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特集上映『木下惠介生誕100年祭』
共催:松竹 【字幕制作】東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力:国際交流基金
2012年12月5日、日本を代表する名匠・木下惠介監督が生誕100年を迎えます。
これを記念して、11月23日~12月7日まで東劇を会場に特集上映「木下惠介生誕100年祭」を開催します。この特集では、木下監督が残した49本の映画作品の中から24本を上映し、そのうち第13回東京フィルメックス開催期間の11月23日~12月2日までは19本を英語字幕付きで上映いたします。
国内では、敗戦後の日本人の心に響く、叙情的で涙を誘うイメージが強い木下作品。東京フィルメックスでは、国際的に再評価が高まる機運を踏まえ、日本においてさえまだ余り知られていないながらも、多様性に富んだ傑作5本を選んで英語字幕付きのニュープリントを作成しました。改めて木下惠介が革新的なアーティストであり、常に斬新な工夫を追求した、しなやかな真の挑戦者だった事を、広く世界に向けてご紹介して参ります。
※ 新たに作成した英語字幕付き上映素材6本(以下リスト中の★=35mmニュープリント5本+デジタルリマスター版『楢山節考』)は、「東京文化発信プロジェクト」の一環として作成されます。
木下惠介 プロフィール
KINOSHITA Keisuke
本名:木下 正吉、1912年12月5日 - 1998年12月30日。
静岡県浜松市生まれ。1933年松竹蒲田撮影所に撮影助手として入所。1936年に松竹大船撮影所へ異動し、島津保次郎監督の助監督となる。1940年に徴兵され、翌年に帰国。
1943年に『花咲く港』で監督デビュー。同作で山中貞雄賞を受賞するなど高い評価を集める。戦後第1作の『大曾根家の朝』(1946年)でキネマ旬報ベスト1に選ばれ、その後に続く作品でも興行と批評の両面で大きな成果を挙げた。中でも1954年に発表した『二十四の瞳』は興行面でのヒットだけでなく、米・ゴールデングローブ賞外国語映画賞など数々の賞に輝き、同年のキネマ旬報ベストテンでは、同作が1位、同じく1954年発表の『女の園』が2位となる。
また、日本初の総天然色(カラー)映画『カルメン故郷に帰る』(1951年)を発表した他、その続編『カルメン純情す』(1952年)ではカメラを傾けた撮影、『野菊の如き君なりき』(1955年)では画面を楕円に縁取ることで回想シーンを表現するなど、既成の映画の概念にとらわれない、斬新な手法にも積極的に挑戦した。
この新しい表現を追い求める姿勢は、1964年の松竹退社後に木下恵介プロダクションを設立する流れにもつながる。まだ黎明期にあったテレビドラマの分野でも、『木下恵介アワー』などで数多くの番組を制作し、脚本や演出も担当した。1969年には黒澤明、市川崑、小林正樹と「四騎の会」を設立する。
1988年発表の『父』が遺作となる。木下惠介監督のスタッフからは小林正樹、吉田喜重、山田太一、松山善三、勅使河原宏など、後々活躍する多数の映画人を輩出している。
生誕100年を迎える2012年は「木下惠介生誕100年プロジェクト」として、全国各地での記念上映や映像ソフトの発売、TV放送や出版、舞台化など様々な企画が催されている。5月のカンヌ国際映画祭クラシック部門では『楢山節考』、8月末のヴェネチア国際映画祭クラシック部門では『カルメン故郷に帰る』のデジタルリマスター版が上映され、海外での再評価の機運も高まりつつある。
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◎上映作品(11月23日~12月2日まで上映される、英語字幕付き19作品)
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★ニュープリント
1944 / 73分
出演:上原謙、水戸光子、東野英治郎、信千代、小堀誠、飯田蝶子
©1944 松竹
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戦局が悪化し、人々の疎開が進む中、家を出たままの夫を待ち続ける母とその息子を中心に、尚も町に残ろうとする住人たちの人間模様を描く。国策映画として作られたが、木下の視点はあくまでも庶民の人情に注がれている。
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1944 / 87分
出演:田中絹代、笠智衆、東野英治郎、上原謙、三津田健、杉村春子
©1944 松竹
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火野葦平の原作を陸軍省の依頼により戦時中に映画化。国策映画の枠組みを大きく逸脱するかのような細部の描写が光る。出征する息子を見送る母親を延々と捉え続けたラストシーンの移動撮影は、屈指の名場面となった。
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★ニュープリント
1948 / 67分
出演:水戸光子、小沢栄太郎
©1948 松竹
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踊り子の女が、彼女につきまとうヤクザな男から逃れて再出発するまでを、箱根や熱海でのオール・ロケーションで描いた野心作。宿場町の火事を背景に、二人の駆け引きのサスペンスが最高潮に達するシークエンスは圧巻。
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1948 / 73分
出演:井川邦子、三宅邦子、三浦光子、菅井一郎、東山千栄子、佐田啓二
©1948 松竹
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不動産ブローカーとその愛人が、貧乏画家一家を立ち退かせようとその家の二階に引っ越してくるが、心豊かに暮らす家族の姿に、次第に人生観を変容させられていく...。黒澤明の脚本を木下が映画化した唯一のコンビ作。
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1949 / 89分
出演:佐野周二、原節子、佐田啓二、村瀬幸子、坂本武、東山千栄子
©1949 松竹
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自動車修理会社を経営する、いわゆる新興成金の男が嫌々ながらに元華族の令嬢とお見合いをするが、その結果、彼女に一目惚れをしてしまう...。木下の粋で軽快な演出が冴えわたる、コメディー映画の傑作。
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★ニュープリント
1950 / 96分
出演:田中絹代、三船敏郎、宇野重吉、薄田研二、吉川満子、増田順二
©1950 松竹
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病気で療養中の夫に代わって銀座で貴金属店を営む妻が、夫を担当する若い医者に惹かれてゆく姿を描いたメロドラマ。一時渡米した田中絹代の帰国第一作で、相手の医者役にデビュー間もない三船敏郎が抜擢された。
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デジタルリマスター
1951 / 86分
出演:高峰秀子、小林トシ子、井川邦子、佐野周二、佐田啓二、笠智衆
©1951 松竹
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日本初の総天然色(カラー)映画。東京でストリッパーをしている少々頭の弱い主人公きんが、友人の朱美と共に故郷の浅間山のふもとの村に帰ってきたことから巻き起こる騒動を描いた、楽しくも弾けた人情喜劇。
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1952 / 103分
出演:高峰秀子、若原雅夫、淡島千景、小林トシ子、 三好栄子、東山千栄子
©1952 松竹
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『カルメン故郷に帰る』の続編。女たらしの芸術家に惚れてしまったストリッパー、きんの恋の顛末を描く。斜めのカメラ・アングルを多用するなどの実験を行いつつ、社会風刺の効いたコメディー作品に仕上がっている。
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1953 / 116分
出演:望月優子、桂木洋子、田浦正巳、佐田啓二、高橋貞二、高杉早苗
©1953 松竹
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旅館の女中として健気に生きる戦争未亡人は、子供達から冷淡視されている。ニュース映像を挿入し社会派リアリズムを追求したタッチで、戦後の混乱期に生きる母子の心の距離を浮き彫りにし、戦争による悲劇を痛切に描く。
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1954 / 156分
出演:高峰秀子、月丘夢路、小林トシ子、井川邦子、田村高廣、笠智衆
©1954 松竹
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美しい小豆島を背景に新任女性教師と12人の教え子たちが、戦中から戦後にわたる激動の時代に翻弄される姿を描く。映画史に残る不朽の名作を、英語字幕とバリアフリー字幕付きデジタルリマスター版で全ての人々に贈る。
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1955 / 92分
出演:田中晋二、有田紀子、笠智衆、田村高廣、小林トシ子、杉村春子
©1955 松竹
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伊藤左千夫の「野菊の墓」を原作に、素朴で美しい信州を舞台に明治の封建的な村社会での幼馴染との純愛の叶わぬ行方をしっとりと描く。回想画面を卵型に白く縁取った革新的な手法と、詩情溢れる長回しが、鮮烈な効果を生む。
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★ニュープリント
1956 / 78分
出演:田中晋二、望月優子、久我美子、東野英治郎、田村高廣、山田五十鈴
©1956 松竹
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魚屋の息子として生まれた少年が、父の死を始めとする厳しい現実の中で、船乗りになる夢を諦めて家業を継ぐことを決意するまでを描く。自らの置かれた現実を受け入れていく少年の静かな諦念が儚い余韻を残す珠玉の一本。
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★デジタルリマスター
1958 / 98分
出演:田中絹代、高橋貞二、望月優子、市川團子(二代目市川猿翁)、宮口精二
©1958 松竹
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姨捨山の伝説を描いた深沢七郎の原作小説の最初の映画化。オール・セットの人工美と浄瑠璃や長唄を用いた前衛的な表現で、人間の業と母子の愛を描いた野心的傑作。58年のヴェネチア映画祭に出品された。
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1959 / 78分
出演:岸惠子、久我美子、有馬稲子、川津祐介、東山千栄子、笠智衆
©1959 松竹
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信州の農村を舞台に、母と息子の二代にわたる身分違いの恋を描いたメロドラマ。古く閉鎖的な価値観に絡め取られた人々の苦悩とそこからの脱出を、ロングショットの多用と時間軸を交錯させた実験的手法を交えて描く。
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1959 / 74分
出演:高橋貞二、久我美子、十七世中村勘三郎、三國連太郎、田村高廣
©1959 松竹
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ささやかな幸せを願う一家を理不尽な不幸と暴力が脅かすとき、静けさと激しさを内に秘めた男が立ち上がる。後の任侠映画ブームを先取りしたかのような展開と、終盤の決闘場面のアクションに緊張感が張りつめる異色作。
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1960 / 117分
出演:高峰秀子、田村高廣、市川染五郎(九代目松本幸四郎)、岩下志麻、中村萬之助(二代目中村吉右衛門)
©1960 松竹
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『楢山節考』に続く、深沢七郎原作の映画化。戦国時代に、武田家が支配する甲斐国の笛吹川の畔で暮らす貧農一家の数代にわたる運命を描く。大がかりな戦国の設定の中、貧しい百姓の家族に焦点を当てた異色の時代劇。
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1961 / 107分
出演:高峰秀子、佐田啓二、仲代達矢、乙羽信子、石濱朗、田村正和
©1961 松竹
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阿蘇山の麓を舞台に、戦争に引き裂かれた小作人の娘と恋人、足を戦地で負傷した地主の息子とが生み出す、30年間に及ぶ辛苦を描く。フラメンコ風ギターのメロディが強烈な効果を生む。アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。
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★ニュープリント
1963 / 83分
出演:岩下志麻、加賀まり子、加藤剛、田中絹代、加藤嘉、菅原文太
©1963 松竹
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太平洋戦争末期の北海道の農村を舞台に、疎開してきた一家が村の地主の息子との縁談を断ったことをきっかけに始まる諍いの顛末を描く。集団への同調が狂気へと至る様を、西部劇的な要素を援用して描いた異色の傑作。
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1964 / 204分
出演:岡田茉莉子、加藤剛、乙羽信子、田中絹代、杉村春子、岡田英次
©1964 松竹
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したたかに生き抜く奔放な母と、一途な娘との壮絶な確執を、60年間にわたって描く文芸大河ドラマ。関東大震災の描写も生々しく、テンポ良く大胆な場面転換が冴えて、歴史的背景を活写しながら母娘の愛憎に虚しさを込める。
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この他、12月3日~12月7日にも、以下の5作品(英語字幕なし)と上記19作品のうちの一部が上映されます。
『破れ太鼓』1949 / 109分
『女の園』1954 / 141分
『遠い雲』1955 / 99分
『太陽とバラ』1956 / 85分
『喜びも悲しみも幾歳月』1957 / 160分
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■東京文化発信プロジェクト
東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施しているプロジェクトです。都内各地での文化創造拠点の形成や子供・青少年への創造体験の機会の提供により、多くの人々が新たな文化の創造に主体的に関わる環境を整えるとともに、国際フェスティバルの開催等を通じて、新たな東京文化を創造し、世界に向けて発信していきます。
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