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11/5 授賞式


11月5日(土)、第23回東京フィルメックスの授賞式が有楽町朝日ホールで開かれた。コンペティション部門の9作品を対象に、来場者の投票による観客賞、学生審査員による学生審査員賞、リティ・パン監督ら国際審査員が選出した各賞が発表された。

観客賞には工藤将亮監督の『遠いところ』が選ばれた。工藤監督は「賞を取れると全然思っていなかったのでこんな格好で来てしまいました」と恐縮しつつ、「才能ある監督たちが集まるコンペティションで競うことができて幸せでした。観客賞はお客さんに僕たちの映画が届いたということなので、何よりもうれしい。皆さまに心から感謝します」と喜びを語った。受賞作は、沖縄の夜の街で働く10代の母親を通して若年層が直面する貧困を見つめた意欲作。「この映画の何が見どころかと言われれば、やはり俳優陣の演技です。この作品を信じてくれた俳優陣に心から感謝したい。そして、沖縄の関係者の皆さま、協力して下さったすべての皆さまにこの賞を捧げたいと思います」と挨拶した。

学生審査員賞は、はるおさきさん( 東京藝術大学大学院)、山辺愛咲子さん( 武蔵野美術大学)、高野志歩さん( 立教大学)の3人による選考でマハ・ハジ監督の『地中海熱』が受賞した。今回は来日がかなわなかったハジ監督は「素晴らしい賞を与えて下さった映画祭と審査員の皆さんに感謝します。いま東京でみなさんと一緒にいられたら、さらに夢のような体験になったでしょう」とメッセージを寄せた。

そして、いよいよ国際審査員による選考結果の発表。委員長のリティ・パン監督(フランス・カンボジア )、キム・ヒジョン 監督(韓国)、映画プログラマーのキキ・ファンさん( 香港)の3人が登壇し、まずスペシャル・メンションとしてアリ・チェリ監督の『ダム』の名を挙げた。既に離日したチェリ監督はビデオメッセージで「観客の皆さんと一緒に上映を見ることができて嬉しかった。この栄誉をスーダンやベイルートにいるスタッフや友人たちと分かち合い、参加してくれたすべての人に捧げたいです」と語った。

審査員特別賞には2作品が選ばれた。ひとつめはダヴィ・シュー監督の『ソウルに帰る』。来日できなかったシュー監督はビデオメッセージを寄せ、「受賞は夢のようです。観客の皆さまとご一緒できなかったのは残念でしたが、選んでいただき本当に感謝しています。東京フィルメックスで自作を上映するのは夢でした。できれば日本で配給会社を見つけて、もっと多くの人に見てもらえることを願っています」と期待を込めた。

もうひとつはチョン・ジュリ監督の『Next Sohee(英題)』。チョン監督は前日に韓国に戻っていたが、受賞の知らせを聞いて急遽会場に駆けつけた。「脚本を書き、撮影し、編集している間は、この映画祭に来て皆さんにお会いできるとは想像もしませんでした。韓国社会だけの小さな話だと思っていたからです。でも、一昨日にこの会場で皆さんがこの映画に心から共感して下さる姿を見て感動しました。本当に久しぶりに作った映画に大きな賞をいただき感謝します」と語り、「最強の同志」だという出演者のペ・ドゥナさんと主人公を演じたキム・シウンさんに賞を捧げた。チョン監督はさらに「私の映画の中の現実よりもっと惨憺たる現実に、映画祭の間ずっと心を痛めていました。受賞に勇気をもらい、私達を結びつけてくれた映画の力を信じ、自分のいる場所で全力を尽くして映画を作っていきたいです」と力強い決意で挨拶を締めくくった。

最優秀作品賞はマクバル・ムバラク監督の『自叙伝』に決まった。インドネシアの田舎町の大立者とその下で働く若者の愛憎を通して強権支配の危うさを描いた。大きな拍手のなかステージに立ったムバラク監督は、「これは私の初めての長編映画です。完成までは5年がかり。撮影をした村全体と世界中の友人の力を借りて完成にこぎつけました。なので、この作品はまさに友情の産物です。サポートして下さった皆さん、長い間ありがとうございました」と晴れやかな笑顔で感謝を述べた。

講評に立った審査委員長のパン監督は「今回の上映作すべてに圧倒されたということをまず申し上げたい。様々なスタイルの映画と出会うことができ、審査員として大変うれしかったです」と上映作品の水準の高さを称賛。「ということで、本来は2作品のところ、今回は特別に4作品を選ばせていただきました。おいしいアイスを食べると、あと1個!もう1個食べたい!ってなりますよね。私達も同じ。我慢できずについたくさん選んでしまいました」と笑顔で語った。

 

コンペ部門の受賞発表に先立ち、映画祭会期中の10月31日~11月5日に実施したアジアの映画人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー」の企画コンペティションの結果も発表された。今年は公募で選ばれたアジア各地の15人の若手監督やプロデューサーが参加。赤坂のゲーテ・インスティテュートを会場に、第一線の映画人の指導を受けた。ベルリン国際映画祭との協賛企画ということで、11月2日には日本を公式訪問中のシュタインマイヤー独大統領も視察に訪れた。

企画コンペは、受講者がプレゼンテーションした新作映画の内容や製作プランを講師陣が審査した。スペシャル・メンションにマウン・サンさん(ミャンマー)の「Future Laobans」とシャルロット・ホン・ビー・ハーさん(シンガポール)の「TROPICAL RAIN, DEATH-SCENTED KISS」が選ばれ、最高賞のタレンツ・トーキョー・アワード2022はソン・ヘソンさん(韓国)の「Forte」が受賞した。

ソンさんは「一緒に時間を過ごした受講生仲間の皆さん、そして素晴らしい講師の皆さんに触発されました。講師のおひとり(アンソニー・チェン監督)がこのプログラムの修了生だということにも勇気づけられました。貴重な学びの時間をありがとうございます」と喜びを語った。会場には6日間のプログラムを共にした受講生も集まり、受賞者が発表されるたびにひときわ大きな拍手と歓声を送っていた。

文・深津純子
写真・明田川志保、吉田留美

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