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特集上映(1)『生誕100年 中村登』
共催:
松竹
、【字幕制作】
東京都
、
アーツカウンシル東京
、
東京文化発信プロジェクト室
(
公益財団法人東京都歴史文化財団
)
今年の第70回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にて『夜の片鱗』(64)が上映され、その美しく洗練された画面構成とあふれんばかりの叙情が、世界中から集まったプロフェッショナルたちを驚かせました。
第14回東京フィルメックスでは、この『夜の片鱗』を始めとした中村登監督の特集上映を行ないます。
※英語字幕付きニュープリントは、東京都及び東京都歴史文化財団の協力により作成されます。
「それにしても中村登は心臓に悪い。何かにつけ、あまりにも急で極端だ。女は息せき切って人生を転落し、男はあっという間に絶望の淵に立っている。愛情にせよ、殺人にせよ、家族団らんにせよ、この監督の手にかかっては全部が流れ落ちる巨大な滝のようだ。見ればわかる。さながらジェットコースター...いや、私はこれを垂直落下メロドラマと呼びたい」
(黒沢 清 映画監督)
「ヒロインの世界の想像力豊かな映像化が、『夜の片鱗』を売春を描いた最も心を打つ映画の1本とたらしめている。カメラのアングルと動き、色彩設計、編集などのすべての成果が、彼女の絶え間ない犠牲を鮮やかに描き出し、ネオンサインにけばけばしく飾られた街並みを私たちの感情に内在化させる。逃げ出す機会を得ながらも、その街並みがいつも彼女を引き戻すのだ。文体的には王家衛の『花様年華』を先取りし、ダグラス・サークのもっとも感動的な作品と反響している」
(ニック・ジェイムズ Sight & Sound)
「スタイリッシュな演出と、美しき桑野みゆきの鮮烈な演技との、巧みなバランス。桑野は『青春残酷物語』(大島渚)で欧米の観客に知られている。そして中村登を同時代の松竹ヌーヴェルヴァーグの巨匠たちと比べて見ることは、とても意義があるだろう。そこには、女性への虐待、解放への苦闘、急激な経済成長の中での社会環境の過酷さといった共通したテーマが見られる。しかし、他の巨匠たちが自らの映画的・文化的な探求を進めるのに対して、中村監督はそうした状況を背景にしながらも、主人公の女性がたどる"遥かな旅"にあらゆる人が自分を重ね合わせられるような物語を紡いでいる。『夜の片鱗』は、作家的な映像の探求、社会問題、大衆映画的な訴求力との間にある興味深く、巧みなバランスを体験できるだろう」
(ステファノ・フランチャ・ディ・チェッレェ ヴェネチア国際映画祭クラシック部門)
1951年/91分
脚本:柳井隆雄、田中澄江 原作:田中澄江
出演:笠智衆、山田五十鈴、高峰秀子、岸惠子、佐田啓二
©1951 松竹
»作品詳細
裕福ではないが笑顔の絶えない家族。会社から勤続25年の表彰で金一封をもらえることになった父は、子どもたちに欲しいものを買ってやれると大喜びする。しかし、表彰式の帰り道に金をすられてしまい...。松竹大船調の小市民映画の伝統を受け継ぎ、豪華キャストとスタッフを確かな演出力でまとめあげた、清々しさが心に染み入る傑作。そそっかしくも心優しい父を笠智衆、やりくり上手な良妻賢母を山田五十鈴、父母の苦労に心を痛める絵描き志望の長女を高峰秀子、無邪気な女学生の次女を本作がデビュー作となる岸惠子が演じている。
1957年/105分
脚本:椎名利夫、中村登 原作:北条秀司
出演:佐田啓二、岡田茉莉子、桑野みゆき、沢村貞子、山村聰、日守新一
©1957 松竹
»作品詳細
新派で上演された北条秀司の原作の映画化。東京・南千住の連れ込み旅館の女主人たねは、三人の子供たちと暮らしていた。役所勤めの長女・松子は同僚の一夫との縁談が進んでいたが、母が妾であったために一夫の母の猛烈な反対で破談となる。自暴自棄となった松子は家出し、キャバレーのダンサーに身を落とす。やがてある事件をきっかけに一夫と松子は再会するが......。結ばれぬ男女の情念だけでなく、優しさ故にねじれてしまう家族の繊細な感情を丁寧に掬い取る。土砂降りの夜に登場人物たちが、各々の感情を爆発させるクライマックスは見どころ。
第70回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門出品
1964年/106分
脚本:権藤利英 原作:太田経子
出演:桑野みゆき、平幹二朗、園井啓介、岩本多代 、富永美沙子、菅原文太
©1964 松竹
»作品詳細
19歳の芳江は、工場で働くかたわら、夜はバーに勤めていた。そこで知り合ったサラリーマンの英次に人生を託して身体を許したが、実は彼はヤクザ組織に身を置いていた。やがて金を無心するだけでなく、売春を強要するようになった英次に耐えきれなくなった芳江は逃げ出そうとするが...。どうしようもない男と知りつつ離れることのできない、複雑な心理に揺れ動く女性を桑野みゆきが好演。印象的な色彩設計やカメラワークが映像に深みのある美しさを生み、物悲しさをたたえた叙情的な世界を作り出すことに成功している。
【中村登 プロフィール】
NAKAMURA Noboru
1913年8月4日、東京・下谷に生まれる。1936年東京大学文学部卒業と同時に助監督試験を受けて松竹に入社、大船撮影所で斉藤寅次郎、島津保次郎らにつく。1941年6月監督に昇進、記録映画『生活とリズム』(1941)を1作目に製作。続いて同年に劇映画としてのデビュー作である『結婚の理想』(1941)のメガホンを執る。『我が家は楽し』(1951)では、大船調のホーム・ドラマで優れた演出ぶりを発揮して好評を得る。松竹カラー映画の2作目となる『夏子の冒険』(1953)では、カラー映画にふさわしい華麗な演出を展開し、第一線監督としての名声を築いた。川端康成原作の『古都』(1963)は、岩下志麻の二役で双生児を登場させる物語のユニークさと京都の季節ごとの美しさを折り合わせた作品となり、アカデミー外国語映画賞にノミネートされる。有吉佐和子の原作を映画化した『紀ノ川』(1966)は、明治、大正、昭和に生きた女の姿を描き出し、ベテラン監督の風格を見せつけた名作である。1981年5月20日、死去。享年68才。勲四等旭日章を受勲。生誕100年にあたる2013年8月開催の第70回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にて『夜の片鱗』が上映され、高い評価を集めた。
11/23(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町にて
連動企画「中村登監督生誕100年記念特集上映」開催!
11/23(土)~11/29(金):モーニングショー 10:20
11/30(土)~12/6(金):レイトショー 21:00
【上映作品】
英語字幕付きニュープリント『我が家は楽し』『土砂降り』『夜の片鱗』を含む、全10作品
『集金旅行』(1957年/102分/モノクロ)
『いろはにほへと』(1960年/109分/モノクロ)
『河口』(1961年/88分/カラー)
『古都』(1963年/105分/カラー)
『二十一歳の父』(1964年/96分/カラー)
『暖春』(1965年/93分/カラー)
『わが闘争』(1968年/108分/カラー)
(以上7作品は英語字幕なし)
上映作品の詳細やスケジュールは、劇場HPあるいはお電話にてお問い合わせください。
TEL: 03-6259-8608 劇場HP»
http://www.ttcg.jp/human_yurakucho/
【東京文化発信プロジェクト】
東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施しているプロジェクトです。都内各地での文化創造拠点の形成や子供・青少年への創造体験の機会の提供により、多くの人々が新たな文化の創造に主体的に関わる環境を整えるとともに、国際フェスティバルの開催等を通じて、新たな東京文化を創造し、世界に向けて発信していきます。
www.bh-project.jp
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