される他、市川崑監督の『雪之丞変化』(1963年)がレトロスペクティブ部門で、そして昨年の東京フィルメックスで特集が組まれた内田吐夢監督の『恋や恋なすな恋』(1962年)がフォーラム部門でそれぞれ上映されることが決まっている。
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第23回ファジル国際映画祭 開催

23rd Fajr International Film Festival Programs
2005/1/31-2/10
http://www.fajrfilmfest.com/index-eng.htm
イランの首都テヘランで開催されているファジル国際映画祭が、1月31日より開幕する。イランの国家的事業の一つであるこの映画祭では、毎年30本前後ものイラン映画の新作がプレミア上映されており、世界の映画関係者の注目を集めている。
ファジル映画祭には、各種のコンペティション部門が設けられているが、メインは、イラン映画のみを対象とした国内コンペティションと、外国映画を含めた国際コンペティションである。国内コンペでは、作品賞や監督賞などの他にも、撮影や編集、音楽などの技術スタッフの各賞も選考しており、イラン版アカデミー賞とも言える盛り上がりをみせている。
今年からスピリチュアル・シネマ、アジアン・シネマという2つのコンペティションが新設された。これらの部門にどのような作品が集められたかというのも、映画祭の成功を判断する上でも興味深い。
今回、プレミア上映されるイラン映画のうち、日本でも馴染みの深い名前を挙げるならば、『運動靴と赤い金魚』や『少女の髪どめ』などのマジッド・マジディ"The Weeping Willow"、『風の絨毯』などのカマル・タブリズィー"A Piece of Bread"、昨年のイラン映画祭2004で『低空飛行』が紹介されて、来日も果たしたエブラヒム・ハタミキア"The Color Purple"などが、国内コンペティションで上映される。
日本映画は、萩生田宏治『帰郷』が、各国の映画祭で話題になった作品を集めた"Festival of Festivals"で、菅原浩志『ほたるの星』がスピリチュアル・シネマ、栗山富夫『ホーム・スイートホーム2』がアジアン・シネマで上映される他、『呪怨』の清水崇によるハリウッド版リメイク『The Grudge』が特別上映部門で、ホウ・シャオシェン『珈琲時光』が国際コンペティションで上映される。
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第34回ロッテルダム国際映画祭開催

2005/1/26-2/6 開催
 今回から、従来の<長編劇映画部門>と<フーベルト・バルズ・ファンド作品(Hubert Bals Fund)>を変更し、3つの新設部門に再編成された。それにより、ロッテルダム映画祭の目指す、若々しい革新的な映画製作への支援、国際的な視野、作家主義の擁護をプログラムとしてより明確に打ち出している。
 監督特集としては、フランスのブノワ・ジャコー、ロシアのYevgeni Yufit、また地域での特集として、ロシアのオルタナティブ映画特集、また、東南アジアをとりあげ、マレーシア、シンガポール、インドネシアなどのインディペンデント映画を特集する。
 日本からの映画としては、タイガーアワード・コンペティションに『ある朝、スープは』(高橋泉)、クロージング上映作品に『ハウルの動く城』(宮崎駿)のほか、昨年の東京フィルメックス・コンペティション作品『おそいひと』(柴田剛)も上映される。
 また、昨年の東京フィルメックスでの特集で再評価の機運が高まった内田吐夢監督の作品が7本上映される。海外にて異なる視点で見られることによって、内田監督の作品がどのように受けとめられていくのか今後の展開が期待されるところである。
(終了後に映画祭レポートをお送りします。)
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【第5回東京フィルメックス ディレクターズ・トーク】

■新しいチャレンジの10本が揃ったコンペティション
林:一番大事なのは、東京フィルメックス・コンペティションというのはアジアの新進作家の10本ということになっていますよね。実際今年もそうなんだけど、事実、カンヌに出て賞をとったり、サン・セバスチャンでグランプリをとったり、ロカルノで賞をとった作品だったり、結果的に2004年の世界の映画の動向を如実に物語る10本を選んでいた、ということですね。私たちが選んだ後に他の映画祭での受賞が決まったものもあるんですが。国のバランス的にはイランのものが3本、韓国、中国のものが1本だけだったりとかいったことはあるんだけれども、この10本を観れば今の世界の動きは間違いなく見える。
市山:そうですね。
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