11/5 『彼女はなぜ、猿を逃したか?』Q&A


11/5 『彼女はなぜ、猿を逃したか?』Q&A
有楽町朝日ホール

髙橋 泉(監督)
廣末 哲万(俳優)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

日本 / 2022 / 98分
監督:髙橋泉(TAKAHASHI Izumi)

Japan / 2022 / 98 min.
Director:TAKAHASHI Izumi

11/5 『彼女はなぜ、猿を逃したか?』Q&A


11/5 『彼女はなぜ、猿を逃したか?』Q&A
有楽町朝日ホール

髙橋 泉(監督)
廣末 哲万(俳優)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

日本 / 2022 / 98分
監督:髙橋泉(TAKAHASHI Izumi)

Japan / 2022 / 98 min.
Director:TAKAHASHI Izumi

11/5 『彼女はなぜ、猿を逃したか?』舞台挨拶

11/5 『彼女はなぜ、猿を逃したか?』舞台挨拶
有楽町朝日ホール

髙橋 泉(監督)
藤嶋 花音(俳優)
廣末 哲万(俳優)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

日本 / 2022 / 98分
監督:髙橋泉(TAKAHASHI Izumi)

Japan / 2022 / 98 min.
Director:TAKAHASHI Izumi

11/5 授賞式

11月5日(土)、第23回東京フィルメックスの授賞式が有楽町朝日ホールで開かれた。コンペティション部門の9作品を対象に、来場者の投票による観客賞、学生審査員による学生審査員賞、リティ・パン監督ら国際審査員が選出した各賞が発表された。

観客賞には工藤将亮監督の『遠いところ』が選ばれた。工藤監督は「賞を取れると全然思っていなかったのでこんな格好で来てしまいました」と恐縮しつつ、「才能ある監督たちが集まるコンペティションで競うことができて幸せでした。観客賞はお客さんに僕たちの映画が届いたということなので、何よりもうれしい。皆さまに心から感謝します」と喜びを語った。受賞作は、沖縄の夜の街で働く10代の母親を通して若年層が直面する貧困を見つめた意欲作。「この映画の何が見どころかと言われれば、やはり俳優陣の演技です。この作品を信じてくれた俳優陣に心から感謝したい。そして、沖縄の関係者の皆さま、協力して下さったすべての皆さまにこの賞を捧げたいと思います」と挨拶した。

学生審査員賞は、はるおさきさん( 東京藝術大学大学院)、山辺愛咲子さん( 武蔵野美術大学)、高野志歩さん( 立教大学)の3人による選考でマハ・ハジ監督の『地中海熱』が受賞した。今回は来日がかなわなかったハジ監督は「素晴らしい賞を与えて下さった映画祭と審査員の皆さんに感謝します。いま東京でみなさんと一緒にいられたら、さらに夢のような体験になったでしょう」とメッセージを寄せた。

そして、いよいよ国際審査員による選考結果の発表。委員長のリティ・パン監督(フランス・カンボジア )、キム・ヒジョン 監督(韓国)、映画プログラマーのキキ・ファンさん( 香港)の3人が登壇し、まずスペシャル・メンションとしてアリ・チェリ監督の『ダム』の名を挙げた。既に離日したチェリ監督はビデオメッセージで「観客の皆さんと一緒に上映を見ることができて嬉しかった。この栄誉をスーダンやベイルートにいるスタッフや友人たちと分かち合い、参加してくれたすべての人に捧げたいです」と語った。

審査員特別賞には2作品が選ばれた。ひとつめはダヴィ・シュー監督の『ソウルに帰る』。来日できなかったシュー監督はビデオメッセージを寄せ、「受賞は夢のようです。観客の皆さまとご一緒できなかったのは残念でしたが、選んでいただき本当に感謝しています。東京フィルメックスで自作を上映するのは夢でした。できれば日本で配給会社を見つけて、もっと多くの人に見てもらえることを願っています」と期待を込めた。

もうひとつはチョン・ジュリ監督の『Next Sohee(英題)』。チョン監督は前日に韓国に戻っていたが、受賞の知らせを聞いて急遽会場に駆けつけた。「脚本を書き、撮影し、編集している間は、この映画祭に来て皆さんにお会いできるとは想像もしませんでした。韓国社会だけの小さな話だと思っていたからです。でも、一昨日にこの会場で皆さんがこの映画に心から共感して下さる姿を見て感動しました。本当に久しぶりに作った映画に大きな賞をいただき感謝します」と語り、「最強の同志」だという出演者のペ・ドゥナさんと主人公を演じたキム・シウンさんに賞を捧げた。チョン監督はさらに「私の映画の中の現実よりもっと惨憺たる現実に、映画祭の間ずっと心を痛めていました。受賞に勇気をもらい、私達を結びつけてくれた映画の力を信じ、自分のいる場所で全力を尽くして映画を作っていきたいです」と力強い決意で挨拶を締めくくった。

最優秀作品賞はマクバル・ムバラク監督の『自叙伝』に決まった。インドネシアの田舎町の大立者とその下で働く若者の愛憎を通して強権支配の危うさを描いた。大きな拍手のなかステージに立ったムバラク監督は、「これは私の初めての長編映画です。完成までは5年がかり。撮影をした村全体と世界中の友人の力を借りて完成にこぎつけました。なので、この作品はまさに友情の産物です。サポートして下さった皆さん、長い間ありがとうございました」と晴れやかな笑顔で感謝を述べた。

講評に立った審査委員長のパン監督は「今回の上映作すべてに圧倒されたということをまず申し上げたい。様々なスタイルの映画と出会うことができ、審査員として大変うれしかったです」と上映作品の水準の高さを称賛。「ということで、本来は2作品のところ、今回は特別に4作品を選ばせていただきました。おいしいアイスを食べると、あと1個!もう1個食べたい!ってなりますよね。私達も同じ。我慢できずについたくさん選んでしまいました」と笑顔で語った。

 

コンペ部門の受賞発表に先立ち、映画祭会期中の10月31日~11月5日に実施したアジアの映画人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー」の企画コンペティションの結果も発表された。今年は公募で選ばれたアジア各地の15人の若手監督やプロデューサーが参加。赤坂のゲーテ・インスティテュートを会場に、第一線の映画人の指導を受けた。ベルリン国際映画祭との協賛企画ということで、11月2日には日本を公式訪問中のシュタインマイヤー独大統領も視察に訪れた。

企画コンペは、受講者がプレゼンテーションした新作映画の内容や製作プランを講師陣が審査した。スペシャル・メンションにマウン・サンさん(ミャンマー)の「Future Laobans」とシャルロット・ホン・ビー・ハーさん(シンガポール)の「TROPICAL RAIN, DEATH-SCENTED KISS」が選ばれ、最高賞のタレンツ・トーキョー・アワード2022はソン・ヘソンさん(韓国)の「Forte」が受賞した。

ソンさんは「一緒に時間を過ごした受講生仲間の皆さん、そして素晴らしい講師の皆さんに触発されました。講師のおひとり(アンソニー・チェン監督)がこのプログラムの修了生だということにも勇気づけられました。貴重な学びの時間をありがとうございます」と喜びを語った。会場には6日間のプログラムを共にした受講生も集まり、受賞者が発表されるたびにひときわ大きな拍手と歓声を送っていた。

文・深津純子
写真・明田川志保、吉田留美

11/3『同じ下着を着るふたりの女(原題)』Q&A

11月3日(木)、コンペティション部門の『同じ下着を着るふたりの女(原題)』が有楽町朝日ホールで上映された。勝ち気で攻撃的なシングルマザーと内向的な20代の娘の確執を描くキム・セイン監督の長編デビュー作。上映後はキム監督、娘の同僚役のチョン・ボラムさん、撮影監督のムン・ミョンファンさんの3人が登壇し、観客の質問に答えた。

本作はキム監督の韓国映画アカデミー卒業制作作品。昨年の釜山国際映画祭でワールドプレミア上映され、ニューカレンツ賞、観客賞など5冠に輝いた。相手に憎悪を募らせる一方で共依存から抜け出せない親子をなぜテーマに選んだのか。そこから質疑はスタートした。

「短編作品を作っていて、相手を完全に憎むことも愛することもできないという関係を探求してみたくなった。そういうアイロニカルな関係が韓国社会にあるとしたら何だろう? と考え、母と娘に思い至りました」とキム監督。韓国ではこのところ母と娘を描くドラマや本が増えている。「この映画のプロットを練り始めた2016年頃は、仲のいい母娘を美しく描いたものが多かった。でも、私の周囲を見渡すと、それとは違う関係がいろいろある。そこで、別の形の母と娘を描いてみたいと思ったんです」

母と娘の対立が極まった時に起きる停電のシーンが強い印象を残す。暗闇に目を凝らすような長いショット。撮影のムンさんは「僕が見ても息苦しいと感じるシーンなので、みなさんもつらかったのでは。ちょっと申し訳ない気持ちです」と切り出し、「当初はもう少し明るい照明設計を考えていたのですが、『ほとんど何も見えない状況を観客にも体験してほしい』という監督の考えに共感し、ギリギリまで光量を落としました」と説明した。手持ちカメラによる撮影も、「登場人物を遠くから眺めるのではなく、その人物の感情の流れに沿うように撮りたい」という監督の意向で決めたという。

配役についても多くの質問が集まった。物語をパワフルに牽引する母スギョンは「一歩間違うと嫌な人になりかねない」とキム監督。「なので、役者さん自身の魅力で嫌われそうなところを相殺してほしかった。スギョン役のヤン・マルボクさんと初めて会った時、若々しいエネルギーに満ちているうえ愛おしさも感じ、この方ならしっかり表現してくれるだろうとお願いしました」と振り返る。一方、娘のイジョンは、セリフより目で多くを語れることが重要だった。「出演したイム・ジホさんは目が奥まで澄んでいた。この人なら目だけで様々な感情を表現してくれると思いました」。

イジョンの日常に風穴を開ける同僚ソヒを演じたのがチョン・ボラムさん。キム監督は「ソヒの人物像を作る上でのキーワードが『適切な優しさ』。完全に突き放さないが、完全に受け入れることもない。自分の一線をしっかり守っている人物にしたかった。チョンさんにお会いしたとき、すごく優しくて、同時に一本筋が通っている感じがして、この人だ! と思いました」と起用の理由を語った。

当のチョンさんは、「監督の言う『適切な優しさ』という言葉がなかなか難物で……」と告白。「自分の一線をどう守るかが難しそうだったので、ソヒがイジョンを完全に受け入れられない理由を考えることにしました。ソヒは自分の人生を守るために、距離を置く選択をする。そこに共感したいと思い、ソヒがどんな人生を歩んできたのかを監督に尋ねたところ、イジョンと同様に母との確執を経験しそこから独立しようと頑張っている人物だ、と。そこで、イジョンやユジョンの葛藤にも共感しながら、ソヒの人物像を作っていきました」と役作りのプロセスを振り返った。

撮影現場での俳優とのコミュニケーション方法を問われたキム監督は、「商業映画を撮るのは初めてだったので、正直なところ撮影中はほとんど余裕がなかった。なので、現場に入る前の段階で俳優さんとコミュニケーションを取るよう努力しました。脚本について話し合うというより、それぞれがどんな人生を歩んできたかについていろんな話をしました」と語った。

自分は口下手だというキム監督。言葉で思いをしっかり伝える自信がなかったため、作品のヒントになりそうな音楽や絵や本を出演者と共有するなど、意思疎通に様々な工夫をした。母役のヤンさんとは劇中で彼女が経営するのと同じよもぎ蒸しの店に一緒に出掛けて体験し、娘役のイムさんとはスギョンが歩く道を巡りながら話をしたという。

「最初に企画概要を書いた当時、母親に対するネガティブな感情をここまでむき出しにした作品は他になかった。他人には共感できない私だけの感情だったら……と不安になり、母子関係の本をたくさん読みました。(精神科医の)斎藤環さんや(『母がしんどい』などの)田房永子さんの漫画といった日本の本にも感銘を受け、スタッフに配って一緒に読みました。だから、こうして日本の皆さんにお会いできて本当に嬉しく思います」

最後の質問は、劇中で母がリコーダーで演奏する曲にブラームスの「ハンガリー舞曲」を選んだ理由について。キム監督は「元はロマ(ジプシー)の音楽で、自由に生きたいという思いが込められているそうです。他人の目を気にせず自分の気持ちに従って生きたいというスギョンにぴったりだと思ってこの曲にしました」と説明した。

苛烈なドラマとは裏腹の朗らかな笑顔で真摯に思いを語ってくれたキム監督。この日のために映画にちなんだリコーダー型ボールペンを持参し、質問してくれた観客に抽選でプレゼントするサプライズもあり、会場は和やかな雰囲気に包まれた。

文・深津純子

写真・吉田 留美

11/4 『アーノルドは模範生』Q&A


11/4 『アーノルドは模範生』Q&A
有楽町朝日ホール

ソラヨス・プラパパン(監督)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)
松下 由美(通訳)

タイ、シンガポール、フランス、オランダ、フィリピン / 2022 / 84分
監督:ソラヨス・プラパパン (Sorayos PRAPAPAN)

Thailand, Singapore, France, Netherlands, Philippines / 2022 / 84 min
Director:Sorayos PRAPAPAN

11/4 『アーノルドは模範生』Q&A


11/4 『アーノルドは模範生』Q&A
有楽町朝日ホール

ソラヨス・プラパパン(監督)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)
松下 由美(通訳)

タイ、シンガポール、フランス、オランダ、フィリピン / 2022 / 84分
監督:ソラヨス・プラパパン (Sorayos PRAPAPAN)

Thailand, Singapore, France, Netherlands, Philippines / 2022 / 84 min
Director:Sorayos PRAPAPAN

11/3 『石がある』Q&A


11/3 『石がある』Q&A
有楽町朝日ホール

太田達成(監督)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

日本 / 2022 / 104分
監督:太田達成(OTA Tatsunari)

Japan / 2022 / 104 min.
Director:OTA Tatsunari

11/3 『石がある』Q&A


11/3 『石がある』Q&A
有楽町朝日ホール

太田達成(監督)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

日本 / 2022 / 104分
監督:太田達成(OTA Tatsunari)

Japan / 2022 / 104 min.
Director:OTA Tatsunari

11/3 『石がある』舞台挨拶


11/3 『石がある』舞台挨拶
有楽町朝日ホール

太田 達成(監督)
小川 あん(俳優)
加納 土(映画監督)

神谷 直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)

日本 / 2022 / 104分
監督:太田達成(OTA Tatsunari)

Japan / 2022 / 104 min.
Director:OTA Tatsunari